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2024.01.26 コラム

働き方改革に伴う2024年問題の影響

働き方改革関連法によって、2024年4月1日以降、時間外労働の上限に制限が設けられることになります。それにより生じる問題は、総じて2024年問題と呼ばれていますが、具体的にどの様な問題が生じるのでしょうか。特に、長時間労働になりやすく影響を受けやすい運送・物流、建設業の2024年問題について解説します。

目次

(1)2024年問題とは何か

(2)働き方改革関連法について確認

(3)運送・物流の2024年問題

(4)建設業の2024年問題

(1)2024年問題とは何か

働き方改革関連法による時間外労働の上限規制で起こる可能性のある、さまざまな問題が2024年問題です。働き方改革関連法により、時間外労働や休日出勤についての制限が従来に比べて厳密になりました。定められた時間数を超え、従業員を時間外労働や休日出勤に従事させたときには罰則の対象となります。従業員の働く環境を整えるためにプラスに働く法律ですが、人材が不足し長時間労働が当たり前の業種では、法律を守ることで問題が発生する可能性があります。特に、業務内容の性質によって長時間労働になりやすい運送・物流、建設業は、対応に時間がかかることが予想されました。このため、対応できるよう猶予が設けられた結果、2024年4月1日から時間外労働や休日出勤についての規制が適用されることになっています。ただし人材不足の目立つ運送・物流、建設業では、全ての企業が十分な対策を行えているとはいえない状況です。長時間労働が罰則付きで規制され、従業員1人あたりの走行距離や労働時間が減少すれば、企業収益が減少するかもしれません。

(2)働き方改革関連法について確認

働き方改革関連法は2019年4月1日から順次施行されています。ポイントは、①時間外労働の上限規制、②年次有給休暇の取得義務化、③同一労働同一賃金の徹底、の3点となります。ここでは、時間外労働の上限規制について整理したいと思います。時間外労働や休日出勤については従来も法律で定められていましたし、時間外労働について定める36協定の締結も行われていました。但し、働き方改革関連法の施行前は、36協定を結べば事実上無制限に従業員を時間外労働や休日出勤に従事させられる内容でした。現在は働き方改革関連法の施行により、時間外労働が厳しく制限されています。原則として労働時間は1日8時間、1週間40時間が限度と労働基準法第32条1項で定められています。加えて同法第35条に記載されているのは、毎週1回は休日がなければならないというルールです。36協定を締結していないなら労働基準法に従わなければならず、そもそも従業員に対して時間外労働を命じられません。36協定を締結している場合でも、原則として時間外労働は月45時間かつ年360時間が上限です。臨時に特別な事情がある場合に限り、時間外労働の上限が年720時間以内、2~6カ月の平均が月80時間以内となります。

(3)運送・物流の2024年問題

運送・物流は自動車運転の業務に分類され、時間外労働の上限規制が2024年4月1日から適用されます。但し、他の事業と比べると上限規制の内容は厳しいものではありません。それでも規制の適用による2024年問題が懸念されています。36協定を結ぶと時間外労働の上限が年960時間になりますし、時間外労働と休日労働を合わせて月100時間未満かつ2~6カ月の平均を80時間以内に抑えなければいけない規定や、月45時間を超える時間外労働を命じられるのが年6カ月までとする規定は適用外です。厚生労働省の「改善基準告示見直しについて」によると、トラックドライバーの時間外労働は大型が月35時間、中小型が月31時間で、年間に換算してもそれぞれ420時間と372時間です。36協定を結んでいれば、自動車運転の業務に適用される時間外労働の上限規制の範囲内に収まります。

(4)建設業の2024年問題

2024年問題は建設業でも懸念されています。通常の事業であれば原則上限規制が適用されるため、運送・物流と比べて制限が厳しい中、具体的にどのような問題が起こると予想されているのでしょうか?第一に工期の遅れが挙げられます。時間外労働の上限規制によって、2024年4月1日から建設業でも従業員1人あたりの労働時間が厳しく制限されます。これにより1人あたりの労働時間が減ったとき、不足分を補填する人材を確保できなければ、生産性の低下が起こるかもしれません。その結果、予定していた工期に遅れが生じる可能性が考えられます。第二に給料の減少が挙げられます。企業によっては基本給を低く抑え、時間外手当を多く出す給与形態を取っていることもあります。このような給与形態では、時間外労働の上限規制の影響を受けやすくなります。給与形態が変わらなければ、時間外労働が減る分給与も減るかもしれません。第三に工事費の高止まりが挙げられます。2021年半ばから建設工事費は上昇傾向にあります。住宅建設の需要が高まったことに加えて、山火事といった出来事から木材の供給不足によるウッドショックが起こり、建材の価格が高騰していることも理由の1つとして挙げられます。加えて2024年問題への対応で人材を採用して上がった人件費は、工事費へ上乗せされることが考えられます。

働き方改革関連法案の趣旨及び概要
「働き方改革関連法案」の骨子は、①労働時間法制の見直し、②雇用形態に関わらない公正な待遇の確保、の2点
・残業時間の上限に規制を設ける。・勤務時間インターバル制度を導入する。・年次有給休暇取得を義務化する。・労働時間の把握を義務化する。・時間外労働に対する割増賃金率を引き上げる。・フレックスタイム制を拡充する。・高度プロフェッショナル制度を新設する。

時間外労働に対する上限規制、大企業は19年4月~、中小企業は20年4月~、猶予業種は24年4月~
(1)時間外労働の上限は、原則として月45時間、年360時間で、臨時的な特別な事情がなければ、これを超過することはできない。
(2)臨時的な特別の事情があり、労使の協定がある場合でも時間外労働は年720時間以内、時間外労働+休日労働は月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする必要がある。
(3)原則の月45時間を超えることができるのは年6か月まで
→建設業は月100時間未満(時間外+休日労働)。ただし、災害の復旧、復興の事業は除かれる。
→自動車運転の業務は、特別条項付36協定を締結する場合の時間外労働の制限は年960時間。

おわりに

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