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小売業の課題は?~生き残りをかけた戦いが始まっている~

小売業の課題は、時代の変化と顧客ニーズに迅速に対応し、販売方法を適応させることです。この記事では、小売業の課題や、個別企業の動きについて解説します。

(1)個人消費が日本経済の動向を左右している

わが国のGDP(国内総生産)は個人消費が5割以上を占めています。GDPは、個人消費に加えて設備投資、公共投資、住宅投資、輸出入などで構成されていますが、個人消費が日本経済の動向を左右するといっても過言ではありません。ここで、最近における主要小売企業の売上高、客数、客単価及び店舗数の推移を見てみましょう。全体的には各社ともに既存店売上高は低調であり、客数が伸び悩んでいることがうかがわれます。但し、カテゴリーのなかで企業による優劣が顕在化している状況を確認することができます。このことは、「消費が冷え込んでいるからモノが売れない」といった思考ではなく、消費者に受け入れられる店舗作り、商品の品揃えが奏功していることを示唆しているのではないでしょうか。

(2)個別企業における客数、客単価の動きに注目

まず、セリア、ヤオコー、ライフ、ファミリーマート、ローソン、ユニクロ、ABCマート、ドラッグストア各社は順調に売上高を伸ばしています。なかでも、ABCマートの場合、グランドステージ業態(オンライン通販)の拡大などにより客単価が7%以上上昇し、インバウンドも増加したことが売上高を牽引しています。販売戦略では、SNSを中心とした販売促進活動を通じて、国内需要やインバウンド需要の取り込みを強化し、付加価値の高いスニーカーやトレンドのスポーツサンダル、また取り扱い品目を拡大してアパレル販売に注力したことも奏功しています。また、コンビニ業界は、従来、セブンイレブン独り勝ちの状況から下剋上の時代へと変化してきています(図1参照)。

図1 主要小売企業の売上高・客数・客単価の推移

(3)店舗展開には企業の戦略が反映されている?

一方、店舗展開は、ドラッグストアを中心に各社とも増加傾向を示していますが、イトーヨーカ堂、ユニクロ、アオキ、青山商事は減少傾向にあります。イトーヨーカ堂は衣料部門の低迷、ユニクロは海外強化に伴う国内店舗戦略の見直し、スーツ系各社はスーツ需要低迷などを反映したものと推察されます。こうしたなかで、ファミリーマートが2023年度に大きく店舗数を減らしたのは、ドラッグストアなどとの競合地域を精査し、採算の良くない店舗を相次いで閉鎖したためです。その結果、客数や客単価は増加に転じており、企業としては賢明な決断であったことがうかがわれます。なお、昨今の特徴としては、各社ともに新規出店のみならず、閉店を含めた店舗戦略を推進していることが挙げられます。人口減社会、世帯収入の伸び悩みといった事業環境下で、ドンドン出店するといった戦略は見直しを迫られているのかもしれません(図2参照)。

図2 主要小売企業の店舗数の推移

(4)小売業が抱えている3つの課題

さて、ここで小売業が抱えている3つの課題について考えてみましょう。第一に「モノが売れない」ことが挙げられます。モノが売れない理由はさまざまですが、大きな要因としてはデフレーションが関係しています。デフレーションとは、日用品やサービスの価格が継続的に下がり、物に対してお金の価値が上がっていく現象です。デフレーションになるとモノが売れにくくなり、企業の売上高が低下し、従業員の給与は下がることになります。こうなると、消費者はさらに消費を控えようとしてモノが売れなくなり、企業はさらに商品の価格を下げなければならないという悪循環に陥ることになります。また、顧客ニーズや時代は常に変化しており、単に品質のよさだけではモノが売れない状況であることも原因のひとつです。近年の消費者は接客対応や付加価値などを求める傾向にあり、企業はニーズを察知して対応できなければ、良質な商品であっても売上につなげることが難しくなっています。なお、モノが売れない最大の要因は、ほとんどの家庭では必要なモノが揃っていて、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどが無いお家は皆無に近い状況となっているからです。また、スマホについても同様です。こうした消費財については、基本的には買い替えが主体であるため、政府・地方自治体や家電量販店では、ポイント付加したりして需要を喚起するといった施策を取っています。

(5)第二の課題は人手不足による影響

第二の課題は、「人手不足」が挙げられます。人手不足の深刻化は、小売業界に限らず多くの業界が抱えている課題です。人手不足の原因である少子高齢化は日本の社会問題でもあり、今後もさらに人手不足が深刻化していくことが予想されています。とくに小売業界は24時間営業や年中無休で営業する店舗も珍しくありません。労働時間が長く休日が不定期であるうえに、賃金が低く設定されやすいといった実状もあります。そのため人材募集をしても雇用が進まず、人手不足に拍車をかけています。仕事を選ぶ場合、「土日祝日に休めるかどうか」という点は重要な選択肢となります。この点では、小売業、外食産業は土日祝日がかき入れ時となります。また、交通関連(航空、鉄道、バス、タクシー)、ホテル、観光業なども土日祝日にはなかなか休めません(交代で休むことはあるかもしれませんが…)。こうした業界では、人々が休む時に仕事をすることになるわけです。

(6)ネットショッピング拡大による購買スタイルの変化

第三の課題は、「消費者による購買スタイルの変化」が挙げられます。昨今のネットショップの普及により、消費者はインターネットを通して買い物する傾向が高まっています。そのため、実店舗がショールーム化していることも小売業の課題と言われています。これまでの実店舗は、顧客が店を訪れて買い物をすることが一般的でした。しかし近年では、実店舗で商品の使い勝手や仕様を確認してから、インターネットで最安値のネットショップを探して購入するという行動変化が起きています。これでは店舗への集客ができていても、競合他社に価格競争で負けて顧客を奪われてしまうという可能性が高まります。集客のために広告を打ち出し宣伝イベントをおこなっても、売上につながらなくなっているのです。ネットショップの場合、実店舗を持っておらず、従業員も少ないために運営コストが低く、販売価格を安く抑えられていることに加えて、消費者は自宅に居ながら24時間いつでも購入できるというメリットがあります。特に、定期的に購入している商品であれば、実店舗に出向いて購入するより遥かに便利であることは言うまでもありません。

それでは、小売業者はどのような対応をしているのでしようか。大手スーパーなどでは、アプリでも商品を購入できたり、店舗や自宅への配送を選択できたりするなど、実店舗とネットショップを連携させることで顧客のニーズに応えやすくしようという取り組みを強化しています。また、顧客ニーズに沿って、キャッシュレス決済やセルフレジなどを利用できるようにしています。一方、価格上昇を抑えた結果、商品のクオリティが低下しているといった事例もみられています(明らかにコンビニでは優劣に変化が起きています)。小売業者は時代の変化と顧客ニーズに迅速に対応して販売方法を適応させなければ、顧客満足度を高めることは難しくなるといえるのではないでしょうか。

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