IFAL Times

 
2025.07.02 コラム

キャピタルフライトとは ~おカネは国境を越えて移動している~

キャピタルフライトとは、自国の経済悪化や通貨下落を懸念し、安全な投資先を求めて資本が海外へ流出する現象です。日本でも新NISAなどを通じ、個人の資産が米国株などへ向かう動きが見られています。

(1)キャピタルフライトとは何か?

キャピタルフライトという言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。キャピタルフライトとは「資本・資金(Capital)」が「流出(Flight)」することを意味する経済用語です。「キャピタルフライト」という表現は、その国の通貨価値が下落する要因が増えてきた時に、より安全で効率的な投資先・保管先を求めて、「国内から海外へと急速に資本が流出する事態」を意味しているのです。「キャピタルフライト」という経済用語は、「財政赤字・対外債務の拡大・インフレ率上昇・税率上昇・ファンドの海外投資」などを原因とする通貨価値下落の予測によって、「国内から海外へと急速に資本が流出する事態」を意味しており、当該国の政治・経済状況の先行きが望ましくないことを示唆していると言えます(図表1参照)。

(図表1)キャピタルフライトとは何か?
(1) キャピタルフライト(Capital Flight)とは何か?
✓ キャピタルフライトとは、ある国からの資金または投資が国外へ大量かつ急激に流出する現象を指しています。
✓ 具体的には、当該国の経済や財政等の状況の悪化等に際し、投資資金が国外に流出することを指します。キャピタルフライトで当該国の通貨が売られると、外国通貨・他国通貨に換えて国外に持ち出すため、急激なインフレや通貨安になることがあります。また、外国企業が撤退して雇用が減じる可能性もあります。
(2) どのようなことでキャピタルフライトが起こるのか?
✓ ある国において、信認の喪失(国の財政・経済等の不安定性、為替管理・税制等の規制強化などによって、貨幣価値が下がる懸念が高まる等)に起因して投資の魅力が乏しくなる場合に、その保有資産や貨幣を回避するために、資金がその国の資産や地域(他国)へ一斉に移動するという現象が起こることになります。
(3) どう使われるのか?
✓ 株に関連する投資活動においては、利子率や株価利回りなどの差益(収益)を得ることを目的に行われますが、キャピタルフライトはこれらとは異なり、資産や貨幣の保全の意味で、資産の安全な退避を図る(不測の損失を回避する)ことに主眼が置かれることになります。
(4) 資金流出が発生してきた主なキャピタルフライトとは?
✓ 1980年代には、急激なインフレの進行により、資金が国外へ流出する形においてキャピタルフライトが起こりました。
✓ 1990年代前半には、ソビエト連邦崩壊と中ソの冷却下での経済不安定でキャピタルフライトが起こりました。
✓ 1990年代後半には、アジア新興国において、金融危機や経済不安が発生しキャピタルフライトが起こりました。

(出所)財務省、メディア情報等を基にIFA Leading作成。

(2)何故、キャピタルフライトが起きるのか

それでは、何故、キャピタルフライトが起きるのでしょうか。具体的には、ある国において、国際情勢の緊迫、国内の政治・経済情勢の不安定化、為替管理・税制等の規制強化などによって、貨幣価値の大幅な下落、資産価値の減少、流動性の低下などが予想される場合、その危険や損害を回避するために、資金がその国から安全な地域(他国)へ移動することになります。また、そのほか株式等の高リスクの資産から、国債等の低リスク資産へ資金が移動することをいう場合もあります。一般に短期資本の国際的移動は、利子率や為替相場の変動などによる差益(収益)を得ることを目的に行われますが、一方でキャピタルフライト(資本逃避)は、こうした積極的な収益の追求ではなく、資産の保全や安全性を確保する(不慮の資本損失を回避する)ために行われるのです。過去には、1980年代のラテンアメリカや1990年代初期のロシアなどでキャピタルフライトがあり、また1990年代後半以降は、金融危機や通貨危機などが発生したアジア新興国においてキャピタルフライトが発生したと言われています。

(3)日本でもキャピタルフライトは起こっている?

わが国においては、キャピタルフライトは無縁なのではないかと思われがちですが、既にキャピタルフライトは起こっているという見方があります。資本には「より安全で効率的な投資先」を求めて移動する性質があるため、「自国通貨の価値下落(インフレ率上昇)・自国経済の悪化・国内企業の株価下落・財政悪化・少子高齢化の進展(経済の将来性の悲観)」などがあると、「キャピタルフライト」が起こりやすくなってしまうのです。その意味で、少子高齢化と財政悪化が進んでいる現代の日本は、海外に資本が流出する「キャピタルフライト」のリスクを抱えていると言えるでしょう。実際問題として、2024年にスタートした「新NISA」は個人の資産形成に資するものとして、鳴り物入りでスタートしましたが、新NISAによって個人が株式や投資信託の購入量を大きく増やしたという状況にはなっていないようです。勿論、制度を理解したうえで新NISAを利用する人は増えましたが、最も購入されているのは米国株及び米国の「S&P500」或いは「オールカントリー(通称オルカン)」といった海外金融商品となっています。このことは、日本株や日本株で構成している金融商品を購入しても、満足のいく収益が期待できないので、こうした海外金融商品に資金が注がれることを意味しています。いわば、個人投資家による「キャピタルフライト」と言って良いのかもしれません。一人一人のキャピタルフライトの金額はしれていますが、全体としては大きく、このことが、円安要因になっていると指摘する専門家もいます。但し、日本人による海外証券投資に関しては、「キャピタルフライト」と称しているケースはほとんどなく、あくまでもポートフォリオの構成上海外投資のウエイトが高くなっているといった認識が一般的のようです。

(4)わが国では、今年に入ってから対外証券投資による資金流出が増えている

ここで、わが国における対外及び対内証券投資の動きを見てみましょう。対外証券投資とは、当該国の居住者(主に日本人)による海外証券投資のことであり、ここではネット(取得-処分)を示しています。2017年以降の動きをみると、2021年及び2022年を除くと一貫して対外証券投資は黒字となっています。すなわち、日本から海外へ資金が流出していることを示しているわけです。株式やファンドについては特に米国株に関連した投資信託などを購入したケースが多かったのではないかとみられています。また、中長期債に関しては、日本国内の債券に比べると海外の債券は利回りが高いため個人を中心に海外の国債などを購入するケースが増えていたのではないかと思われます。日本国債の利回りは1%に満たないのに対して、海外の債券利回りは少なくとも4~5%以上となっているため、為替リスクを懸念したとしても日本の投資家は海外証券投資を選好したものと思われます。

さらに、2025年になると、この勢いは一段と顕著になります。2024年にスタートした新NISAによって、個人による証券投資が活発化し、その資金は米国を中心とした外国株へと向かっていったのです。但し、こうした動きがキャピタルフライトかというと必ずしもそうとは言い切れません。確かに、わが国は経済の低成長が続いており、国債発行残高の大きさから財政リスクがクローズアップされています。しかし、国家の経済・政治体制が揺らいでいるかと言えば、他国に比べるとマシであるといった見方もあります。したがって、わが国の対外証券投資による資金流出はあくまでも証券投資に根ざすものであり、資産そのものを海外にシフトするといった動きではないと考えられます。

(図表2)わが国の対外及び対内証券投資売買契約等の状況(年次ベース)

(出所)財務省「対外及び対内証券投資売買契約等の状況」よりIFA Leading作成。

(注記)対外証券投資の黒字は資金流出、赤字は資金流入、対内証券投資の黒字は資金流入、赤字は資金流出を表している。

(5)対内証券投資では資金流入が確認されている

一方、非居住者(外国人)がわが国の証券を取得・処分する対内証券投資をみると、2022~2024年の時期を除くと、一貫して取得額が上回っています。このことは、わが国に対して資金が流入していることを示しています。2022~2024年にかけては、世界的なインフレ懸念に伴う金利上昇によって債券価格が低下したため、処分する動きが広がったことが影響したものと考えられます。一方、株式・ファンドについては、企業による株主還元強化先を好感して、2023年以降は取得金額が大きく買い越しとなっています。対内証券投資全体では、2025年に入ってからは一段と取得額が膨らんでいます。このことは、わが国の金融市場はキャピタルフライトによって資金が流出しているのではなく、非居住者により資金流入も増えていることから、流動性の高い金融市場であることを物語っていると言えるのではないでしょうか。ちなみに、ひとたびキャピタルフライトが起きると、資本・資金のみならずその国に居住している人々も海外に脱出するといった動きが広がっていくことは歴史が証明しています。

IFA Leadingのアドバイザーにお気軽にご相談ください

無料相談・お問い合わせはこちら

セミナーのお申し込みはこちら

 

#キャピタルフライトとは

#対外証券投資

#対内証券投資