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アクティビストとは ~企業の敵対者なのか、企業変革を促す投資家なのか~
アクティビストとは、一般的に、企業に対して改善を促して経営改革を進める投資家、のことを指しています。昨今ではアクティビストによる株主提案が大きく増加しており、今後の動向には注視が必要かもしれません。
- (1)アクティビストとは何か?
- (2)「物言う株主」とは何か?
- (3)アクティビストの目的とは何か?
- (4)アクティビストがフォーカスしているポイントとは
- (5)昨今、株主提案数が大きく増えている
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目次
(1)アクティビストとは何か?
最近、アクティビストという言葉を聞かない日が無くなりました。アクティビストというと、「企業に対する乗っ取り屋」、「自己の利益のために企業に対して不当な要求をする投資家」、「投資先企業の株価が上がってしまえばさっさと売却をしてしまう短期投資家」といったネガティブに印象がありますが、本当のところはどうなのでしょうか。こうしたネガティブな側面については一定程度の企業が印象として持っています。一方、アクティビストは企業に対して改善を促して経営改革を進める投資家であり、企業にとっては「改革者」といった受け止め方もあります。長年、業績が低迷を続け、株価も低位に放置されていた企業、アクティビストの参入によって経営改革が進み、株価も大きく上昇したといったケースがみられるからです。
(2)「物言う株主」とは何か?
アクティビストは、「物言う株主」とも言われています。従来の日本企業は、安定株主と称して相互に株式を保有するという「政策保有株」によって構成されてきました。或いは、取引銀行などの金融機関に自社株を持ってもらうこともありました。こうした安定株主は、株主提案において会社提案に無条件で賛成票を投じ、会社経営に対してほとんど口出しをすることはありませんでした。このため、安定株主は「物言わぬ株主」とも揶揄されていました。「物言わぬ株主」は、会社経営に口を挟まないので会社側にとっては好都合な存在でした。しかし、その結果として、日本企業は世界的にも低収益・低成長・低株主還元企業が名を連ねることとなり、「失われた30年」という長いトンネルに入ってしまったのです。こうしたなかで、実態の企業価値に比べて、余りにも株価が低水準にある日本企業に着目して、2018年頃から「物言う株主」としてアクティビストが日本市場での存在感を増してくるようになってきたのです。
(3)アクティビストの目的とは何か?
アクティビストの目的は、株価が低位に放置されている企業を見つけて、経営改革を促し、企業価値を高めて株価を上昇されることにあります。アクティビストは、投資対象企業の株価を集めて、さまざまな提案を行うことになります。会社側ではアクティビストとの対話によって、幾つかの提案を受け入れることがあります。その結果、株価が上昇し株主は利益(含み利益、実現益)を享受することになります。アクティビストが取得した株価をどこで手放すかはケースバイケースですが、場合によっては巨額の利益を得ることもあります。アクティビストは、アセットオーナーと言われる資金の出し手がおカネを預かって運用しているわけなので、少しでも良いパフォーマンスを得ることでアセットオーナーに応えたいという意向が強いと思われます。但し、パフォーマンス実績、アセットオーナーに関する情報については余り積極的に開示していない印象があります。これは、アクティビストの場合、個人の小口資金を集めて運用するというスタイルではなく、富裕層などの大口資金、機関投資家といった層の資金を運用しているため、隠匿性が求められているからだと推察されます(図表1参照)。
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(4)アクティビストがフォーカスしているポイントとは
それでは、アクティビストは企業のどのような点にフォーカスして投資を行っているのでしょうか。基本的には、投資対象企業の収益が向上し、株価が上昇することがアクティビストの最も目指している点となります。第一に、収益を向上させるという点では、低採算部門の売却、本業への注力によって収益力向上を目指すというものです。企業にとって長年赤字部門であっても、創業来の事業であるということで事業を継続しているケースが少なからずあるはずです。アクティビストはこうした希望的観測について許容することはありません。低収益体質の根幹は現経営陣に責任であるとして、社長を含めた経営層の入れ替えを求めてくることもあります。場合によっては、アクティスピストが推薦する経営陣を送り込んだり、アクティビストそのものが経営権を握ることもあります。そうなってしまうと、経営が混乱してしまうので、株主総会では企業側とアクティビストとの議決権の争奪戦になることもあるわけです。
第二に、不動産や美術品といった収益を生まない?保有資産に対して、アクティビストは厳しい目を注いでいます。不動産は収益を生むではないかといった見方がありますが、ROIC(投資資本利益率)が低く株主利益への貢献が低いといった観点で企業が保有することに対して否定的な見方をしています。その意味では、アクティビストは不動産会社に対しては厳しい見方をしています。不動産会社に投資をするくらいならば、内部留保を求めないビジネスモデルであるREITに投資することが望ましいといったスタンスを取っています。したがって、アクティビストは企業が保有している不動産に対しては、まずもって売却提案を行うケースが多いようです。工場などの生産設備に関わる不動産はともかくとして、本社や支店など自社で利用する不動産は賃貸で十分ではないかという発想なのです。企業側としては、万が一業績が大きく悪化した場合、不動産、有価証券、現預金を保有していることによって倒産を回避できるかもしれないという考えがあることは否定できません。事実、過去の不況時においては、不動産や有価証券の売却によって資金繰りの悪化を回避できたというケースはみられました。
(5)昨今、株主提案数が大きく増えている
ここで、2024年株主総会シーズン(2023年7月~2024年6月株主総会)における株主提案数をみると、113件と過去最高を更新しました。中味をみると、アクティビストを含む機関投資家による株主提案が太宗を占めており、アクティビストによる株主提案は2022年以降大きく増加しています。議案内容としては、定款変更、株主還元、取締役選任、報酬等となっていますが、株主還元や取締役選任に関する議案では賛成率が高いケースも少なくありません。とはいえ、現状、日本企業において株主提案が可決することは稀であり、依然として会社提案の議案が可決されるケースがほとんどといった状況になっています。
最後に、アクティビストは企業の敵対者なのかそれとも企業変革を促す投資家なのかについて考えてみたいと思います。2019年、米国の有力なアクティビストであるサード・ポイントは、ソニーの株式を大量に取得し、エンターテインメント事業や半導体事業の分離・独立を要求するなど、複数回にわたって経営に圧力をかけました。この事例は日本企業に対するアクティビスト投資の代表例として取り上げられることの多いケースです。ソニーはサード・ポイントの提案を素直に受け入れたわけではありませんでしたが、さまざまな対話を通じて事業構造の見直しやガバナンス改革を進めることとなりました。その結果、ソニー株は上昇し、株主価値を高めることになりました。また、最近では、①香港系投資会社である「オアシス・マネジメント」による花王に対する、マーケティング戦略の改善や業務効率の向上を求める提案、②イギリスの投資ファンドの「パリサー・キャピタル」による京成電鉄に対する、資本配分計画策定やオリエンタルランド株式の保有比率削減を求める株主提案、等が市場を賑わしています。確かに、アクティビストは投資先企業の内容について熟知しているわけではありませんが、彼らの提案に耳を傾けることは大切なことです。勿論、不当な要求を受け入れる必要はありませんが、アクティビストを利用して企業改革を進めることによって企業価値を高めるというのは一つの考え方なのではないでしょうか。
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