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2025.08.20 コラム

4号特例見直しによる影響 ~本年4月から改正建築基準法が施行~

4号特例は小規模建築物の構造審査を一部省略できる制度ですが、2025年4月の建築基準法改正により対象範囲が縮小されました。省エネ性能や耐震性の確保が背景にあり、設計や申請の負担増が住宅着工数の減少を招いていると考えられます。

(1)4号特例とは何か

4号特例という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「4号特例」とは、建築基準法に基づき、特定の小規模な建築物(通称「4号建築物」)において、建築確認申請の際に構造や防火・避難に関する一部の審査が省略される特例制度のことです。具体的には、木造の2階建て以下かつ延床面積500㎡以下、木造以外の場合は平屋かつ床面積が200㎡以下の建物が対象となります。これらの建物が「4号建築物」に該当し、建築士が設計した場合には、構造計算書の提出が不要になり、前述の審査が簡略化されるなどによって必要な書類が少なく、審査期間も短縮されるというメリットがありました。しかし、2025年4月の建築基準法改正により、この4号特例は大きく見直され、その適用範囲が縮小されることになったのです。

(図表1)4号特例とは何か?
(1)4号特例の概要とメリットについて
✓「4号特例」とは、建築基準法に基づき、特定の小規模な建築物(通称「4号建築物」)において、建築確認申請の際に構造や防火・避難に関する一部の審査が省略される特例制度のことです。
✓具体的には、木造の2階建て以下かつ延床面積500㎡以下の住宅が「4号建築物」に該当し、建築士が設計した場合にはこれらの審査が簡略化され、必要な書類が少なく、審査期間も短縮されるというメリットがありました。
(2)4号特例見直しの背景と今後予想される事象
✓しかし、2025年4月からの建築基準法改正により、この4号特例は大きく見直され、その適用範囲が縮小されます。
主な背景としては、2050年カーボンニュートラル実現に向けた住宅の省エネルギー基準への適用義務化や、断熱材などの使用による住宅の重量増に伴う安全性の確保が挙げられます。
✓改正後は、建築確認申請の手続きが厳格化され、設計者や施行者の負担が増加するとともに、住宅の安全性や省エネルギー性能がより確実に確保されることが期待されています。

国土交通省(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_kijunhou0001.html)のページを基にIFA Leading作成。

(出所)メディア情報等を基にIFA Leading作成。

(2)4号特例見直しの背景とは

それでは、何故、4号特例が見直されることになったのでしょうか。主な背景として、2050年カーボンニュートラル実現に向けた住宅の省エネルギー化の推進と構造安全性の確保という2つの課題が挙げられています。まず、4号特例縮小の主な要因として、建築物省エネ法の改正が挙げられます。2025年4月から、原則としてすべての新築住宅に省エネルギー基準への適合が義務付けられました。しかし、従来の4号特例では、建築確認申請時に省エネ基準への適合性が審査されないため、制度との整合性が取れない状況となっていました。さらに、省エネルギー性能を高めるためには、断熱材の追加や高効率な設備の導入が必要となり、結果として建物の重量が増加します。この重量増加に対応するためには、構造的な強度の確保が不可欠であり、従来の4号特例の枠組みでは十分な安全性を担保できないとの懸念が生じていました。さらに、近年、地震や台風などの自然災害が頻発しており、住宅の耐震性や耐久性に対する関心が高まっていることも4号特例見直しの背景となっています。従来の4号特例では、構造計算の提出が省略されるため、複雑な形状や重量のある屋根を持つ建物など、構造的に脆弱な住宅が建てられる可能性が指摘されていました。このような背景から、建築物の安全性を確保するために、構造審査の強化が求められるようになってきたのです。また、過去の建築物の構造偽装問題などを踏まえて、建築確認・検査体制の強化が求められていました。このため、小規模な建築物についても、より詳細な審査を行う必要性があるとの共通認識が形成されていたのです。

(3)足元の住宅着工は大きく落ち込んでいる

ここで、最近における新設住宅着工戸数の動きを見てみましょう。2025年3月、新設住宅着工戸数は前年同月比39.2%増と大幅に増えました。しかし、4月以降は大幅な減少を示しています。この要因は、前述の4号特例見直しによって建築確認申請に手間と時間を要することを見越して、4月の改正建築基準法施行前に建築確認を取っておこうという「駆け込み需要」が影響したものと思われます。4月以降はこうした駆け込み需要の反動に加えて、以下のような要因によって着工戸数が大きく減少していると考えられます。すなわち、4号特例見直しによって、①コストや設計者の負担が増加すること、②工期が伸びること、③住宅価格の上昇が見込まれること、④住宅の安全性が向上すること、といった要因となります。④の住宅の安全性向上についてはポジティブな要因ですが、①、②、③についてはネガティブな要因であるとみられています。ちなみに、季節調整値を加味した2025年6月の年換算の新設住宅着工戸数は64万戸となっています。年間の住宅着工戸数64万戸という数値は高度経済成長を迎える1960年代にまで遡らなければなりません。当時は、戦後の混乱期の傷が癒えていない時期であり、住宅供給力に限界のある時期でした。その後、1972年度に185万戸、1987年度に172万戸という新設住宅着工戸数を記録しましたが、2009年度以降は100万戸台を回復していません。

(図表2)新設住宅着工戸数の前年比伸び率の推移

国土交通省「建築着工統計」(https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001313.html)を基にIFA Leading作成。

(注記1)給与住宅とは社宅のこと。

(4)今後の住宅着工の見方

さて、今後の新設住宅着工戸数はどのような推移をたどるのでしょうか。基本的には、4号特例見直しによる影響が徐々に緩和されて、新設住宅着工戸数は底入れから上向きに転じると思われます。こうしたなかで、地価の指標である公示価格については、地方も含め住宅地の価格が2022年から2025年まで4年連続で上昇しており、さらに多くの地域で上昇幅が拡大しています。 特に都市部を中心に人気の高い住宅地や、大型の企業進出があるエリア、観光地などで地価が大幅に上昇しています。加えて、建物価格も、2020年頃から建築材料の急激な価格上昇や、建築業界における人手不足、さらに働き方改革による人件費のアップにより急騰しています。このように、上昇を続けている土地と建物の価格が分譲住宅の販売価格に反映され、一部の地域では新築住宅の購入を控える動きが見られました。こうしたなかでも、住宅取得への意欲そのものは依然として高く、新設住宅の供給が減少する一方で、中古住宅の成約件数は増加しています。 東日本不動産流通機構によると、2024年の首都圏の中古マンションの成約件数は37,222件(前年比3.4%増)と2年連続で増加し、中古一戸建住宅の成約件数も14,182件(前年比10.2%増)と、3年ぶりに前年を上回りました。 こうした状況は2025年に入っても続いており、新築分譲住宅の価格高騰を背景に、価格が抑えられ、より広さを確保しやすい中古住宅の需要が高まったことが理由と考えられます。なお、金利の上昇も注目されるポイントとなっていますが、その影響は他の要因に比べると小さいと考えられます。金利が上昇局面にあるとは言え、返済額の増加は給与収入の伸びでカバーできる水準にとどまっています。さらに近年は、ペアローンの利用や、超長期住宅ローンといった返済負担を抑える手段も増えており、住宅の購入意欲に大きなマイナスの影響を及ぼす要因には至っていません。

一方、新設住宅着工戸数が長期的に減少傾向にある要因としては、日本の人口減少が挙げられます。 日本の総人口(在留外国人を含む)は2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じており、2025年4月1日現在では1億2,340万人とピーク比468万人も減少しました。今後も人口減少はさらに進み、国の推計では2070年には総人口が8,700万人にまで減少すると予測されています。人口が減れば住宅の需要そのものも縮小します。こうした流れを受けて2025年度の新設住宅着工戸数は、2024年度を下回る70万戸台半ば程度になるとみられています。

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