IFAL Times

 
2024.07.23 コラム

ハイブリッド証券とは

ハイブリッド証券の発行が最近増えてきています。元々は機関投資家が主な買い手でしたが、個人投資家にまで販売されるケースが増えてきており、昨今では耳にする機会が多い金融商品になっています。事業会社や金融機関などが発行するハイブリッド証券とは一体どのような商品なのか。この記事では、その中でも事業会社発行のハイブリッド債について解説します。

(1)ハイブリッド証券とは

そもそもハイブリッド証券と呼ばれる理由は、社債と株式の両方の特性を持っている証券であるからです。株式のように一定の資本が認められ、債券のように満期や早期償還時に額面で償還されるもので、デフォルト時の法的弁済順位が一般の債券より低く、その分、利回りが高い証券になります。

負債→元利金の支払いが優先される部分(負債の例:借入金、シニア債)
ハイブリッド→会計上や格付上の一部が「資本」として認定される部分(ハイブリッド債の例:一定の条件を満たした期限付劣後債、永久劣後債)
株主資本→返済の必要がない部分(資本の例:普通株式、利益剰余金)

(2)事業会社発行ハイブリッド債の特徴

これまでハイブリッド債の発行体は金融機関が中心でしたが、近年ではハイブリッド債の性質が注目され、事業会社にも広がってきております。まだまだハイブリッド債を発行している企業は少ないですが、今後資金調達の手法としてより裾野が広がる可能性も考えられます。

ハイブリッド債は、資本性が認められるために以下のような特徴を持っています。

・満期

超長期、あるいは永久債

 

・早期償還

発行体の任意によるコールのほか、評価基準事由、会計事由などの「特別事由によるコール条項」が付されている場合がある。※コールに関しては後述

 

・クーポン

固定+変動クーポンが一般的であり、クーポンステップアップが可能

 

・利払いに関する不確実性

利払繰延条項が付されていることが一般的であり、利払延期または停止、非累積または累積も個別の債券による

 

・劣後性

普通株式に優先し、普通社債に劣後

(3)事業会社発行ハイブリッド債を発行する背景

企業がハイブリッド債を発行する背景としては、増資や優先株発行といった株式の希薄化を回避しつつ、資本性のある調達を増やすことが可能であることが挙げられます。

企業が資金調達を行う際の方法は、大きく分けると株式か債券を発行することです。ただ、株式を発行すると希薄化を招き、株主からの反発を買う恐れがあり、債券を発行すると負債が増えるので、財務状態が悪化してしまいます。こういった板挟み状態を解消する資金調達として、ハイブリッド債の発行が増えてきているということです。

資本性について補足をすると、格付機関は企業の信用力評価の際、一定の要件を満たしたハイブリッド債については、その一部を自己資本にカウントした上で(資本性認定)格付を付与します。このため、資本性認定を受けたハイブリッド債の発行は、発行体にとって格付けの維持・改善につながります。

(4)コール条項(早期償還条項)について

ハイブリッド債にはコール条項(早期償還条項)と呼ばれる条項が付されています。そのコール条項は大きく分けて2種類あります。

 

▶通常のコール条項

発行体の選択のみで行使ができるコール条項

⇒発行日から一定期間(例5年~10年)後から、毎利払日にコール可能とする場合など

 

▶特別事由によるコール条項

一定の事由が発生した場合に、発行体が行使できるコール条項

 

・税務事由

⇒本債券の利息が損金算入できなくなった場合など

 

・評価規準事由

⇒所定の格付機関による評価規準の変更等により、本債券の資本性評価が低下する場合など

 

・会計事由

⇒会計原則の変更により、本債券に係る債務が資本として計上できなくなる場合など

 

・買入事由

⇒債券の総額面金額の一定割合以上につき、買入消却、又は、償還などが発生する場合など

 

・チェンジオブコントロール事由

⇒発行者に支配権の移動などが発生し、かつ一定の格付条件を満たさなかった場合など

 

様々なコールの種類がありますが、コール付債券が市場で取引される際に償還日として見られている日付は、ファーストコール日と呼ばれる日が一般的です。ファーストコール日とは、発行体が早期償還を行える初回の日です。上記で言うと「通常のコール条項」に該当します。

ただ、コール条項が付いているからと言って、必ずそのタイミングで早期償還がされると約束されているわけではありません。事業環境や市場環境によってはコールされない恐れもあります(コールスキップ)。この場合、当初の想定よりも投資期間が長くなり、また、大きく債券価格が下落する恐れがあります。

コールスキップを引き起こす要因例
①業況又は事業会社の著しい悪化
業況や事業環境が著しく悪化すれば、市場でのリファイナンスは困難となる。必要とする資本性資金の調達や資金繰りに窮するのであれば、コールスキップもやむを得ないとの判断になり得る。
②金利の大幅な上昇等の市場環境の著しい悪化
金利の大幅な上昇やクレジットスプレッドの大幅な悪化など市場環境の著しい悪化により、ステップアップ後のクーポン水準が市場でリファイナンスするより低く済む場合は、調達コストを抑制できるため、コールスキップもやむを得ないとの判断になり得る。

(5)まとめ

ハイブリッド証券は、発行体からすると、株式の希薄化を防ぎながら資本構成を改善し、財務の柔軟性向上を図れます。投資家からすると、普通社債よりも高い利回りを確保でき、債券投資の選択肢が増えるといったメリットがあります。

ただ、劣後債である点や、コールがされない可能性がある点など、固有の特徴やリスクを把握した上で投資の選択肢に加えていく必要があると考えられます。

IFA Leadingのアドバイザーにお気軽にご相談ください

無料相談・お問い合わせはこちら

セミナーのお申し込みはこちら

 

広告等の規制(金融商品取引法66条10)

株式会社 IFA Leading 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第959号

【国内債券の取引にかかるリスク】

債券は、債券の価格が市場の金利水準の変化に対応して変動するため、償還前に換金すると損失が生じるおそれがあります。

また、債券を発行する組織(発行体)が債務返済不能状態に陥った場合、元本や利子の支払いが滞ったり、不能となったりすることがあります。

【国内債券の取引にかかる費用】

国内債券を、相対取引によって購入する場合は、購入対価のみお支払いいただきます(委託手数料はかかりません)。

■外国債券

【外国債券の取引にかかるリスク】

債券は、債券の価格が市場の金利水準の変化に対応して変動するため、償還前に換金すると損失が生じるおそれがあります。

また、債券を発行する組織(発行体)が債務返済不能状態に陥った場合、元本や利子の支払いが滞ったり、不能となったりすることがあります。

外国債券(外貨建て債券)は為替相場の変動等により損失(為替差損)が生じたり、債券を発行する組織(発行体)が所属する国や地域、取引が

おこなわれる通貨を発行している国や地域の政治・経済・社会情勢に大きな影響を受けたりするおそれがあります。

【外国債券の取引にかかる費用】

外国債券を購入する場合は、購入対価のみお支払いいただきます(委託手数料はかかりません)。

また、売買における売付け適用為替レートと買付け適用為替レートの差(スプレッド)は債券の起債通貨によって異なります。

 

 

#ハイブリッド証券

#ハイブリッド債

#社債