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2024.03.04 コラム

アクティブ運用とパッシブ運用について 我が国はパッシブ運用に傾斜している

アクティブ運用とパッシブ運用について、日米欧の比較を基にその違いなどを解説します。ベンチマークを上回る投資パフォーマンスを実現することが難しくなっている中で、いずれはグローバルにパッシブ運用の全盛期がくるのでしょうか。

(1)アクティブ運用とパッシブ運用の違い

株式の運用手法にはアクティブ運用とパッシブ運用(インデックス運用)があります。アクティブ運用とは、株価の上昇が期待される銘柄を厳選して投資し、ベンチマークを上回る投資成果を目指す運用手法です。これに対して、パッシブ運用とは、市場全体の値動き(指数の値動き)と同様の投資成果を目指す運用手法です。例えばTOPIX(東証株価指数)をベンチマークとするインデックス・ファンド(パッシブ運用ファンド)であれば、TOPIXに連動した投資成果(=プライム市場に上場する約2,000銘柄すべてに投資した場合と同じ投資成果)が期待されることになります。言うまでもなく、株式市場には値動きがあり、上昇と下落を繰り返します。パッシブ運用の運用担当者は来る日も来る日も運用成果が株式市場全体に連動した値動きとなることを目指します。それは指数が上昇する日であっても、下落する日であっても同じことです。一方で、アクティブ運用の運用担当者は、常に中長期的に株価が上昇する銘柄を探し続けています。

(2)株式投資の本来の姿はアクティブ投資

本来の株式投資は、公表データを活用し、企業への取材や対話を通じて銘柄を発掘し、中長期的な成長が期待される銘柄に投資することとされています。そして、株価の値上がり益(キャピタルゲイン)と配当(インカムゲイン)を享受することで投資成果の向上を目指すことになります。一般には、特定銘柄への集中投資はリスクが大きいので、一定程度銘柄を分散して保有することになります。その場合、ある程度業種を分散させることによって、金利、為替、株価指数変動によるリスクを軽減することが望まれます。ポートフォリオの大半が銀行株であったり、自動車などの輸出関連銘柄であったりすると、投資パフォーマンスが金利や為替の影響を大きく受けることになってしまいます。ファンダメンタルズ(経済の基礎的要件)を検証・検討して銘柄を選定し、じっくり保有することがアクティブ投資の基本であり、本来の株式投資の姿であると言えます。

株式市場におけるパッシブ運用とアクティブ運用
アクティブ運用の運用手法:株価上昇が期待される銘柄を厳選して投資し、ベンチマークを上回る投資成果を目指す運用手法
パッシブ運用の運用手法:市場全体の値動き(指数の値動き)と同様の投資成果を目指す運用手法
アクティブ運用の組み入れ銘柄数:数十〜数百銘柄
パッシブ運用の組み入れ銘柄数:TOPIXが約2,100銘柄、日経平均が225銘柄
アクティブ運用のエンゲージメント方針:組み入れ銘柄のパフォーマンス向上
パッシブ運用のエンゲージメント方針:売買をせずに長期で保有継続
アクティブ運用のエンゲージメント対象:組み入れ銘柄全社
パッシブ運用のエンゲージメント対象:時価総額の大きな銘柄
アクティブ運用のエンゲージメント内容:経営戦略や計画、取り組み状況や実績などを聞く「IRミーティング(取材)」を通して企業価値評価を行う。IRミーティングのなかで課題を指摘することもある。
パッシブ運用のエンゲージメント内容:議決権行使で企業に課題認識を促す。多くの投資企業に共通するガバナンスやサステナビリティ、情報開示、資本効率、企業文化などの課題をアジェンダに、複数の投資家が協働で「エンゲージメント(働きかけ、気づきを与える対話)」を行う場合もある。

(3)何故、パッシブ運用が隆盛を極めるようになったのか

次に、パッシブ運用についてみてみましょう。株式を運用するファンドマネージャーは、TOPIX(東証株価指数)や日経平均といったベンチマークを上回る投資パフォーマンスを求められてきました。しかし、現実には、ファンドマネージャーがベンチマークを上回る投資パフォーマンスを実現することは難しくなっています。さらに、アクティブ運用の場合、コストを掛けて企業を調査し、運用コストを掛けなければならないのに対して、パッシブ運用ではリサーチコストや運用コストが低減できることもパッシブ運用が拡大してきた背景と考えられますプロの運用者であるファンドマネージャーがベンチマークに勝つことが難しくなってきたために、少なくともベンチマーク並みの投資パフォーマンスが期待できるパッシブ運用に傾注するようになったというのが、パッシブ運用が隆盛を極めるようになった最大の理由なのではないでしょうか。

(4)日米欧におけるアクティブ運用とパッシブ運用の割合

ここで、我が国と欧米市場におけるアクティブ運用とパッシブ運用の比率を見てみたいと思います。2022年ベースでみると、我が国の場合、国内投資顧問残高のうちパッシブ運用の比率は70%に達しています。2014年が50%程度でしたので、8年間で20ポイント程度上昇したことになります。また、国内投資信託のうちETFなどパッシブ運用の比率は2022年では85%程度となっています。以上のことから、国内機関投資家が運用している株式運用資金のうち75%、すなわち4分の3がパッシブ運用となっているわけです。これに対して、米国機関投資家が運用する資金のうちパッシブ運用の割合は40%程度、欧州機関投資家では20%程度となっています。米国や欧州では、依然としてアクティブ運用の割合が大きくなっていますが、パッシブ運用の割合が増加傾向をたどっています。いずれ我が国のようにパッシブ運用全盛の時代がやってくるのかもしれません

(5)パッシブ運用の特徴とデメリット

株式市場は長期的に上昇が期待できるというのが、パッシブ運用における投資戦略の潮流にある基本原則です。したがって、市場とそっくりなポートフォリオを構築すれば、相場上昇に沿って値上がりすることになるわけです。また、パッシブ運用では、ゆっくりと確実に利益を積み上げて、頻繁に取引しないため、取引コスト(手数料等)が低くなります。ファンドに払う運用手数料は回避できませんが、上場投資信託(ETF)では運用報酬が1%以下に抑えられています。一方、パッシブ運用ファンドは、どのような相場状況であってもベンチマークに連動します。すなわち、インデックスが好調なときはファンドも上昇しますが、インデックスが下落すればファンドは下がってしまいます我が国では、2000年から2012年に掛けて株式市場の低迷が続いていました。こうした状況の下では、パッシブ運用によって投資パフォーマンスを上げることは極めて困難だったわけです。

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