経済安全保障とは何か
~国家の独立と国民の安全・繁栄を確保する取り組み~

経済安全保障とは、経済的手段を通じて国家の独立と国民の安全・繁栄を確保する取り組みです。本コラムでは、サプライチェーンの脆弱性や技術流出などの課題、関心が高まる背景を整理するとともに、日本政府の対応や官民連携による取り組みの重要性について解説しています。

2026.06.03

コラム 未分類

経済安全保障とは何か
~国家の独立と国民の安全・繁栄を確保する取り組み~

目次

01 経済安全保障とは何か?

経済安全保障という言葉を聞いたことがあるでしょうか。経済安全保障とは、経済的手段を通じて国家の独立と国民の安全・繁栄を確保する取り組みのことを指しています。経済安全保障は、従来の軍事的安全保障とは異なり、非軍事的手段で国や国民の安全を守る概念です。わが国では、自民党の提言や国家安全保障戦略において、「わが国の独立と生存及び繁栄を経済面から確保すること」と定義され、経済的自律性の確保や国際社会における戦略的不可欠性の維持・強化が目的とされています。これまで、安全保障と言えば、主に軍事的脅威に焦点が当てられてきました。国家の領土保全や他国からの侵略防止が中心であり、防衛力強化によって対処してきたというのが実態だと思います。しかし、現代においては、自然災害、感染症、テロ、サイバー攻撃、資源不足など非伝統的脅威も安全保障の対象に含まれるようになってきています。

02 経済安全保障にかかわる基本的な捉え方

経済安全保障は、従来の軍事力中心の「伝統的安全保障」とは異なり、非軍事的手段によって国家や国民の安全を守ることに焦点を当てています。経済安全保障が対象とする課題として、①サプライチェーンの脆弱性:鉱物資源、エネルギー、食料、医薬品などの重要物資の供給が特定国に依存していること、②経済的威圧:他国による輸出制限や債務を利用した圧力、③技術流出や知的財産の窃取:AI、量子技術、バイオ技術など先端技術の保護、④重要インフラの脆弱性:電力、情報通信、金融ネットワークなどの基幹インフラの安全確保、といった点に大別されます。昨今では、米国のトランプ政権による関税政策によって②の経済的威圧にさらされているほか、中国によるレアアースの輸出管理によって①のサプライチェーンの脆弱性等が注目されています。さらに、③の技術流出や知的財産の搾取に関しても喫緊の課題とされています。

(図表1)経済安全保障とは何か

(出所)外務省資料等を基に(株)IFA Leading作成。

03 何故、経済安全保障に対する関心が高まってきたのか

それでは、何故、経済安全保障に対する関心が高まってきたのでしょうか。その最大の背景は、米中対立やウクライナ紛争など地政学リスクの高まりによって、経済安全保障に不透明感が増してきたからにほかなりません。さらに、今年3月のイスラエル・米国によるイランへの攻撃によって、原油価格が高騰しエネルギー資源の確保に支障をきたすとの懸念が広がってきました。国際情勢が厳しさを増し、関税政策などにより自由貿易体制が歴史的転換点を迎えるなかで、経済上の国益をどのように確保していけばよいのでしょうか。政府は、経済安全保障推進法を2022年5月に制定し、2024年7月には経済産業省に「貿易経済安全保障局」を新たに設置するなど体制を強化していますが、エネルギーや食料などの多くを輸入するわが国の存立の前提となる経済力を高めるには、官民の連携が欠かせないと言えるでしょう。

戦後の日本経済は長らく、様々なものを輸入し、製品にして輸出する形で発展してきました。グローバル化で分業体制が進むと、より安くモノを作ることができる中国や東南アジアなどにも投資して製造拠点を設け、他国との結びつきが強まっていました。これまでは、WTO(世界貿易機関)を中心に国際社会における自由貿易のルールが守られていたので、日本企業は安心して輸出したり、輸入したり、外国に投資をしたりすることができていました。

ところが、相手国の政策の変更で高い関税が課されたり、モノの動きが滞ったりする事が起きています。日本で経済安全保障が重要視されるようになったきっかけの一つに、2010年の中国によるレアアース輸出の大幅削減・停滞があります。最近では、米国による高関税政策にも注目が集まっています。米国や中国もWTO加盟国であり、以前なら「やらないだろう」と思われていたことが実際に起きるようになったのです。特定の国への依存が強ければ強いほど、問題発生時のダメージが大きいのですが、こうした状態にあるのは日本だけではありません。多くの国が国際的な分業体制に組み込まれており、経済安全保障にどう向き合うかは世界中の国々の大きなテーマとなっているのです。

(図表2)国際情勢の変遷~大国間による「技術」の囲い込み競争の時代へ

(出所)経済産業省「貿易経済安全保障局」資料等を基に(株)IFA Leading作成。

04 経済安全保障に対する日本政府の基本的な取組み

こうしたなかで、日本政府は経済安全保障に関してどのような取組みを行っているのでしょうか。日本政府は経済安全保障を強化するため①戦略基盤産業の強化:エネルギー、情報通信、交通・運輸、医療、金融の分野で脆弱性を分析し、国内生産や多元的調達を推進、②先端技術の保護と育成:国内での研究開発拠点整備や技術流出防止、半導体やレアアースの安定供給確保、③国際ルール形成への関与:貿易や投資、技術標準の国際ルール作りに参加し、自国に有利な経済秩序を構築、④法的整備:2022年に成立した経済安全保障推進法に基づき、サプライチェーン強靭化や重要物資の安定供給を支援、といった取り組みを進めています。経済安全保障は単に防御的な取り組みだけでなく、戦略的に経済力を活用して国際的優位性を確保する攻めの側面も重要です。

経済安全保障は、国家の独立と国民の安全・繁栄を経済的手段で守る包括的な戦略であり、サプライチェーン強化、先端技術保護、国際ルール形成、重要インフラの安全確保など多面的な取り組みを通じて実現されます。日本においては、法整備や政策支援を通じて、国内外の脅威に対応しつつ、戦略的優位性を維持・強化することが中心課題となっています。昨今、スパイ防止法案に関する議論が活発化しています。日本の経済安全保障とスパイ防止法案は、国家の安全と経済活動の保護を目的としています。経済安全保障推進法は、国際情勢の変化に伴い、経済活動に関連する国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止するための法律です。一方、スパイ防止法案は、外国のスパイ活動から国家の重要な情報や技術を守るための法律であり、諜報活動を取り締まり、国家安全保障上の脅威に対処することを目的としています。日本には、このような包括的なスパイ防止法が存在せず、技術流出のリスク増大や国際情勢の変化に伴う脅威が高まっています。これらの法律は、国家の安全と経済活動の保護を確保するために重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

(図表3)経済安全保障経営ガイドライン(案)の一部抜粋

(出所)経済産業省「貿易経済安全保障局」資料等を基に(株)IFA Leading作成。

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加藤 映美

ウェルスマネジメント

加藤 映美

Emi Kato

2017年にSMBC日興証券本店に入社。個人・法人向け資産運用コンサルティング業務に従事する。 本質的な運用提案をしたいという思いと自身のスキルアップのため、2019年にIFAとして独立。 資産運用のみならず、法人保険や不動産などのソリューションも提供している。またセミナー講師も経験。 2022年にIFA Leadingの創業に参画。 美容情報収集が趣味で、専門分野のお客様も担当。皆様の人生を全力で楽しめるものにすべく資産運用で伴走します。

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