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KPIとは~企業経営において必要不可欠な指標だが、設定と運用には課題も~
KPIとは目標達成に向けた進捗を可視化する指標で、企業やチームの行動を戦略的に導く役割を持ちます。適切な設定と運用が重要で、誤ると逆効果となってしまいます。
- (1)KPIとは何かを理解する
- (2)KPIはどのように活かされるのか
- (3)KPIが無いとどうなるのか
- (4)KPIを設定する際のポイント
- (5)KPI導入による失敗のケース
- IFA Leadingのアドバイザーにお気軽にご相談ください
目次
(1)KPIとは何かを理解する
KPIという言葉をご存じでしょうか。かつては余り聞きなれない言葉でしたが、ここ10年くらいの間にいろいろな場面で耳にするようになりました。KPI(重要業績評価指標)とは、Key Performance Indicatorの略であり、企業が設定した目標に対する進捗状況を定量的に評価するための指標のことです。具体的には、売上高や顧客満足度、業務効率などが含まれており、目標達成に向けたプロセスの進捗を示すバロメーターとして機能することになります。KPIを設定することで、チームや個人のパフォーマンスを可視化し、改善点を見つけやすくするということが期待できます。例えば、ある部門でKPIのひとつに年間売上高目標を10億円に設定したとします。年度が替わって6カ月経過した時点での売上高実績が3億円だとします。このままでは年間の売上高目標をクリアできないので、何とかして目標に近づけるよう改善施策を測るようにしなければなりません。この時、改善に向けた指針となるのがKPIというわけです(図表1参照)。
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(出所)メディア情報等を基に筆者作成。
(2)KPIはどのように活かされるのか
そもそも、企業経営は勿論のこと、KPIは社会のさまざまな世界で活かされているのです。ある野球球団が、「今年の目標は優勝する」というKPIを掲げるとします。そのためには、何をすべきかということを球団のマネジメント、監督やコーチといった指導者たちが協議して具体的施策に落とし込んでいくわけです。外野の守備力が弱いから守備力を強化しよう、リリーフピッチャーの防御率が悪いからリリーフピッチャーを補強しよう、盗塁数を増やすために走力を付ける練習に時間を割こう、などさまざまです。企業にしてもスポーツチームにしても他人事ではKPIの達成はおぼつきません。各メンバーが自分自身の役割と責任を明確に理解して、目標達成に向けた行動をとることが求められるのです。ある会社の営業部門では、毎日、営業マンが一日50件の電話することをKPIのひとつとしていました。ところが、営業マンのなかには頑張って一日100件の架電する猛者もいた一方で、別の営業マンは一日10件の架電で仕事を切り上げてしまいました。一日100件架電していた営業マンは契約件数も増えて社長表彰をされることになりました。しかし、一日50件のKPIをクリアする営業マンが限られており、部門全体の契約件数は前年比減少してしまったため、その部門のKPIは目標未達となり、部門評価は下がりボーナスは大きく削られることになってしまいました。
(3)KPIが無いとどうなるのか
それでは、KPIが無かったらどうなるのでしょうか。かつてのわが国企業では、KPIが無い企業がほとんどでした。企業が重視していたのは「前年実績」でした。どのような業種であれ、前年実績を上回ることが必達でした。経理・財務、研究開発といった部門は経営にとってコスト部門と見なされていて、KPIを設定するにはなじまないとされていました。今日において、KPIの設定が無かったとしたらどのようなに問題が発生するのでしょうか。第一に、目標達成が難しくなることが考えられます。KPIが無いと重要目標を達成するための進捗をはかることが出来ずに目標達成が困難になってしまいます。ある部門で売上高目標を○○億円としても、そのために商談件数、受注単価、成約率などのKPIを設定していないと目標達成が難しくなってしまいます。第二に、方向性の欠如が挙げられます。KPIを設定しないと、チームや組織の方向性が不明確となり、課題が見えにくくなってしまいます。例えば、ある部門で商談件数が増えないといった状況が発生したとします。この場合、営業員に商談を入れるように頑張れと言ってもなかなか改善しないケースがほとんどです。商談件数が伸びない理由を追求し、仮にその会社の扱っている商品やサービスの競争力が低下しているのであれば改善をはかる必要があるのです。そして第三に、リソースの無駄遣いが挙げられます。KPIが無いと、リソースの配分が適切でなくなり、結果として無駄が生じることによって会社全体の収益力が低下してしまうといった事態に陥ってしまうかもしれません。
(4)KPIを設定する際のポイント
KPIは設定した目標と一致している必要があります。目標達成に直結する指標を選定することで、KPIの効果を最大限に発揮させることができます。目標と無関係な指標を設定してしまうと、努力が無駄になる可能性があります。例えば、売上増加が目標であれば、顧客満足度も重要ですが、直接的に売上に影響を与えるリード数や受注率が優先されます。KPIは定量的に測定できる指標であることが求められます。定性的な指標では、進捗状況や成果を正確に把握することが難しくなります。できるだけ具体的な数値で表現できる指標を選ぶことが適切です。例えば、「顧客満足度を向上させる」ではなく、「顧客満足度スコアを80以上にする」といった具体的な数値目標を設定することが必要になります(図表2参照)。
また、高すぎる目標はモチベーションを低下させる原因となり、逆に低すぎる目標は挑戦意欲を削ぐ原因となります。現実的かつ達成できる目標を設定することで、継続的な努力を促すことができます。例えば、売上増加を目指す場合、過去の実績や市場動向を考慮して、現実的な増加率を設定します。一方、ビジネス環境は常に変化しています。KPIを設定する際には、状況の変化に応じて柔軟に調整できるようにしておくことが望まれます。必要に応じてKPIを見直し、最適な指標を維持することが大切です。例えば、経済状況や市場の変化により、当初設定したKPIが適切でなくなった場合には、すぐに見直しを行います。KPIは組織全体で共有し、全員が理解し同じ目標に向かって努力することが必要です。チームメンバー全員がKPIを共有することで、一体感が生まれ、協力して目標達成に向かう姿勢が強化されます。例えば、定期的なKPIミーティングを開催し、全員が目標に対する理解を深める機会を作ることも大切なことです。
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(出所)メディア情報等を基に筆者作成。
(5)KPI導入による失敗のケース
最後にKPI導入による失敗のケースをみてみましょう。KPIを設定している企業のなかには、安易なやり方でそのKPIを達成しようとする人間も出てきます。例えば研究所で「特許の数」を研究員のKPIとして設定するのはよくあることなのですが、それを強調しすぎると、「会社にとってはそれほど役に立たない、取りやすい特許」を取ろうとする人間がこれまた一定比率登場します。これでは企業の競争力につながりませんし、優秀な研究者がそうした行動をとってしまうとしたら大きな損失です。KPIは、組織が向かうべき方向性や戦略の重点を従業員に伝えるメッセージでもあるのですが、その理解が甘いと、メッセージが誤解・曲解され、従業員の行動を誤らせてしまうかもしれないのです。また、測定しにくいものをKPIにしたがゆえに経営や上司に対する不信を招くといったこともよくあります。例えば顧客との商談時間などは、なかなか正確に補足できないものです。これを自己申告で過大に報告してそれがまかり通るようであれば、まじめに報告している営業担当者はやる気を失うことでしょう。さらに、KPIが達成できないと言って、感情的に叱責する上司はリーダーとして不適切と言わざるを得ません。何故、KPIが達成できなかったのかを客観的に分析し、次の改善に繋げていくことこそがKPIの正しい使い方と言えるのではないでしょうか。
