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2024.07.16 コラム

クレジットリンク債とは

クレジットリンク債は仕組債の一種であり、運用商品として昨今注目を集めています。表面的には一定の利率で金利を受け取るシンプルな債券に見えますが、CDSと呼ばれるデリバティブ(金融派生商品)が内包されるなど、一般的な債券とは異なるリスク特性を有しています。当記事では、クレジットリンク債の仕組みやリスクについて解説します。

クレジットリンク債とは

(1)クレジットリンク債とは

クレジットリンク債とは、CDSというデリバティブ(金融派生商品)を債券に取り入れたものであり、市場に存在しない年限や条件の債券を、オーダーメイドで組成することが可能です。加えて投資家は、発行体とCDSの参照組織の両方のリスクを取ることで、通常の社債よりも高い利回りを享受できるメリットがあります。国債や社債といった一般的な債券は、満期保有を前提とした場合、発行体の破綻や支払不履行が投資家にとってのリスクとなりますが、クレジットリンク債の場合は発行体に加えて、CDS参照組織のリスクも負担します。

クレジットリンク債の仕組みについて、下図で示しています。債券保有時(クレジットイベント参照期間)に参照組織に何事もなければ満期時に元本が戻ってきますが、デフォルトにつながる事象(クレジットイベント)が発生すると、元本が毀損する恐れがあります。

参照組織にクレジットイベントが発生しなかった場合は元金が償還され、クレジットイベントが発生した場合は元本が大きく毀損する可能性がある。

(2)CDSとは

CDSとは、クレジット・デフォルト・スワップの略になります。ある特定の参照組織の信用リスクを二者間で移転する取引のことを指します。経済効果は保険に類似しており、保証をする側と受ける側で構成され、掛け捨て保険のイメージを持つと理解が早いかもしれません。

より具体的に言うと、保証をする側=保証の売り手(CDSの売り手)は、保険を例にすると保険を販売する側、保証を受ける側=保証の買い手(CDSの買い手)は、保険に加入している側のイメージになります。

保証の買い手側は、参照組織がデフォルトした際に無償で保証を受けれるという話はありませんので、CDSの契約期間中は保証の売り手側に対して保証料(プレミアム)の支払を行います。保険で例えるなら、年払い保険料のような感覚です。保証料に関しては、CDSの契約時に想定元本(≒保証元本)を決め、その想定元本に対して何%を支払う、というものです。

実際にクレジットイベントと呼ばれるデフォルトに直結し得る事象が起きた際には、保証の売り手は保証の買い手に損失相当額を支払うことが一般的です。

(3)CDSの目的

クレジット・デリバティブ市場は21世紀になって急拡大していますが、近しい経済効果を持つ取引は1980年代の後半から存在はしていました。昨今急拡大した背景としては、中南米の経済危機やアジア通貨危機、リーマンショックなどで大手金融機関が破綻し、破綻を回避することができた金融機関も自己資本が大きく毀損している状態に陥るなど、信用リスクに対する関心が非常に高まっていたことが挙げられます。

こういった背景もあり、取引目的の一つとしては、「信用リスクのヘッジ」が挙げられます。CDSを買うことで、その参照組織の信用リスクをヘッジできるので、例えば、その企業の株式や社債を多く保有していたり、本業の取引に占めるその企業の割合が大きい場合が考えられます。

もう一つ取引目的を挙げると、「信用リスクへの投資」になります。こちらは上記とは逆に、CDSを売ることでその参照組織の信用リスクを負うことになります。CDSを売っていますので、買い手側からプレミアムがもらえ、いわゆるインカム収入が獲得できるということです。クレジットリンク債を保有する場合は、このCDSを売る側に立っているイメージになります。

(4)クレジットイベントについて

前述していたクレジットイベントについて解説していきます。クレジットイベントの代表的なものは以下になります。

①バンクラプシー

②支払不履行

③リストラクチャリング

④政府介入

⑤支払不履行/履行拒否

⑥オブリゲーション・アクセレレーション

クレジットイベントの認定は、ISDA(国際スワップ・デリバティブ協会)と呼ばれる、デリバティブ取引を行う金融機関等によって構成されるグローバルな業界団体によって行われます。

上記のクレジットイベントが認定されると、CDSの決済が行われます。クレジットイベントに関しては、地域(日本・北米・欧州など)や、参照組織の種類(金融法人・事業法人・国債など)によって該当する項目が変わります。日本国内の事業法人を参照組織とした場合、①~③の項目が該当しますので、この3つについて以下に詳細をまとめています。

① バンクラプシー

参照組織が破産等した場合に該当します。破産の定義については広義な解釈となっており、更生法の適用などでも該当する可能性が高いです。

② 支払不履行

参照組織がCDSの対象となっている債務についての元利金を支払わなかった場合に該当します。ただし、適用には猶予期間と、最低支払不履行額というものが設けられていますので、不払いの発生と同時に認定されるものではないです。猶予期間は、特段の取り決めがなければ30暦日となる。最低支払不履行額は、軽微な不払いで認定しないという目的で設けられた規定であり、円建てであれば1億円、米ドル建てであれば100万米ドルとなります。

③リストラクチャリング

参照組織がCDSの対象となっている債務について、金利の減免、償還元本などの減額、利息または元本返済の繰延、債務支払い順位の劣後化などの項目が発生、または合意された場合に該当します。認定にはいくつか必要な条件があり、すべての債権者を拘束すること、最低デフォルト額(円建てであれば10億円、米ドル建てであれば1,000万米ドル)以上であることや、信用力または財務状況の悪化に起因することなどが挙げられます。

(5)クレジットリンク債と社債の違い

クレジットリンク債と社債の特徴について以下の表にまとめています。表面的には近しい商品性に見えますが、異なる点は多くあるので注意が必要です。リスクや特徴をしっかり理解した上で、投資対象として考えていく必要があります。

クレジットリンク債と社債の違い
社債
・年限 幅広い年限の債券が存在
・クーポン 国債利回り+発行体の信用スプレッド
・取引形態 新たに発行される、または、すでに発行されている債券を購入
・信用リスク 発行体
・流動性 高い
・デフォルト事由 企業の倒産や支払不履行
・最低購入額面(目安) 100万円~1億円、1万米ドル~20万米ドル
クレジットリンク債
・年限 CDSの流動性上、3~10年程度が一般的
・クーポン 国債利回り+発行体の信用スプレッド+CDSプレミアム
・取引形態 参照組織を選びオーダーメイドで組成
・信用リスク 発行体+参照組織
・流動性 低い
・デフォルト事由 クレジットイベントの発生
・最低購入額面(目安) 5,000万円~1億円、100万米ドル~

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あかつき証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第67号

【加入協会】  日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

東海東京証券株式会社 金融商品取引業者 東海財務局長(金商)第140号

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【加入協会】  日本証券業協会

*この紙面は、所属金融商品取引業者等の委託を受けて行う金融商品仲介業に関し広告又は広告類似配布物と一緒にお客様にお渡しする書面です。

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また外貨建ての商品の場合、円貨と外貨を交換、または異なる外貨間での交換をする際には外国為替市場の動向に応じて所属金融商品取引業者等ごとに決定した為替レートによるものとします。

【リスクについて】

各商品等には株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等および有価証券の発行者等の信用状況(財務・経営状況含む)の悪化等、それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)、または元本を超過する損失を生ずるおそれ(元本超過損リスク)があります。

なお、信用取引またはデリバティブ取引等(以下「デリバティブ取引等」)を行う場合は、デリバティブ取引等の額が当該デリバティブ取引等についてお客様の差入れた委託保証金または証拠金の額(以下「委託保証金等の額」)を上回る場合があると共に、対象となる有価証券の価格または指標等の変動により損失の額がお客様の差入れた委託保証金等の額を上回るおそれ(元本超過損リスク)があります。

 

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