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特殊詐欺被害 ~当局が注意を喚起しても被害は減っていないのが実態~
特殊詐欺被害が過去最高水準となっています。高齢者をターゲットとしたものが多く、被害額も高額です。うまい話や、身に覚えのない話、少しでも違和感がある場合は、一度相談することが大切です。

- (1)特殊詐欺とは何か
- (2)特殊詐欺とほかの詐欺との違いとは何か
- (3)2024年の特殊詐欺被害額は過去最高に
- (4)どういった内容の特殊詐欺が増えているのか
- (5)振込型による被害額が大きく増えている
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目次
(1)特殊詐欺とは何か
随分前から「特殊詐欺」という言葉を耳にすることが増えてきました。特殊詐欺とは、犯人が電話やハガキ(封書)等で親族や公共機関の職員等を名乗って被害者を信じ込ませ、現金やキャッシュカードをだまし取ったり、医療費の還付金が受け取れるなどと言ってATMを操作させたりして、犯人の口座に送金させる犯罪(現金等を脅し取る恐喝や隙を見てキャッシュカード等をすり替えて盗み取る詐欺盗を含む )のことです。 警察庁では特殊詐欺を根絶すべく、各種対策・検挙活動に取り組んでいますが、被害が根絶できないのが実態となっています。最近では、宅配業者やカード会社を名乗って、個人情報を盗み取ろうといった手口が急激に増えているようです。
(2)特殊詐欺とほかの詐欺との違いとは何か
まず、「詐欺」という言葉の意味から確認してみましょう。詐欺は、他人をだまして不当に利益を得る行為全般を指します。つまり、誰かを騙してお金を取る行為はすべて詐欺です。この中には、会社の資金を不正に持ち逃げする「会社詐欺」や、偽の宝くじを販売する「宝くじ詐欺」、電話での「オレオレ詐欺」など、さまざまな形態があります。一方、「特殊詐欺」とは、詐欺の中でも特に手口が多様で、現れる形が特殊なものを指します。警察がこの言葉を使い始めた背景には、電話やインターネットを利用した新しい詐欺の形が増加したことがあります。特殊詐欺には「振り込め詐欺」、「還付金詐欺」といったものが含まれます。特殊詐欺が問題視されるのは、その被害が高額になることが多いからです。特に、 高齢者をターゲットにしたケースが多く、実際に多くの高齢者が騙されて大きな金銭的損失を受けています。なぜ高齢者が騙されやすいのかを考えると、日常生活の中で新しい技術に疎くなっていることも要因のひとつといえるでしょう。
(3)2024年の特殊詐欺被害額は過去最高に
次に、特殊詐欺の被害状況についてみてみましょう。2024年の特殊次の認知件数は20,987件、被害総額は721億円といずれも過去最高を記録しました。被害は大都市圏に集中しており、東京都、大阪府、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、兵庫県の7都府県での認知件数は全体の64.7%に達しています。何故、被害が都市部に集中しているかについては、①都市部は高齢者の一人暮らしの割合が高い、②都市部は地方に比べて近所付き合いが希薄である、③都市部は地方に比べると比較的金融資産等を多く保有している、といった点が考えられます。ちなみに、1件当たり平均被害額をみると、2019~2022年までは200万円前後だったのが、2024年には344万円と大きく跳ね上がっています(図1参照)。この点についてはインターネットバンキングの利用によって振込限度額の変更が出来ることも影響しているのではないかと考えられます。ちなみに、国税庁によると、サラリーマンの平均年収は460万円程度であり、税金や社会保険料を控除した手取りは360万円程度となります。なんと特殊詐欺被害額の平均はサラリーマンの平均手取り額に匹敵する金額となっているのです。このことは誠に忌々(ゆゆ)しき問題であるといえるでしょう。

(4)どういった内容の特殊詐欺が増えているのか
それでは、どういった内容の特殊詐欺が増えているのでしょうか。なかでも、オレオレ詐欺は認知件数の31.8%、被害額の62.8%を占めています。かつてのオレオレ詐欺は、子供になりすまして親に電話を掛けて示談金をだまし取るといった手口が多かったのですが、最近は、警察等を装って金品をだまし取るといった手口が増えているようです。また、昨今は、「架空料金請求詐欺」、「還付金詐欺」が多く増えていることが特徴となっています。架空料金請求詐欺とは、パソコンのウイルス除去をサポートする等の名目で電子マネーをだまし取るといったものです。一方、還付金詐欺とは、「医療費が還付される」「税金が還付される」などといって、ATMから現金を振り込ませるといった手口のようです。基本的には、税務署などの還付制度は申告に基づくものであり、「還付が案内される」ことは絶対にありません。うまい話はまずは疑って掛かることが大切です(図2参照)。

(5)振込型による被害額が大きく増えている
最後に、主な被害金交付形態別動向を見てみましょう。2024年の警察庁による公表データをみると、認知件数の52.6%、被害額の59.8%は振込型となっています。昨今では、被害額500万円以上の振込型、なかでもインターネットバンキングによる被害が増える傾向にあります。銀行のATMで携帯を見ながら振込をしていると銀行員や警備員から声を掛けられて未遂に終わるケースもあるようですが、インターネットバンキングであれば犯人にとってそうした心配はなくなります。それにしても、何百万円もの大金を個人が振り込むというのは大変な事象であり、「本当に依頼人は信用できるのか」「身に覚えのあることなのか」「そもそも何に使うのか」といった確認が必要であり、冷静に対処しなければならないことは言うまでもありません。
図表3をみて驚いたのが、現金送付型の1件当たり被害額の平均が1,000万円を超えていることです。恐らく「ゆうパック」などを利用して現金を送付しているのでしょうが、そもそも大量の現金を送付する自体が怪しいという意識が大切なのではないでしょうか。ちなみに、高齢者(65歳以上)の被害は認知件数で全体の65%を占めており、女性の被害件数は男性の2倍以上となっています。また、電話による被害が全体の約8割となっています。警察が把握した、電話の相手方に対して、住所や氏名、資産、利用金融機関等を探るなどの特殊詐欺が疑われる電話(予兆電話)の件数は192,686件(+60,818件、+46.1%)で、月平均は16,057件(+5,068件、+46.1%)と増加しています(2024年実績)。知らない相手からの電話には出ない、留守番電話に設定する、万が一出てしまったら直ぐに切る、といった対応が必要だと思います。
