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マンション価格上昇は今後も続くのか 首都圏マンション市場動向
マンション価格は首都圏を中心に上昇が継続しています。資材価格や人件費などの建設コストが上昇することに加え、賃金の上昇も見られる環境下では、2024年以降もマンション価格は上昇傾向を辿ると思われます。
- (1)昨今におけるマンション市場の動向
- (2)マンション価格と供給戸数の推移
- (3)最近における地域別新築マンション市場動向
- (4)首都圏分譲マンション市場の特徴と今後の見方
- (5)中長期的なマンション市場の見方
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目次
(1)昨今におけるマンション市場の動向
首都圏マンション価格の上昇が続いています。こうした傾向は2023年以降顕著であり、都心部の新築分譲マンションの平均価格は1億円を超える状況となっています。マンションの場合、平均年収の7倍程度が適正価格といわれていましたので、年収700万円の世帯であれば5,000万円程度が適正価格ということになります。しかし、現実には6,000万円、8,000万円、さらには1億円を超えるマンションであっても一定の購入者がいる状況となっています。
そもそもバブル期である1990年前後や2000年前半と今日ではマンション市場を取り巻く環境が大きく変わってきました。第一に、超低金利の継続によって、年収倍率に対する意識が大きく変わってきました。低金利による月々の住宅ローン返済額の軽減によって、平均年収の10倍であってもマンションを購入できる層が増えてきたのです。第二に、女性の社会進出によって世帯年収が増加した結果、マンション価格上昇を許容できる世帯が増えてきました。そして、最近では35年超の超長期ローンの登場によって若年層の購入余力が高まってきたと言われています。以上のことから、これまでのように分譲価格上昇によってマンションが売れなくなるといった思考は変えなければいけないのかもしれません。
(2)マンション価格と供給戸数の推移
首都圏分譲マンションの新規供給戸数は1994年以降急拡大し、2000年には95,635戸と過去最高を記録しました。その後、2010年以降の年間供給戸数は4万戸程度となり、2019年以降は3万戸前後で推移しています。一方、首都圏における一戸当たりの分譲マンション価格2021年に6,260万円と31年ぶりに過去最高を更新し、2022年は6,288万円、2023年には前年比39.0%増の8,101万円と一段と上昇しています。2021年以降、マンション価格が上昇基調を強めてきたのは、インフレ進行に伴う資材価格の上昇、人手不足に伴う建設労働者に関わる人件費の上昇、設備面や耐震性といったスペックの向上といった要因が影響しているものと思われます。こうした要因は一過性要因ではないため、2024年以降もマンション価格の高止まり傾向は続くとみられています(図表1参照)。
首都圏新築分譲マンション市場の動向
endif; ?>(3)最近における地域別新築マンション市場動向
2023年の首都圏分譲マンション供給戸数は東京都区部を除くと全ての地域で減少しましたが、特に、埼玉県、神奈川県、千葉県といった郊外地域での落ち込みが大きくなっています。この要因としては、前年に大規模物件が供給された反動に加えて、マンション事業者が在庫管理を徹底しながら小口で販売するという傾向を強めているためと思われます。バブル期のように作れば売れるという時代であれば、大量施工・大量販売も良かったのかもしれませんが、今日ではそうはいきません。最近のマンション販売の特徴は、じっくりと時間を掛けて販売する方法が主流となっています。200戸を超える大型マンションであっても一回当たりの販売戸数を10戸程度にとどめて、値引きをせずにコツコツと売っていくというやり方となっています。
首都圏新築マンションの平均価格の推移をみると、特に東京都区部の値上がりが著しく、2023年は前年比39.4%の値上がりとなっています。一方、神奈川県、埼玉県、千葉県などの平均販売価格は5年前に比べて10%前後の伸びにとどまっています。こうした地域では、床面積を小さくして一戸当たりの販売価格を抑える販売戦略が広がっている模様です。現在では、ファミリーマンションの一戸当たり床面積は60㎡台が主流となっています。以前であれば、1戸当たりの床面積は70~80㎡がひとつのスタンダードになっていましたので、10~15%程度狭くなってしまったという形です。また、都区部では1億円以上の物件の割合が増えており、このことが首都圏全体の平均価格を押し上げていると言えるでしょう。首都圏分譲マンション市場は、「準富裕層以上を対象とした1億円超の超高額物件」と「マス層を対象とした5,000万円前後の普及価格帯物件」とに二極化しており、こうした状況は今後とも続くと考えられます(図表2参照)。
地域別にみた首都圏新築分譲マンション市場の推移
endif; ?>(4)首都圏分譲マンション市場の特徴と今後の見方
ここで、バブル期と現在のマンション市場の違いについてみると、バブル期は物件に関わりなく全ての不動産が上昇しており、必ずしも実需に基づかない不動産取得が見られました。これに対して現在は、物件の内容によって不動産の値上がり状況に差異がみられています。分譲マンションにしても都区部での大幅値上がりに対して都区部以外での値上がりはやや落ち着いた状況となっています。また、マンション購入者のほとんどは居住目的であり、バブル期に見られたような投資目的での取得はそれほど多くないようです。一部に外国人による取得が増えているようですが、本国の物件と比較したクオリティの高さ、我が国の物件に対する割安感や信頼感、富裕層による資産の国際分散といった要因で我が国の物件を選好しているケースが多いと思われます。特に、「億ション」については外国人の富裕層による取得が増加しているとみられていますが、その実態については必ずしも把握されているわけではないようです(図表3参照)。
(図表3)首都圏新築分譲マンション市場に対する今後の見方 (1)今後の景気動向、マンション価格、金利動向についての見方 株価や賃金上昇を背景に今後の景気は緩やかに良くなるとの見方が増加? 建設資材価格、人件費上昇により今後ともマンション価格は上がると予想 金利については、日銀の政策変更により徐々に上昇するとの見方が増加? (2)雇用と所得に対する実感、購入層における所得環境の特徴 ボーナスを含む所得については増加したとの実感が増えている(勤労者) 年功序列型賃金の修正により、特に20歳代、30歳代での改善が顕著か? 夫婦共働きで家計年収1,000万円超のパワーカップル世帯が増加傾向に 昨今では、35年超の超長期住宅ローン商品を利用するケースが増えている (3)新築分譲マンションに関する人気物件の特徴 都心部30㌔以遠の郊外エリアでも駅近、商業施設隣接、大規模物件は人気 商品特性(広さ×価格×共有施設)により購入層が棲み分けられている? 都心部人気エリアでは高額物件が散見されるが、比較的実需が多い模様? 超高額物件は外国人或いは富裕層が資産として購入するケースがみられる
endif; ?>(5)中長期的なマンション市場の見方
我が国では、長らく続いてきたデフレ経済からの脱却が見え始めており、企業物価、消費者物価ともに上昇傾向に転じています。また、30年間にわたって低迷を続けてきた実質賃金も上昇に転じる機運が出始めています。今後のマンション価格については、上昇するとみている層が増えつつあるようです。その理由として、資材価格や人件費などの建設コストが上昇していることが挙げられています。資材価格については世界的なインフレ傾向の継続から引き続き上がることが予想されていることに加えて、人件費については2024年4月から始まる働き方改革に伴う残業規制によって、建設業に関わる従業者に対する賃金が上昇するとみられています。建設コスト上昇はマンションなどの不動産価格に影響するため、2024年以降もマンション価格は上昇傾向をたどると思われます。