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2024.03.11 コラム

準富裕層と富裕層の違いとは何か?

準富裕層と富裕層の人口は年々増加してきています。直近の株高や、デフレからインフレによる所得の増加を受け、より一層準富裕層に到達する人、富裕層に昇格する人達が増えてくるかもしれません。この記事では、そんな準富裕層、富裕層について解説します。

(1)我が国の超富裕層、富裕層の世帯数、純金融資産は順調に増加している

野村総合研究所では、2年に一度、「純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数」を発表しています。当該調査は、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から不動産購入に伴う借入金などの負債を差し引いた「純金融資産額」を基に、総世帯を5つの階層に分類し、それぞれの世帯数と資産保有額を推計したものです。直近の2021年データによると、純資産額が1億円以上5億円未満の「富裕層」及び純資産額が5億円以上の「超富裕層」を合わせると148.5万世帯と過去最高になりました。前回の2019年調査からは15.8万世帯増加したことになります(図表1参照)。一方、「準富裕層」の世帯数については、2011年以降それほど増えていません。これは、準富裕層の世帯が順調に資産を積み上げた結果、富裕層にシフトしたことが影響していると考えられます。事実、富裕層の世帯数は2011年から2021年までの10年間で年率6.3%増加しました。

我が国の金融資産と世帯数の推移

(2)準富裕層とは何か

それでは、準富裕層の実態はどうなっているのでしょうか。富裕層と準富裕層の違いとして、富裕層は、会社を経営している、資産を継承しているといった特徴があります。一方、準富裕層は弁護士や会計士などの士業、外資企業の役員などのインカムリッチ・プロフェッショナルと呼ばれる高所得者である場合が多いとみられています。こうしたなかで、富裕層が資産形成のため投資を行っているのに対して、準富裕層は仕事が激務であることが多く、お金を使う暇がないという方が少なくありません。

準富裕層のモデルケースとしては、①毎月10万円ずつ20年間以上S&P500などに投資する、②ボーナスで成長株などに投資をする、③年収は1,200~2,000万円程度、④仕事が忙しくて散財する暇が無い、⑤そもそも堅実で無駄遣いをしない、といった要件が考えられます。大企業に勤めていて、ストックオプションの付与や退職金支給を勘案すれば、7,000~8,000万円程度の純金融資産を形成することはそれほど難しいことではありません。準富裕層は自分の周囲にもそれなりにいるとみて良いのかもしれません。

(3)国別にみたミリオネア人口の比較

ここで、国別にミリオネア人口の実績と予想をみてみましよう。2020年実績では、我が国のミリオネア人口は366万人と米国、中国に次いで世界第三位となっています。2025年予想をみると、順位こそ変わりませんが、伸び率は47.8%増と他国に比べて見劣りしています。ちなみに、「ミリオネア」とは、一般的には「百万長者」や「大金持ち」を意味する言葉です。 「millionaire」という英単語に由来しますが、これは「100万」「100万ドル」を表す「million(ミリオン)」に、「~を持っている人」という意味の接尾語「aire」を加えた言葉になります。100万ドルということは、150円/ドル換算では、1億5千万円ということになります。ミリオネアは、米ドルベースで計算しているので、為替レートの変動によっても変わってきますし、株価や金利水準の影響を強く受けることになります。とはいえ、ミリオネアといえば、「大金持ち」を意味していることからミリオネア人口の動向や伸び率はその国の盛衰を表していると言えるでしょう。なお、図表2はクレディ・スイスが2022年に公表したものですが、コロナ禍の影響、世界的なインフレ進行及び金利水準の引き上げ、中国におけるデフレ進行などを勘案するとこれからは予想が大きく変わってくる可能性があると思われます。

国別に見たミリオネア人口の実績と予想

(4)準富裕層は富裕層の予備軍となり得るのか

今後の見方ですが、2024年以降も富裕層・超富裕層の純金融資産保有額は増加傾向をたどると予想されます。その要因として、①コロナ禍後の景気回復期待を背景に株式市場の投資環境が大きく改善し、日経平均株価は34年2カ月振りに過去最高値を更新したこと、②米国株式市場の金利低下期待から過去最高値更新が続いていること、③デフレからインフレ環境への転換によって所得の増加が期待できること、④グローバル資金の流入によりビジネスチャンスが広がっていくこと、といった点が挙げられます。こうしたなかで、富裕層の予備軍と言われている「準富裕層」の資産も順調に増大していくのでないでしょうか。準富裕層は、給与所得者、会社経営者、年金生活者(無職)などに大別されますが、何れも株式など資産運用を行っているものと考えられます。

給与所得者や会社経営者は、多くの時間を株式投資に振り向ける時間的余裕はありませんので、比較的長期保有することが多くなります。とはいえ、インフレ環境下における給与や賞与の増加によって、株式投資に振り向ける資金が増えて、買い増し行動に動くことも増えてきそうです。また、預金金利も徐々に引き上げられつつあることからこれからは金利収入も増えてくるかもしれません。少なくとも、過去10年に比べると「準富裕層」を卒業して、「富裕層」に昇格する世帯人口は増えていくのではないでしょうか。

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長谷川 学
代表取締役
長谷川 学
Gaku Hasegawa
2013年に野村證券入社後、鎌倉支店と虎ノ門支店で延べ500名以上の富裕層向け資産運用コンサルティング業務に従事。 優績者のみが選抜される海外修練制度四期生としてホーチミンに派遣。ベトナムで新卒向け人材紹介会社を創業し帰国。 2018年にIFAとして独立。2021年5月、金融業界における情報の非対称性を解消し、 生涯を通じて真に顧客に寄り添いきれる金融機関を作りたいという思いから、株式会社IFA Leadingを創業し、現在に至る。