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2026.03.24 コラム

日本国内における人口移動の状況~都市部への人口集中傾向は変わっていない~

日本国内における人口移動の状況は、コロナ禍で一時的に人口分散の兆しが見られたものの、収束後は再び東京一極集中へ回帰しています。背景には仕事や医療、生活利便性の都市集中があり、人口格差も拡大傾向にあります。今後は広域連携を軸とした人口分散策が課題とされています。

(1)東京一極集中は是正されていない?

総務省が発表している住民基本台帳人口移動報告をみると、首都圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、大阪府、福岡県は人口流入超(人口流入者-人口流出者)といった状況となっていますが、それ以外の道府県は軒並み人口流出超といった状況となっています。新型コロナウイルスが蔓延した2020年以降、人々の意識・行動は大きく変わると期待されていた時期がありました。すなわち、コロナ禍で人口移動が大きく変化し、これまでの東京一極集中が転換期を迎えるのではないかといった期待感でした。確かに、当時の人口移動統計をみると、東京一極集中から人口分散時代が始まろうといった兆候が見られていました。とはいえ、その動きは一時的であり、コロナ禍が落ち着くとともに再び東京一極集中へと回帰していったのです。今回は、過去の我が国における地域別人口動態を参考にしながら、アフターコロナ時代における東京への人口一極集中の是正について考えてみたいと思います。

(2)我が国の人口移動動向はどうなっているのか

2025年1月~12月の1年間における日本国内の移動状況(日本人及び外国人)をみると、市区町村間移動者数(市区町村間で住所を移し、転入の届出を行った者の数)は519万548人で、前年に比べ1万7,198人(0.3%)の減少となりました。 市区町村間移動者数を都道府県間移動者数と都道府県内移動者数に分けてみると、都道府県間移動者数は251万5,731人と前年比7,518人(0.3%)の減少、都道府県内移動者数は267万4,817人と前年比9,680人(0.4%)の減少となりました。日本の総人口に占める市区町村を跨ぐ移動は4%強であり、人口25人に1人が引越しをしているという計算となります。また、2025年1年間における国外との移動状況(日本人及び外国人)をみると、国外からの転入者数は78万2,165人で、前年に比べ4万6,282人(6.3%)の増加、国外への転出者数は40万9,592人で、前年に比べ3万7,977人(10.2%)の増加となっています。

(図表1)国内における人口問題と人口移動の実態

(出所)総務省「住民基本台帳人口移動報告」よりIFA Leading作成。

(注記)社会増減数=(転入者数-転出者数)+(国外からの転入者数-国外への転出者数)+移動前の住所地不詳-職権消除等

(3)大都市圏への人口集中とその背景

次に、転入超過(人口流入者-人口流出者)を都道府県別にみると、東京都が6万5219人と最も多く、次いで神奈川県(2万8,052人)、埼玉県(2万2,427人)など6都府県で転入超過となっています。このことは、47都道府県のうち41道府県で転出超過状態にあることを示しています。基本的には、大都市圏には人口が流入し、それ以外の地域では人口が流出するという構造となっているわけです。この背景としては、さまざまな理由が考えられますが、何といっても「仕事」、「学業」、「医療」、「娯楽・レジャー」といった人々にとって大切なことが大都市に集中していることが大きく影響しているのではないかと考えられます。確かに、都道府県別有効求人倍率をみると、大都市圏よりも地方圏の方の数値が高くなっている、すなわち仕事が見つけやすいといった状況にありますが、仕事内容は自身の望むものでは無かったり、時給が安かったりしてそれなら大都市圏に移住しようという人々が多いのではないでしょうか。確かに、オンライン文化の浸透によって、大都市圏と地方圏との情報格差は縮小しましたが、生活の便利さという観点で大都市圏への流入傾向は避けられないようです。

 

(図表2)主要都道府県の転入者・転出者動向と転入超過者動向

(出所)総務省「住民基本台帳人口移動報告」よりIFA Leading作成。ブルー枠は首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)を示している。

(4)時代と共に都道府県別の人口格差が拡大

ここで、長期にわたる我が国の都道府県における人口の推移を見てみたいと思います。我が国は、第二次世界大戦終戦の年である1945年までは人口分散の社会が形成されていました。明治時代の都道府県別人口は上位1位から10位まで100万人台で拮抗していました。1890年の人口トップの新潟県と10位の静岡県の人口格差は1.57倍しかありませんでした。最下位の北海道とも4.30倍との格差に過ぎませんでした。大正時代から戦前までの人口格差はトップと10位で2倍程度、トップと最下位でも8倍程度に過ぎませんでしたが、戦後の東京一極集中によって格差が急速に広がることになりました。2020年には、トップと10位の人口格差は4倍、最下位とは25倍にも広がってしまいました。

ちなみに、明治初期から中期にかけての人口トップの道府県は、新潟県(1874~1876年、1882~1883年、1887~1896年)、石川県(1877~1881年)、大阪府(1884~1886年)と東京府以外の道府県で占められていました。東京府がトップとなったのは、1897年(明治30年)が初めてであり、その後は終戦の年にトップの座を北海道に譲り渡したときを除くと、東京都(1943年に東京府から東京都へ改組)が一貫して人口トップの座を維持しています。明治時代に、全国道府県の人口がある程度分散していたのは、明治政府の廃藩置県によって人口分散を図ろうとしたことが影響していると思われます。この時代に新潟県が人口トップ県に君臨していたのは、日本海側に北海道と大阪を結ぶ航路が通っていた、稲作が盛んで農業従事者が多かった、といった理由が挙げられます。

明治時代から大正時代にかけての物流や人々の移動は、海運が主体であり、大掛かりな移住は起こりにくい状況でした。昭和時代に入り、全国鉄道網が敷設されて自動車が普及するようになると、人口移動によって都市部への人口集中が始まることになります。1943~1945年には都市部への空襲に対する疎開から、東京都の人口が一時的に減った時期もありましたが、戦後は東京都が全国の人口を吸引する形で成長を続けてきたのです。しかし、2000年代に入って経済成長率が鈍化してきたなかで、東京一極集中による過密化の進展、都市部と地方との経済格差の拡大、といった問題がクローズアップされるようになってきました。さらに、新型コロナウイルス感染症拡大によって、東京一極集中、都市部での生活志向といった国民の意識に変化の兆しが出てきており、時代が逆回転し始めようとしていましたが、結局はコロナ禍前の状況に回帰してしまいました。

(過去の人口推移は内務省のデータを参照しております。)

(5)人口分散時代はやってくるのか

それでは、東京など大都市を中心とした人口集中時代から、明治時代のように全国人口分散時代がやってくるのでしょうか。「住民基本台帳に基づく人口移動報告」等をみると、雪崩を打って人口分散時代が到来するとは思えませんが、2025年は不動産価格の上昇によって東京都への人口流入者が減っている点に注目したいと思います。こうした傾向が2026年以降も続くのかについては予断を許しませんが、居住コストを意識した動きとして注目したいと思います。コロナ禍によって日本の政治・経済・社会の骨格であった人口集中・中央集権の仕組みが見直される空気が出てきましたが、その動きは浸透せず、今回の衆議院選挙でも人口分散を政策に掲げた政党は皆無でした。コロナ禍で最も問題となったことは、医療供給体制の逼迫、外出自粛に伴う経済活動の低迷の2つです。やはり、一定程度の人口分散を進めることによって、中央集権による政策運営ではなくて、地方自治体の連携による政策運営が必要不可欠なのではないでしょうか。現在の都道府県を分割・統合するのは時間もコストも掛かるので、例えば非常時には東北地方、北関東地方、首都圏、中部地方、中国地方といった広域連携をベースとした対応を進めるといった施策を推進することによって、緩やかな人口分散が期待されるところです。

 

 

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