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2024.11.13 コラム

地価動向を都道府県地価調査からみる ~全体として上昇基調が強まっている~

地価動向を確認すると、大都市圏に限らず全国的に上昇しており、インフレ環境へと転じている兆候がみえています。今後日本の地価はどのように遷移していくのか、様々なデータを基に解説していきます。

(1)2024年は全国的に地価が上昇している

都道府県地価調査は、各都道府県知事が毎年7月1日における基準値1㎡当たりの価格を調査し公表するものであり、3月に発表される公示地価調査と並んで不動産市況をみるうえでの指標になるものといわれています。2024年の特徴として、景気が緩やかに回復しているなか、地域や用途により差があるものの、三大都市圏では上昇幅が拡大し、地方圏でも上昇幅が拡大又は上昇傾向が継続するなど、全体として上昇基調が強まっていることが挙げられます。全国の動向を整理すると、住宅地については低金利環境の継続により住宅需要は堅調であり、特に大都市圏の中心部などで上昇傾向が強まっています。また、人気リゾート地では別荘等に加えて、移住者用住居などの需要が増大しました。商業地については、主要都市で店舗・ホテル等の需要が堅調であり、オフィス空室率の低下・賃料上昇等により地価上昇が継続しました。さらに、観光客が回復した観光地で上昇率が拡大し、都市中心部ではマンション需要との競合により上昇率が拡大する事例がみられました。

(2)全用途平均が3年連続で上昇し、地価回復は全国に広がる

三大都市圏の状況をみると、全用途平均は4年連続、住宅地は3年連続、商業地は12年連続で上昇し、それぞれ上昇幅が拡大しました。東京圏、大阪圏、名古屋圏では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも上昇し、上昇幅が拡大しました。一方、地方圏では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇しました。全用途平均・商業地は上昇幅が拡大し、住宅地は前年と同じ上昇率となりました。地方四市では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも12年連続で上昇しましたが、上昇幅は縮小しました。その他の地域では、住宅地は下落が継続していますが、下落幅は縮小し、商業地は2年連続で上昇し、上昇幅が拡大しました。全用途平均は平成4年以来32年ぶりに上昇に転じました。また、上昇率上位地点をみると、北海道、熊本、沖縄といった地域が目立っています。これらの地域では、大規模工場進出、リゾート開発、外国資本の参入等によってヒト、モノ、カネが集まってきていることが特徴となっています(図表1参照)。

図1 令和6年都道府県地価調査動向

(3)地価公示との共通地点における半年ごとの地価変動率

2024年都道府県地価調査の半年ごとの地価変動率をみると、住宅地、商業地ともに総じて前半よりも後半の伸び率が高くなっています。このことは、地価の先高感を示しているとともに、不動産取引が活発化していることを表していると思われます。ただし、商業地に比べて住宅地では名古屋圏、地方四市、等での伸び率が前半から後半に掛けて鈍化しています。そもそも商業地の売買主体が法人であるのに対して、住宅地の最終購入者は個人が主体となっています。個人の購入者は自身で居住するか、賃貸するか、事業用として活用するかといった目的で購入するわけですが、資金余力に限りがあるため、法人に比べると価格に敏感にならざるを得ません。このため、地域によっては地価が伸び悩んでいるといった現象が出てきているわけです。

一方、下落地点の構成比(調査対象地点における地価が下落した割合。調査対象地点100箇所のうち40箇所で地価が下落すると40%となる)は、住宅地、商業地ともに低下しています。東京圏の商業地における令和6年(2024年)調査では、下落地点の割合が1.6%にまで低下しました。このことは、東京圏の商業地において地価が下落したのはわずか1%であり、99%近くは上昇または横ばいになったことを表しています。地価動向においても、デフレ環境から脱却し、インフレ環境へと転じていることをうかがわせる事象となっていると言えるのではないでしょうか(図表2参照)。

図2 令和6年都道府県地価調査・半年ごとの地価変動率と下落地点の割合

(4)リゾート地での住宅地地価が上昇傾向にある

2024年の住宅地の地価動向の特徴として、低金利環境の継続などにより、引き続き住宅需要は堅調であり、地価上昇が継続していることが挙げられます。特に、大都市圏中心部での地価上昇傾向が強まっています。人気の高いリゾート地では、別荘やコンドミニアムに加えて、移住者用住居などの需要が増大し、引き続き高い上昇率となった地点が見られています。また、鉄道新路線等の開業による交通利便性の向上などを受け、上昇幅が拡大した地点が見られています。住宅地については、コロナ禍での弱い雇用・賃金情勢を背景に需要者が価格に慎重な態度となったため、2021年までは下落が継続していましたが、2022年以降はコロナ禍の落ち着きとともに地価の回復傾向が鮮明になりました。さらに、2022年後半からは世界的なインフレ進行、外国資本による日本の不動産投資に対する資金流入などを背景に一段と伸び率を高めている状況となっています。

全国の地価上昇率上位10地点をみると、沖縄県と北海道が独占しています。なかでも宮古島はベスト10のうち6地点を占めていますが、宮三島-3(宮古島市平良字西里アラバ1537番3)の地価上昇率は2022年22.4%増、2023年23.2%増、2024年23.4%増と3年連続で20%超となっています。宮古島では、外資系有名ホテルが進出し、国内大手デベロッパーでも高級リゾート開発を進めるなど大規模な不動産投資が進んでいます。国内富裕層でも、宮古島にセカンドハウスを購入するといったケースも出てきているようです。こうした動きは、投資目的での不動産取得の活発な動きを反映していると言えそうです(図表3)。

図3 地価変動率上位順位表・全国ベース住宅地

(5)外国資本が地価上昇の原動力になっている?

また、大手半導体メーカーの工場が進出する地域では、関連企業も含めた従業員向けの住宅需要のほか、関連企業の工場用地や店舗等の需要も旺盛となっており、住宅地、商業地、工業地ともに高い上昇率となっています。eコマース市場の拡大による大型物流施設用地等に対する需要を背景として、高速道路等へのアクセスが良好な工業地では、引き続き高い上昇率となった地点が見られました。一例として、北海道千歳市では、ラピダス効果によって千歳市内で商業施設・共同住宅・ホテル等の整備が進んでおり、既に半導体関連企業30社が進出し、40社超が市内立地を検討している模様です。千歳市については、2025~2040年で累計約8,000人が転入予定(現人口9.7万人)と言われています。また、不動産調査会社によると、2024上半期の不動産投資額は東京が世界1位(NY2位、大阪18位)となっており、外国人投資家にとって急激な金利上昇はないとの予想や底堅い賃貸需要により日本の不動産投資市場は魅力的であると映っているようです。特に、オフィス、ホテルに対する魅力が増しているようであり、こうした動きは2025年以降も続くとみられています。

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