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2025.03.19 コラム

NISAとは ~資産は自分で運用し、守る意識が大切~

NISAとは、少額投資非課税制度のことです。この記事では、NISAのメリット・デメリット、買付動向などを確認していきます。

(1)NISAとは何か

NISA(ニーサ)とは、少額からの投資を行う方のために2014年1月にスタートした「少額投資非課税制度」のことです。イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルにした日本版ISAとして、NISA(ニーサ・Nippon Individual Savings Account)という愛称がつけられました。通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかります。一方、NISA口座で投資した金融商品から得られる利益は非課税になります。ただしNISA口座で投資できる上限金額は決まっています。

(2)2024年1月からは新NISAがスタート

こうしたなかで、2024年1月からは新「NISA」制度がスタートしました。従来のNISAからの変更点として、非課税保有期間の無期限化、口座開設期間の恒久化、年間投資枠の拡大などが挙げられます。新しいNISAは、従来の「つみたてNISA」を継承する「つみたて投資枠」と従来の「一般NISA」を継承する「成長投資枠」の二本立てとなっています。新たに設定される非課税保有限度額(総額)は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)となっており、簿価管理方式で国税庁が管理し、枠の再利用が可能となっています。例えば、10万円で買い付けた投資信託を売却した場合、売却によって受け取った金額に関係なく、簿価分(この場合は10万円)の非課税枠が再利用可能になります。新「NISA」と従来型「NISA」の変更点を整理すると、①つみたて投資枠と成長投資枠を併用できるようになる、②年間の投資上限額と、生涯の非課税保有限度額が大幅にアップする、③非課税で保有できる期間の期限がなくなる、④売却した翌年に非課税保有限度額(総枠)を再利用できるようになる、といった点となります。すなわち、これらの点は新「NISA」によるメリットであると言えるでしょう。

(3)NISAによるデメリットも理解する

一方、新「NISA」のデメリットについても理解しなければなりません。第一に、2023年末までに購入したNISAの残高は、新NISAへロールオーバーできません。2023年末までに購入した一般NISAの残高は、非課税期間満了までに売却するか、課税口座へ移管するかを選択しなくてはなりません。第二に、成長投資枠の対象商品が限定される点が挙げられます。新NISAの成長枠では、「信託期間が20年未満の投資信託」、「毎月分配型の投資信託」などに該当する銘柄が対象外となっています。新NISAの対象商品は投資信託協会より随時公表されています。第三に、口座を開設できるのは18歳以上のみとなっています。新NISAで口座開設ができるのは、口座開設を行う年の1月1日時点で18歳以上の人に限られます。2023年までは、ジュニアNISAを活用して未成年でも非課税で投資ができましたが、新NISAでは未成年を対象とした非課税制度は設けられていません。第四に、元本割れリスクがあることです。NISA制度の対象となっている株式や投資信託は元本保証ではなく、投資した元本が割れるリスクがあります。投資する際は必ず余裕資金を原資として、万が一損失が出ても日常生活に影響が出ない範囲で取り組むことが必要です。ただし、元本割れのリスクは、長期投資に取り組むことで低減できます。NISA制度で資産運用を行う際は、短期で売買を繰り返すのではなく、長期保有を心がけることが大切です。そして最後に、2023年までのNISA制度と変わらず損益通算ができない点が挙げられます。損益通算とは、利益と損失を相殺することです。特定口座や一般口座などの課税口座では、損益通算が認められているため、万が一損失が出たときも他の取引で得た同一年分の利益と相殺することができます。しかし、NISA制度では損益通算が認められていないため、損失が出たときにその損失を有効活用する方法がありません。こうしたデメリットについても理解したうえで、新「NISA」を活用したいと思います。

(4)NISAに関わる口座数、買付額は増加傾向?

ここで、NISAに関わる口座数と買付額をみてみましょう。NISAの口座数は全金融機関、全証券会社ともに増加を続けており、2024年12月末では、全金融機関で2,560万口座、うち証券会社では1,804万口座となっています。証券会社の伸び率が全金融機関の伸び率を上回っているのは、株式は証券会社のみで取り扱っていることに加えて、ネット証券会社では手数料が非常に安価で売買がしやすいことが影響していると考えられています。ちなみに、2023年末から2024年末の1年間で全金融機関のNISA口座数は435万口座増えましたが、このうち376万口座が証券会社によるものであり、証券会社を除くと59万口座しか増えていないことになります。この要因としては、証券会社を除く金融機関ではNISA対象の金融商品が限られていること、窓口での対応が十分ではないこと、ネット取引による取引が浸透していないことなどが挙げられます。これまで、株式や投資信託といった金融商品の取引経験が無い人、或いはバブル期の投資で痛手を被った人にとっては、NISAの仕組みが理解できたとしても、元本保証ではない金融商品への投資に対して抵抗感があるのかもしれません。

一方、買付額の推移をみると、新NISAが導入された2024年1~3月には急激に買付額が増えましたが、その後はやや落ち着いた動きになっています。成長投資枠とつみたて投資枠の合計では、2024年4月以降はほぼ横ばいの状況となっています。ただし、もう少し詳細にみると、成長投資枠により買付額が漸減傾向であるのに対して、つみたて投資枠の買付額は増加傾向を示しています。このことは、NISAの本来の目的である「長期投資による資産形成」の主旨に沿った動きとして注目されるべき事象であると思われます。したがって、今後もNISA口座数及び買付額が増えるか否かは、つみたて投資による買付を如何に増やすかであり、特に若年層によるNISAの活用を呼び込むことでと思います。

NISAに関わる口座数と買付額の推移

(5)NISAではどのような商品が購入されているのか

それではNISAではどのような商品が購入されているのでしょうか。まず、成長投資枠(旧NISAでの一般NISA口座)では投資信託の割合が、2023年までの30%台から50%台へと跳ね上がっています。逆に株式の割合はそれまでの60%前後から40%まで低下しています。このことは、株式投資の経験があまり無い投資家が運用のプロに任せるといったケースが増えていることを示唆しているのではないでしょうか。また、成長投資枠での日本株人気ランキングは、NTT、日本たばこ産業、三菱商事、三菱UFJフィナンシャルグループ、トヨタ自動車、オリエンタルランド等であり、知名度があり、配当利回りがそれなりに高い銘柄が挙げられています。

一方、つみたて投資枠では、インデックス投信の割合が90%前後と高水準で推移しています。インデックス投信で人気が高いのは、米国株式(S&P500)、全世界株式(オール・カントリー)など海外ものであり、国内株式に関しては高配当利回りファンドなどの人気が高くなっています。つみたて投資では、毎月一定額を長期にわたって買い付けるため、複利効果が期待できることになります。つみたて投資のメリットとしては、①安定的な運用ができる、②初心者にも始めやすい、③運用に手間がかからない、④低コストで運用ができるといった点が挙げられます。他方、デメリットとしては、①成長投資枠と比較して上限額が少ない、②投資対象商品が限定されている、③つみたて購入のみで運用の自由度が低い、④元本割れのリスクがある、といった点が指摘されます。つみたて投資枠でのつみたて金額は、基本的にいつでも変更が可能です。したがって、生活環境の変化や資産形成の目標に応じて金額の変更が出来る点は利点と言えます。いずれにせよ、投資は余裕資金の範囲内で長期間継続して行うことが大切であると言えるでしょう(図2参照)。

証券会社におけるNISA口座に関わる利用状況

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