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2024.06.21 コラム

高齢化社会と相続税問題 資産継承は大きな課題に

高齢化社会と相続税問題は喫緊の課題となっています。基礎控除引き下げによる相続人の増加もあり、相続税対策のニーズは高まっています。高齢化社会、相続税問題を乗り切るためには、現役世代におカネをバトンタッチすることが大切かもしれません。

(1)日本は世界でも類の見ない長寿大国となっている

「人生100年時代」といわれているように、日本人の平均寿命は男女ともに過去最高を更新し、2022年のデータによると年間の死亡者のうち90歳以上が3割を占めています。厚生労働省のデータによると、2022年の日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳となっています。ちなみに、1980年の日本人の平均寿命は男性73.35歳、女性78.76歳でしたので、過去40年余りでは、男性で7.7歳、女性で8.3歳寿命が延びたことになります。我が国は世界に名だたる長寿国ですが、残念ながら直近の2年では平均寿命が縮まっています。この理由としては、新型コロナウイルス感染症、心疾患(高血圧性を除く)、老衰などの死亡率が影響していると考えられています。日本人の平均寿命が縮んだとはいえ、依然として世界のなかで最長寿国であることに変わりはありません。

(2)我が国の年齢階層別死亡者の動向

我が国の死亡者数の推移をみると、2000年当時は年間100万人以下であったのが、2003年に100万人を超えると増加ペースが拡大し、2022年には156万人と過去最高を記録しています。死亡者の年齢階層別割合の推移をみると、80歳以上の割合は2000年には43.8%だったのが2010年には55.5%、2022年には67.5%にまで増加しています。すなわち、2022年に我が国で亡くなった方のうち3人に2人が80歳以上ということになるわけです。なかでも顕著に増えているのが90歳以上の割合であり、2000年の13.0%から2020年に28.8%、2022年には31.3%と18.3ポイントも上昇しました(図表1参照)。親の年齢が90歳以上の場合、この年代の平均出産年齢から推計すると、子供の年齢は65歳以上が大半と考えられ、相続による資産移転時期の高齢期シフトが進む要因になっていると思われます。

図表1 年齢階層別死亡者数と死亡者全体に占める割合の推移

(3)相続納税者と相続税額の推移

次に、相続納税者と相続税額の推移についてみてみましょう。ここで我が国の相続税申告の対象となった被相続人数をみると2022年で150,858人となっています。死亡者全体に占める割合は9.6%と過去最高となっています。すなわち、死亡者100人に対して9.6人が相続税支払い対象となるわけです。ちなみに、2014年までの相続税は、基礎控除額が「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」であり、当時の被相続人数は5万人台でした。死亡者全体に対する相続税申告の対象となった被相続人の割合も4%程度でした。しかし、2015年の相続税改正らに伴う基礎控除額の引き下げ(「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)によって、被相続人数が増加傾向をたどることになりました(図表2参照)。

一方、2022年の相続税額は2.8兆円であり、国税全体に占める割合は3.9%と一定の水準を維持しています。相続財産の内訳をみると、2022年では土地・家屋といった不動産の割合が32.3%、現金・預貯金が34.9%、有価証券が16.3%となっています。最近の傾向としては、不動産の割合が減って、現預金や有価証券の割合が増えていることが特徴となっています。この背景としては、不動産の場合、登記や遺産分割の手続きが煩雑なため、生前に売却或いは登記移転するといったケースが増えているためではないかと推察されます。したがって、不動産に関するアドバイスに対する需要は益々高まっており、富裕層に対する相続税問題はビジネスの宝庫であるという見方ができると思われます。

図表2 我が国における相続税納税者数、相続税額の推移

(4)人口推計による我が国の人口動態

我が国の総人口は、2023年(令和5年)10月1日現在、1億2,435万人となっています。65歳以上の人口は、3,622万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は29.1%と過去最高になりました。65歳以上の人口のうち、「65~74歳の人口」は1,615万人(男性773万人、女性842万人)で総人口に占める割合は13.0%となっています。また、「75歳以上の人口」は2,008万人(男性799万人、女性1,209万人)で、総人口に占める割合は16.1%であり、65~74歳の人口を大きく上回っています。我が国の65歳以上の人口は、1950年には総人口の5%に満たなかったのですが、1970年に7%を超え、さらに、1995年には14%を超え、高齢化率はその後も上昇を続けています。

ところで、我が国は長期の人口減少過程に入っており、2031年に人口1億2,000万人を下回った後も減少を続け、2056年には1億人を割って9,965万人となり、2067年には8,974万人になると推計されています。65歳以上の人口比率は2025年の29.6%から2050年には37.1%にまで高まると予想されています。その後も37~38%台の高水準で推移すると推計されています。また、65歳以上の人口は2043年の3,953万人まで増え続け、その後は漸減傾向をたどる見通しです。ここで、現役世代(15~64歳)と高齢者世代(65歳以上)の比率をみると、2050年には高齢者世代の比率が70.2%になるとみられています(図表3参照)。このことは現役世代4人で高齢者世代3人をサポートすることを意味しています。こうした状況によって、①現役世代の社会保障負担率の増大、②高齢者世代の年金給付率の減少、③高齢者による就業率の増加といった状況が予想されており、社会保障問題は我が国にとっての喫緊の課題となっています。

図表3 高齢化の推移と将来推計

(5)高齢化社会をどのように乗り越えていくのか

それでは高齢化社会をどのように乗り越えていけば良いのでしょうか。高齢化社会の最大の問題は、消費性向が低下して経済が停滞することです。したがって、社会全体でおカネを使う仕組みや空気を醸成することこそが経済を活性化することになります。高齢者の関心事は、①自分自身の健康問題、②子供や孫に対する資産継承、③社会貢献、といった3つに集約されるのではないでしょうか。自分自身の健康については、人生にとって最も大切なことなので資産を貯め込んでその時に備えることになります。もしも難病にかかって長期入院したら莫大な費用が掛かるといった悪い妄想が働いてしまうかもしれません。最新医療を受けて出来るだけ健康で長生きしたいという心理が働くことになります。

子供や孫への資産継承については、資産ポートフォリオの見直し、遺産分割方法の検討、納税資金等がテーマとなります。資産ポートフォリオとは、不動産など節税効果の見込まれる資産のウエイトを増やすとともに、生前贈与などを活用することが求められます。高齢者にとっては、自分の死後も子孫が仲良く健康で暮らしていくことを最も望んでいます。そのための資産継承であるといえるでしょう。そして最後に社会貢献ということになります。身寄りのない高齢者の方が亡くなると、その人の資産は国に帰属することになります。こうした状況が受け入れられないのであれば、地域社会やご自身が関与した分野に寄付をするという方法が考えられます。例えば、ある方が音楽活動に従事されていたのであれば、出身学校や音楽団体に寄付をして活動のサポートをするという考え方です。こうした内容は遺言状に記すこともできます。いずれにせよ、高齢化社会を乗り越えるためには、現役世代におカネをバトンタッチすることが最も大切なように思います。

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村松 麻衣子
ウェルスマネジメント戦略部マネージャー
村松 麻衣子
Maiko Muramatsu
2014年に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社後、浜松支店にて資産運用コンサルティング営業に従事。その後米国モルガン・スタンレーNY本社へ出向し、米国における超富裕層向け営業や営業員育成に関する知見を習得。帰国後は超富裕層向け営業サポート部署に所属し、米国で主流のアドバイザリービジネス推進や非運用(相続・事業承継)領域含む総合ソリューション提案に従事。2024年、日本の金融サービスの変革を目指す姿に魅力を感じIFA Leadingに入社。