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2025.01.29 コラム

コンビニビジネスの今後 ~セブンイレブン独り勝ちの時代は終わった~

コンビニビジネスは今後どうなっていくのか。人手不足やインフレの影響、さらには従来担っていたサービスの需要低下により、コンビニの在り方が問われています。

(1)セブンイレブン独り勝ちからコンビニ下剋上時代へ

コンビニ業界で勝ち組企業と評価されていた「セブンイレブン離れ」が起こっています。コンビニ大手の2025/2期第3四半期(2024年3~11月累計)決算をみると、ローソン、ファミリーマートが営業増益だったのに対してセブン&アイHDは大幅減益となりました(国内コンビニ事業だけを取り出しても前年同期比8.1%減益)。さらに同期間の客数は前年比並みとなりましたが、客単価は同0.1%減となりました。ローソン、ファミリーマートは2023年以降、客数、客単価ともに増加傾向をたどっているのに対して、セブンイレブンの劣勢が顕著になっています。一体何が起こっているのでしょうか。まさに、コンビニ下剋上時代が到来しているといって良いでしょう。

(2)コンビニ大手3社下剋上時代の実態とは

まず、コンビニ大手3社の2025/2期第3四半期の業績動向を見てみましょう。最も売上高を伸ばしたのはローソンであり、ファミリーマート、セブンイレブン(前年同期比1.8%減。但し、国内コンビニ事業のみ)は前年同期比マイナスとなっています。ファミリーマートの場合、2023年度以降、不採算店舗を閉鎖した影響によるものであるのに対して、セブンイレブンは店舗数を増やしてきたなかでの減収となります。また、営業利益はローソン、ファミリーマートが増益になったのに対して、セブンイレブンは8.1%減益と明暗を分けています。コンビニ大手3社の決算をみると、セブンイレブン独り負けの様相を呈していることがわかります。かつてコンビニ業界で独り勝ちを誇っていたセブンイレブンに何が起こっているのでしょうか(図1参照)。

図1 主要コンビニ各社の業績動向

(3)セブン&アイHDは株主提案にどのように対峙していくのか

2024年8月、カナダの小売大手企業「クシュタール」は、日本円に換算して総額6兆円規模でセブン&アイHDの全株式を取得すると提案しました。これに対しセブン&アイHDは9月、「企業価値を著しく過小評価している」などとして提案を拒否しました。それを受けて再びクシュタールが10月に入って7兆円規模にまで価格を引き上げたのです。これは国内のみならず、世界的に見てもM&Aの金額としては史上最高となっています。こうした事態に対応して、セブン&アイHDはMBOによって株式を非公開化(上場廃止)して、クシュタールが買収したくてもできなくするという選択肢を検討することになりました。しかし、MBOを成功させるためには、クシュタール以上の金額を株主に提示しなければなりません。そうすると、最低でも8兆円から9兆円規模の資金が必要になると言われています。それだけの金額を調達しようとすると、日本のメガバンクは勿論のこと、外資系金融機関や投資ファンドなどにも頼らざるを得ず、交渉は難航しているというのが実態です。

(4)セブン&アイHDにおけるアキレス腱

セブン&アイHDは、国内コンビニ事業(セブンイレブンジャパン)、海外コンビニ事業(米国のガソリン販売が寄与。米国ではセブンイレブンにガソリンスタンドが併設されており、収益源となっています)、スーパーマーケット事業(イトーヨーカ堂)などから成り立っています。こうしたなかで、イトーヨーカ堂は長年収益低迷に苦しんでおり、株主からはイトーヨーカ堂の売却提案がなされているようです。しかし、セブン&アイHDの強みのひとつはプライベート商品(セブンプレミアム)の開発力とされています。セブンプレミアムの開発体制の過半はイトーヨーカ堂が担っており、イトーヨーカ堂がセブンイレブンの商品力を支えているといった構図となっています。したがって、収益が低迷しているからといってイトーヨーカ堂を売却してしまっては、セブンイレブンの商品開発力が低下する可能性があるため、このような株主提案を受け入れることは難しいとみられているようです。

セブン&アイHDは、そごう・西武を売却した後、買収防衛策の一環としてイトーヨーカ堂やデニーズ、ロフトといったグループ企業の持ち株を売却する方針を示しており、すでに一部で入札が行われています。そういう意味でセブン&アイHDは、実質的に「解体」のフェーズに入っていると言えそうです。今後、セブン&アイHDは、コンビニ専業の会社になる意向を示しており、社名もセブン‐イレブン・コーポレーション(仮)にするとみられています。

(5)コンビニ大手3社の部門別売上高動向

ここで、コンビニ各社の部門別売上高動向を見てみましょう。コンビニ事業において、もっとも利益率が高いのはファーストフード部門です。ファーストフードとは、おにぎり、サンドイッチ、中華まん、弁当、カウンターコーヒーなどとなります。コンビニ大手3社のファーストフード部門の売上高をみると、セブンイレブンが伸び悩んでいるのに対して、ローソン、ファミマは順調に売上高を伸ばしています。この背景について探ると、インフレに伴う商品価格の値上げが影響しているのではないかと推察されます。大手コンビニ各社のホットコーヒーSサイズの価格は、2023年に110円から120円に値上げしました。また、おにぎり、弁当、冷凍食品といったコンビニの主力商品についても2022年以降相次いで値上げをしています。カップ麺に至っては、コロナ禍前は一個150円程度であったのが、今や250円程度にまで跳ね上がっているケースもあり、価格に敏感な購買層は食品スーパーで購入したり、ネットで購入したりといった自衛手段を取っているようです。特に、セブンイレブンは値上げの動きが堅調であった印象であり、このことが客離れを起こしてしまったのではないでしょうか。そもそも、セブンイレブンは「高付加価値戦略」を掲げているのですが、こうした戦略が果たして消費者に受け入れられるのか、まさに正念場を迎えていると言えそうです。

図2 主要コンビニ各社の部門別売上高動向

(6)コンビニビジネスの在り方が問われている

これからコンビニ業界はどこに向かうのでしょうか。消費者にとってコンビニの使い勝手は、24時間お店が開いている、商品購入のみならず、チケット発券、宅配便の取次などさまざまなサービスを受けられるといったことがあります。勿論、こうしたサービスに対するニーズはこれからも続くでしょうが、そもそも人手不足社会によって24時間影響が難しくなってきたことに加えて、オンラインサービスの進化によって従来コンビニ店舗が担っていたサービスに対する需要が低下してきたといった状況になっています。わざわざコンビニに行かなくても事足りるといった時代の変化のなかで、コンビニ各社がどのような生き残り策を講じていくのか注視していきたいと思います(図3参照)。

図3 コンビニ業界に関わる「いろは」を整理すると…	
 (1)コンビニエンスストア(コンビニ)業界とは何か?	
	 ✔ コンビニエンスストアとは、飲食料品を中心に、日用雑貨、ATMやマルチメディア端末な
	    どを設置し、生活のさまざまな場面をサポートする小型フォーマットのことである。
	 ✔ 国のコンビニの定義では、「飲食料品を扱っていること」「セルフサービス方式であるこ
	    と」「売り場面積が30㎡以上250㎡未満であること」を要件としている。
 (2)日本で進化したコンビニエンスストア業界	
	 ✔ 国内のコンビニチェーンの発展は米国発のノウハウの導入が契機となっている。
	 ✔ その後、国内市場での競争により、商品開発・物流・情報システムの進化、金融やサービ
	     ス機能の充実など、日本独自のコンビニモデルを確立し、海外市場にも打って出ている。
	 ✔ また、チケット販売、宅配便の取次、一部の行政サービス代行などにも対応している。
 (3)コンビニ業界の勢力図	
	 ✔ コンビニ業界は群雄割拠の時代が続いていたが、一時はセブン独り勝ちの状況に。しかし
	    現在では、大手3社拮抗(セブン、ローソン、ファミマ)の状態となっている。
	 ✔ また、セイコマートやポプラなど地域密着型コンビニ店は一定の評価を得ている。

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