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2024.03.05 コラム

米国大統領選挙の行方~選挙結果は世界の趨勢に大きく影響する

米国大統領選挙が今年の11月に行われます。バイデン政権が続くのか、またはトランプ氏が返り咲くのか、政策の方向性も大きく違う両者であり、日米関係にも大きく影響してくると思われます。この記事では、米国大統領選挙について詳しく解説していきます。

(1)米国大統領選挙は民主主義の原点

米国大統領選挙は民主主義の原点と言われています。それでは、民主主義とは何なのでしょうか?民主主義とは、①説得することすなわち傾聴する力、②共通の価値観を語ること、③共通の価値観に沿った話をして対立候補との政策を比較すること、と言われています。米国大統領選挙は、高校生、大学生といった若者がボランティアとしてたくさん参加しています。日米の教育システムの違いといえば、日本は一日や一週間のインターンシップが多いのに対して米国ではもっと長期のインターンシップが多いことが特徴となっています。そうした長丁場のインターンシップの代表例が大統領選挙でのポランティアです。大統領選挙のインターンシップは有給のスタッフに昇格することがあります。スタッフに昇格すると忙しくて卒業が遅れることもあります。それでも学生の親はやりなさいと背中を押すのです。学生自身も単位目当てでインターンシップをやっているわけではありません。〇〇候補を勝たせたいといった純粋なポランティア精神に満ちているのです。民主主義とは、能動的なボランティア活動に支えられた「草の根運動」であり、「地域社会にとっての有益な経験を積むイベント」であると言ってよいのかもしれません。

(2)米国大統領選挙の仕組み

それでは、米国大統領選挙の仕組みを見てみましょう。合衆国憲法は、大統領は米国で生まれた米国市民で、35歳に達していなければならないと定めています。大統領選挙は、4年ごとに(4で割り切れる数字の年)、11月の第1月曜日の次の火曜日に行われます。1951年に批准された修正第22条により、大統領の任期は2期までに制限されています。米国大統領選挙では、まず予備選挙によって民主党と共和党からそれぞれ1人ずつ候補者を選びます。これは党員が選ぶ「党員選挙」です。そして、党大会で各党の候補者が決まると、本選挙に臨むことになります。本選挙では、民主党と共和党の候補者が1対1で決戦をします。本選挙では、各州の一般有権者の投票から選ばれた選挙人が投票して大統領を選びます。このように、米国大統領選挙は一般有権者が各州に割り当てられた選挙人を選び、選挙人が大統領を選ぶ「間接選挙」となっています。有権者が直接大統領候補に選ぶのではなく、選挙人が大統領候補に投票するという間接選挙という仕組みとなっているのは、米国は国土が広く、交通機関が発展していなかった時代に投票所に行くのは大変だったことに起因しています。このため、選挙人(代議員)を選んで選挙人が大統領候補者に投票するといった間接選挙方式が採用されたのです(図表1参照)。

米国大統領選挙の選挙人の数は538人で、このうち270人の選挙人を獲得して候補者が当選となり、大統領選挙翌年の1月に大統領に就任します。選挙人が最も多いのは、カリフォルニア州の55人で、次いでテキサス州38人、ニューヨーク州、フロリダ州各29人、イリノイ州、ペンシルベニア州各20人と続き、アラスカ州、モンタナ州、バーモンド州などは3人となっています。選挙人はネブラスカ州(選挙人5人)とメーン州(同4人)を除いて勝者総取り方式となっています。すなわち、仮にカリフォルニア州でA候補が一票でも多く獲得すれば、A候補は55人の選挙人を獲得することになるわけです。例外として、ネブラスカ州では5人のうち2人は州全体の勝者が、残り3人は3つの下院議員選挙区ごとの勝者が獲得することになっています。また、メーン州では5人のうち2人は州全体の勝者が、残り2人は2つの下院議員選挙区ごとの勝者が獲得することになっています。

米国大統領選挙の仕組み
(1)米国大統領選挙は4年に一度行われる(近年は夏季オリンピックと同じ年)
(2)党内(共和党、民主党…)で候補者選びがスタートする
(3)党の候補者を決めるには、党員が代議員に投票し、代議員が候補者に投票する ⇨ 間接選挙
   ※各州で予備選挙・党員集会が行われる
(4)全州で代議員が決定する。今度は、代議員が投票し、候補者を1名に絞る
(5)党の代表同士で一騎打ちが始まる(テレビ討論会等を実施する)
(6)本選挙では有権者が大統領になってほしい候補者に投票する
(7)選挙人は合計538人であり、過半数270人獲得で勝利となる

(3)2024年米国大統領選挙の焦点とは?

2024年米国⼤統領選挙のスケジュールは図表2の通りですが、今回の選挙については4つの焦点があると言われています、第一に、第三党の候補者が選挙結果をひっくり返すことです。1992年の大統領選では、裕福な実業家ロス・ペロー氏が独立系候補として出馬し、得票率19%を記録しました。保守派の支持を取り込み、現職のジョージ・H・W・ブッシュ氏(共和党)が民主党候補のビル・クリントン氏に勝利するのを妨げたと言われています。2000年には、緑の党候補のラルフ・ネーダー氏がフロリダ州で9万7,488票を獲得。この激戦州でジョージ・W・ブッシュ氏(共和党)が現職副大統領だったアル・ゴア氏(民主党)を破るのにつながりました。今回の選挙でも同じような意外な展開が見られるかもしれません。今回の選挙は接戦となる可能性が高く、第三党の人物にわずかな票が流れるだけでも、選挙結果に大きな影響が及ぶ可能性があるのです。

第二に、投票日前にどちらかが死去したらどうなるのでしょうか。バイデン大統領とトランプ前大統領は高齢です。2025年の就任式当日、バイデン氏は82歳、トランプ氏は78歳になっています。2人の健康状態が悪いという兆候はないものの、投票日までに2人に何かが起きたらどうなるのでしょうか。2024年10月中旬に最悪の事態が起こっても、2人の名前は本選の候補者として残ります。合衆国憲法によると、たとえ死亡して宣誓できない状況になっても立候補は有効とされています。大統領に当選した人が就任式前に死亡した場合は、副大統領が代わりに就任します。副大統領は自分の後任の副大統領を指名しなければなりません。後任者は議会の承認を得て正式に正副大統領に就任することになります。

第三に、外国の戦争がエスカレートしたらどうなるのでしょうか。バイデン大統領はロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルのイスラム組織ハマスへの報復攻撃など、国際的な危機に悩まされる中、再選を目指しています。中国が台湾の領空に対する軍事的圧力を着実に強めている危険な状況は言うまでもありません。バイデン氏は世論調査で、二つの戦争への対応について比較的高い評価を得ています。ただし、民主党支持の若い有権者という重要な層からはバイデン氏への支持が落ちています。パレスチナ人の犠牲者が増える中、同氏がイスラエルを強く支持していることに怒りを感じているためです。そして、いずれかの戦争が現状の境界を越えて拡大することになれば、ロシアが北大西洋条約機構(NATO)加盟国を攻撃したり、イランと同盟関係にある武装集団がハマスと一緒にイスラエルとの戦闘に加わったりすれば問題はさらに複雑化することになります。

最後に、トランプ氏が刑務所に入ったらどうなるのでしょうか。トランプ前大統領はこれまでに4回、刑事事件で起訴されています。トランプ氏の弁護団は、大統領選が終わるまで裁判の開始を遅らせようと懸命に努力しています。弁護団は、トランプ氏が大統領に選ばれれば、おそらく4年間は裁判を先延ばしにできると分かっているのです。選挙前に刑務所に入ったとしても、選挙に勝てなくなるというわけではありません。重罪で有罪判決を受けても、大統領選への出馬は妨げられません。獄中で大統領に選出された場合、連邦法違反での有罪についてはトランプ氏自身が赦免できるかもしれません。しかし、2件の州法違反での起訴のうちのいずれかででも有罪となり、収監された場合、トランプ氏には赦免の権限はなく、受刑者ながら大統領になるという奇妙な状況になり得るのです。

2024年米国大統領選挙のスケジュール
2024年1月15日、共和党党員集会がアイオワ州から開始
1月23日、ニューハンプシャー州で民主党予備選挙を実施。党全国委員会による2月3日開始という決定を無視して実施予定
2月3日、民主党全国委員会が定めた予備選挙の開始日。サウスカロライナ州から開始
3月5日、スーパー・チューズデー:米国大統領選挙の予備選挙・党員集会が集中する。3月第3火曜日を指す。一日で大量の代議員を獲得することができる日
7月15~18日、共和党全国大会(ウィスコンシン州ミルウォーキー、ファイサーブ・フォーラム)
8月19~22日、民主党全国大会(イリノイ州シカゴ、ユナイテッド・センター)
11月5日、一般有権者による投票および開票(11月第1月曜日の次の火曜日)
12月16日、選挙人による投票(12月第2水曜日の次の月曜日)
2025年1月6日、大統領および副大統領当選者が正式決定(合衆国法典第3編第15条)
1月25日、大統領就任式(憲法修正第20条)

(4)民主党と共和党の違いとは?

次に米国の二大政党である民主党と共和党の違いについてみてみましょう(図表3参照)。民主党(Democratic Party)は大きな政府(あらゆる問題に政府が取り組む考え方)を容認しています。すなわち、政府による経済政策や社会福祉政策などに対して積極的姿勢を取っている政党ということになります。大きな政府による保護主義的政策を推進すると、国内の経済格差が少なくなる一方で、国際的な競争力の低下が懸念されることになります。また、共和党と比較するとあらゆる制度や立場を容認するため、その政治的立場はリベラル(自由主義)といえるでしょう。貧困層や弱者、中小企業の救済を目指しているため、民主党を支持している層は労働者や女性、少数民族などが多いと言われています。

これに対して共和党(Republican Party)は小さな政府(必要以上に政府は関与せず、個人に任せる考え方)を信条としています。政府による経済への介入をできるだけ行わない考えで、個人の自発性や企業の擁護を主張する立場を取っています。国際的な競争力が増している一方で、国内の経済格差の拡大が懸念されることになります。政治的立場はどちらかというと保守的(伝統や習慣、制度などを尊重している立場)といえるでしょう。共和党を支持している層は裕福な白人層や起業家、キリスト教信者などが多いと言われています。

アメリカの民主党と共和党の違い
民主党(≒リベラル)
党の理念、✔ 社会福祉や生活保護を考えるのは政府の義務。※大きな政府を基本理念としている。
党のシンボル、✔ 青、ロバ。
歴代大統領、✔ バイデン氏、オバマ氏、クリントン氏、カーター氏、ケネディ氏、ルーズベルト氏。
支持基盤、✔ リベラル、大都市(東海岸、西海岸)、人種的、マイノリティ(黒人、ヒスパニック、アジア系など)、労働組合。
近年の変化、✔ 富裕層や高学歴層の支持率が上がってきている。※共和党支持層から民主党支持への転換⇒アメリカは国際社会との協調が必要。
共和党(≒保守)
党の理念、✔ 市場を重視し、政府の介入を最小限にする。※小さな政府を基本理念としている。
党のシンボル、✔ 赤、ゾウ(党の強さを表す)。
歴代大統領、✔ トランプ氏、ブッシュ親子、レーガン氏、フォード氏、ニクソン氏、アイゼンハワー氏。
支持基盤、✔ 保守、農業地帯、南部、白人、敬虔なキリスト教徒。✔ 市場を重視し、政府の介入を最小限にする。
近年の変化、✔ 労働者層の支持率が上がってきている。※グローバル化で工場が閉鎖⇒トランプ氏の「アメリカ第一主義」に共感。

(5)バイデン氏とトランプ氏の政策の違いとは何か?

2024年の米国⼤統領選挙はバイデン氏とトランプ氏の一騎打ちとなる可能性が高いとみられています。何れも民主党、共和党の候補者指名争いでリードしており、本人が出馬を辞退するか新たな有力候補者が出馬しない限り、バイデン氏対トランプ氏という4年前の再現となりそうです。現職大統領が登場する選挙は、過去4年間を評価する国民投票と受け止められることが多いとされています。バイデン政権には4年間の結果として挙げられる政策上の成果が複数あります。次の大統領選のスローガンは、「この仕事を終わらせよう」というものになるでしょう。

ここで、バイデン氏とトランプ氏の政策の違いを整理してみましょう(図表4参照)。バイデン氏とトランプ氏の政策には真っ向から対立しているものが少なくありません。経済・雇用政策においては、バイデン氏が法人税の引き上げ、富裕層に対する増税を検討しているのに対して、トランプ氏は富裕層、経営者、不動産業者への減税措置を謳っています。社会保障については、バイデン氏がオバマケアの継続・拡充を訴えているのに対して、トランプ氏はオバマケアからの撤退を訴えています。オバマケアとは、2014年1月からスタートした医療保険制度改革法の略称です。2010年3月にオバマ大統領が署名し、成立したことからこの名称で呼ばれており、すべてのアメリカ国民が医療保険に加入することを促進することを目的としています。ここでいう「アメリカ国民」とは「アメリカにおける税法上の居住者」を指すため、日本からアメリカに駐在している日本人等も含まれることになります。ただし、留学生等、就労アメリカで就労資格がなく、税務申告が必要でない人は適用除外になる場合もあります。また、移民政策についは、バイデン氏が移民は米国の成長の原動力であり、国の根幹であるとしているのに対して、トランプ氏は雇用と治安維持のために入国審査を厳格化するとともに、移民を制限する大規模な大統領令発出の可能性について言及しています。

バイデン氏とトランプ氏の政策の違い
バイデン氏(民主党)
外交・対中政策、✔ 西側諸国との連携強化(特に英国、EU、日本)。✔ 中国に対しては、同盟国と連携して対抗。
経済・雇用政策、✔ 経済格差の解消、雇用促進施策の推進。✔ 日本製鉄によるUSスチール買収には難色の立場。✔ 労働者や中小掲載企業を保護する必要性を強調。✔ 法人税の引き上げ、富裕層に対する増税の検討。
貿易政策、✔ 民主党は伝統的に保護主義政策を掲げている。✔労働者や国際協調主義を重視する姿勢を掲げる。
社会保障、✔ オバマケアの継続・拡充を訴えている。✔ 高齢者向けの医療保険の対象年齢を引き下げも。
気候変動、✔ 地球温暖化対策「パリ協定」には参加の立場。✔ 再生エネルギーへの投資を拡大させる考え。✔ 温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロに。
移民政策、✔ 移民は米国の成長の原動力であり、国の根幹。✔ 国内で暮らす不法移民の市民権の取得に道筋。
銃規制、✔ 銃所有の権利は認めつつ、規制は必要との立場。✔ 購入者の確認・調査の徹底、ネット販売の禁止。
トランプ氏(共和党)
外交・対中政策、✔ 同盟国に米軍の駐留経費の分担増を求めている。✔ 中国には貿易、安全保障など多方面で対立。✔ 中国への投資や資本流入に対する制限も検討か。
経済・雇用政策 、経済面では「米国第一主義」を掲げている。✔ 日本製鉄によるUSスチール買収に反対の立場。✔ 公共事業への投資や中間層の減税等の財政支援。✔ 富裕層、経営者、不動産業界への減税措置。
貿易政策、✔ 自由貿易協定の見直し、中国に対する関税政策。✔ 米国産の農産物の輸出拡大を約束させる方針。
社会保障、✔ オバマケアに対しては撤退を訴えている。✔公的医療保険は財政負担増大から反対の立場。
気候変動、✔ 地球温暖化対策「パリ協定」からは離脱の立場。✔ 原油パイプラインの建設計画を推進。✔ 環境保護よりも産業や雇用創出を重視する姿勢。
移民政策、✔ 雇用と治安維持のために入国審査を厳格化。✔ 国境の壁や移民の受け入れ制限を推進。✔ 移民を制限する大規模な大統領令発出の可能性。
 銃規制、✔ 銃を持つ権利を擁護する姿勢を強調。✔ 共和党の支持団体は銃規制に反対の立場。

(6)米国大統領の主な権限

米国の大統領職は、世界で最も強大な権限を持つ職務のひとつであると言われています。合衆国憲法は、大統領は「法律が忠実に執行されるよう配慮しなければならない」、と述べています。この責任を果たすために、大統領は、連邦政府の行政府を統轄しています。連邦政府の行政府は、現役の軍人100万人を含む、およそ400万人から成る膨大な組織です。加えて大統領は、立法と司法においても重要な権限を有しています(図表5参照)。ただし、議会は上下両院で3分の2以上が反対すれば、大統領の決定を覆すことができると権利を有しており、大統領の暴走を阻止するルールが定められています。

米国大統領の役割や責務は非常に広範にわたり、また大統領は国内的にも国際的にも顕著な存在であるため、世論は大統領の権限を大きく強調してきた傾向があります。大統領は、しばしば敵対的な経済的、地理的、民族的、思想的利益団体との間に、少なくとも一時的な同盟を結ばざるを得ない場合があります。法案が可決されるためには、連邦議会と妥協しなければなりません。このような制限はありますが、大統領は立法目標の少なくとも一部を達成し、また拒否権を発動することで、国益に反すると見なす法律の施行を阻止することができるのです。米国大統領は、比類のない地位を活用して、見解を述べ、政策を支持することができます。そのような構想や政策は、演説や記者会見といったメッセージを通じて、国民の意識に浸透しやすいと思われます。米国大統領が提起した課題は、必ず公共の討論の対象となることから、大統領職のこうした側面は「公職の権威」と呼ばれています。大統領の権限や影響力は、限定されているかもしれませんが、それでも、公職者、民間人を問わず、他のどの米国民よりも大きいため、絶大な権力を手にしていると言われているのです。

米国大統領の主な権限
【行政権】                
大統領命令、✔ 連邦政府や軍に対して出す行政命令は、法的な拘束力を持ち、議会の承認を必要としない        
⇨ 行政権はアメリカ合衆国大統領に帰属する(憲法第2条第1節第1項)        
⇨ 議会が命令発効を禁じる法律を制定したり、連邦最高裁が違憲判断を下せば効力を失う        
米軍の総司令官、✔ 大統領は米軍の最高指揮官であるため、軍事に関する決定(軍艦の派遣、軍隊の配備や兵器の使用など)が可能        行政長官などの指名、✔ 大統領は、行政府のすべての省庁の長官その他の政府高官を指名できる(上院が承認する)        
【立法権】                
拒否権、✔ 議会が可決した法案に対して、大統領は拒否権を発動できる。拒否権を議会が覆すためには、上院・下院が3分の3以上の票で覆さなければならない        
立法措置の提案、✔ 大統領は議会に立法措置を提案でき、議会がその提案を決議しなかった場合は、特別会議を招集できる。また、大統領は演説、メディア出演などを通じて世論を左右することも可能であり、議会の立法に影響を与えられる        
【司法権】
任命権、✔ 最高裁判事(裁判官)の任命(上院が承認する必要がある)        
恩赦        、✔ 連邦法で有罪判決を受けた者に恩赦(刑期短縮、罰金の減額など)を与えることができる        
【外交】                
任命権、✔ 大使、公使、領事といった外交官を任命する(上院の承認が必要)        
接待、外交活動、✔ 海外の閣僚の接待や、接待を通じての各国首脳との外交活動        
条約、協定の交渉、✔ 条約を交渉、締結できるが上院の3分の2の賛成を得る必要がある。行政協定については、交渉だけでなく上院の承認なしに締結できる

(7)外交政策~中国、ロシアに対する対処法

バイデン大統領が再選するのか、トランプ氏が大統領に返り咲くのかによって状況は異なりますが、次期大統領にとっての最も大切なテーマは外交政策となります。バイデン氏は外交政策においては、1期目の実績から余り急進的にことはしないとみられています。これまでも多額の軍事費を維持し、米国の世界におけるリーダーシップや国際機関を重視するという、伝統的な米大統領としての立場を取ってきました。中国やロシアには厳しく接し、同盟国も重視しています。ただし、イスラエルとハマスの紛争に関しては、民間人の犠牲者が増えることによって議会や同盟国からも憂慮する声が聞かれています。また、バイデン大統領は、習近平氏との対話のなかで、「中国の経済は⻄側諸国からの投資にかかっている」と強くけん制しています。

一方、トランプ氏は、11月の大統領選で返り咲きを果たした場合、来年の政権発足後に北大西洋条約機構(NATO)の一部加盟国へのコミットメントを縮小することや、ウクライナにロシアとの戦争終了の交渉に入るよう求めることなどを検討している模様です。また、トランプ氏は「ひとつの中国」政策を破棄するとの考えを示唆しており、その場合、米中間の緊張は一段と高まるものと懸念されます。ちなみにトランプ氏は、大統領に返り咲けば中国からの輸入品に60%以上の関税を課すとしており、より「攻撃的、先制的、懲罰的な」対中貿易規制に戻ることを認識する必要があるかもしれません。

(8)米国大統領選挙結果による日本への影響

8年前の米大統領選でトランプ氏がヒラリー・クリントン氏に勝利した際、日本国内では日米関係はどうなるかと大きな不安が漂いましたが、当時の安倍総理は大統領当選直後のトランプ氏を電撃訪問し、個人的な信頼関係を作りあげました。トランプ大統領時代において、米国と欧州との間では亀裂が深まりましたが、日米関係は良好でした。それでは、今回トランプ氏が大統領に返り咲いた場合はどうなるのでしょうか。第1次トランプ政権下の日米関係は良好でしたが、それは安倍総理が個人的な信頼関係を作ることに成功したからであり、第2次トランプ政権と付き合う日本の首相がそれをできるとは限りません。トランプ氏は個人的な関係をそのまま外交に転用する傾向があり、仮にそれに失敗すればトランプ氏の対日姿勢にも大きな変化が生じる可能性があるのです。

したがって、日米経済の間でも米国側から厳しい圧力や不満が示されることも十分に考えられるのです。日本製鉄によるUSスチールの巨額買収計画でトランプ氏が絶対に阻止すると発言したことはそれを示唆しているといえるのではないでしょうか。米中貿易摩擦だけでなく、日本企業としては日米間でも貿易摩擦が生じる可能性を想定しておく必要があるように思われます。また、防衛負担に関しても応分の負担を求めてくるとみられています。米国では、長年、財政赤字と貿易赤字という双子の赤字に悩まされており、誰が大統領になってもこの問題に取り組まなければなりません。なかでも、財政支出削減のために、同盟国に対しては、一段と米軍駐留経費の負担を求めていくと思われます。こうしたなかで、ロシア・ウクライナ戦争の終結、中国との経済戦争の拡大といった事態が現実化することによって米国が日本に求める要求がヒートアップしてくるかもしれません。

(9)「もしトラ」から「ほぼトラ」へ

昨今のメディア報道をみると、「もしトラ(もしもトランプ氏が大統領に返り咲いたら)」から「ほぼトラ(ほぼトランプ氏が大統領に返り咲くとみられる)」といった標語へと変化してきているように思われます。トランプ新大統領が誕生すれば、基本的にバイデン現大統領の政策の多くが否定されることになります。原理原則は「米国第一主義」、「保護主義」、「同盟軽視」が基本姿勢になるとみられています。まずは、ウクライナの弾切れによって、ロシア・ウクライナ戦争が終わる可能性があります。次に、アメリカが地球温暖化を抑止するパリ協定の枠組みから、再び離脱するリスクが挙げられます。これはEV(電気自動車)に舵を切っている欧州及び中国企業にとっては大きなダメージとなります。

これまで、2期目で大統領選挙に敗北した候補者の敗因として、①経済状況の悪化、②パンデミックや戦争などによる国民意識の変化、③高齢化、等が挙げられます。さて、今回の大統領選挙ではどのような結末が待っているのでしょうか。

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