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国内人気移住先 ~2020年以降をみると静岡県の人気が高い!~
国内人気移住先を見ると、昨今は東京近郊の自然豊かな県の人気が高いようです。自身の居心地の良い場所を見つけ、自由な暮らし方を実現することを目指す人々が増えてきています。
- (1)近年、日本人の都道府県間の人口移動は安定しているが…
- (2)移住相談件数は過去最高を更新している
- (3)国内移住先では静岡県の人気がトップ
- (4)基本的には東京近郊の移住先人気が高い印象
- (5)移住目的とは自分らしく生きるための手段のひとつ
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目次
(1)近年、日本人の都道府県間の人口移動は安定しているが…
厚生労働省が発表している「住民基本台帳人口移動報告」によると、日本人の都道府県間の人口移動は、1971年の425万人をピークに漸減傾向をたどってきました。1996年には300万人を割り込み、2016年以降は毎年220万人台で推移しています。一方、在留外国人の都道府県間の人口移動は2023年には31万人強と過去最多を更新しました。在留外国人は年々増加傾向にあり、仕事などの関係で都道府県をまたいで移住することが多くなっているためだと思われます。ちなみに、ここでいう人口移動とは、住民票を移した人数を集計したものであり、引っ越しをした人数ではないことに留意する必要があります。他の都道府県に転出する人数が最も多いのは、東京都であり、次いで神奈川県、大阪府、埼玉県、千葉県となっています。首都圏は人口流入者数が多い一方で人口流出者数も多いといった特徴を持っているわけです。
(2)移住相談件数は過去最高を更新している
現在住んでいるところから引っ越しをする理由としては、①転勤や転職など仕事の関係、②結婚や子育てなど人生のステージの変化、③働き方や暮らし方を変えたい、④気候や自然環境の恵まれたところで暮らしたい、⑤実家や家業を継ぐため、などさまざまな理由が考えられます。全国の移住相談ができる窓口となっている「ふるさと回帰支援センター」によると、移住相談件数は年々増加傾向にあり、2023年の移住相談件数の合計は3年連続で過去最高を更新しています。勿論、相談件数と実際の移住件数は必ずしもリンクしているわけではありませんが、移住に関する関心が高まっていることは間違いなさそうです。ここでも移住先についての制約はありませんが、基本的には、都市部から地方への移住相談がベースとなっています。なお、ふるさと回帰支援センターは、東京都有楽町に拠点を構える認定NPO法人であり、2002年に創立されました(図1参照)。
(3)国内移住先では静岡県の人気がトップ
それでは、移住先として、どこの都道府県の人気が高くなっているのでしょうか。ふるさと回帰支援センターによると、2020年以降、4年連続で静岡県がトップとなっています。静岡県は、中部地方に位置しており、神奈川県、山梨県、長野県、愛知県の4県に隣接しています。北側には南アルプスの峰々がつらなり、南側には「駿河湾」や「遠州灘」と、山と海に囲まれ自然に恵まれた環境です。静岡県の気候は、山に囲まれていて冷たい湿った気流が届きにくいため、県内の中部~西部にかけては雪が降りづらく、寒さが苦手な方には住みやすい環境かと思われます。晴れの日が多く日照時間も長く、一年を通して温暖な気候です。県の南側の駿河湾には、「沼津港」や「焼津港」など漁港も多く、静岡県の公式ホームページによると金目鯛やキハダマグロの漁獲量においては全国1位を誇り、新鮮で美味しい魚介類を安価で手に入れることができます。また、静岡県は水質に優れていて水道水が美味しい県としても有名です。実は、伊豆半島も静岡県であり、熱海は富裕層の別荘地として高い人気を誇っています。やはり都心から1時間圏内という近さも魅力になっているのではないでしょうか(図2参照)
(4)基本的には東京近郊の移住先人気が高い印象
ふるさと回帰支援センターの調査をみると、基本的には東京近郊であり且つ自然豊かな県の人気が高いようです。2023年に人気ランキングで2位となった群馬県と言えば、南部では夏はとても暑く、冬は空っ風と呼ばれる冷たく乾燥した強い季節風が吹くことで有名です。西部から北部にかけての冬は雪が多く降ります。気候的には決して住みやすい印象はありませんが、キャベツ、ネギ、トマト、ブドウやナシなど野菜や果物の生産で、「伊香保温泉」や「水上温泉」など有名な温泉地が点在しています。さらに、群馬県は関東圏の中で犯罪率も比較的低い傾向にあります。都会の喧騒から離れて暮らすには魅力的な地域なのかもしれません。筆者の知り合いで、元大手新聞社の記者だった方は、静岡支局に転勤となったのを機に、「ここで生きることで、幸せな選択」との想いで新聞社を辞めて現地で観光ベンチャーを立ち上げて奮闘しています。
また、最近では、栃木県のランキングが上昇傾向にあり、2023年には過去最高の3位となりました。栃木県では豊かな自然と都心に近いことを活かして、農業がとても盛んです。なかでも、「とちおとめ」や「とちあいか」で知られているイチゴは、1968年から半世紀以上にわたり日本一の生産量を誇っています。産業では製造業が県内経済を牽引しており、県内総生産額に占める製造業比率41.2%(全国2位)と、農業も産業も盛んなことが特徴となっています。東北新幹線が停車する小山駅や宇都宮駅からは、都心へのアクセスが良いことも魅力のひとつです。新幹線を利用すれば東京駅まで、小山駅からは約40分、宇都宮駅からは約50分で行くことができます。平日は東京で仕事して週末は栃木でのんびり、といった二拠点居住から気軽に移住をはじめてみるのもいいかもしれません。筆者の知人も都内から栃木県那須に拠点を移して、定期的に都内で仕事をしている方がいます。テレワーク時代ならではの生き方のようです。
(5)移住目的とは自分らしく生きるための手段のひとつ
最後に移住目的とは何かについて考えると、居心地の良い場所を見つけて、自由な暮らし方の実現を目指すことなのではないでしょうか。残念ながら仕事は都市部に集中しているため、都市部の過密化、地方の過疎化といった問題は解消されていません。しかし、あらゆるものがインターネットで繋がって、テレワーク時代が到来した今日、かつてのような都市部と地方との情報格差は無くなってきたと思います。また、我が国のように全国津々浦々交通網が整備されている現実をみると、離島など一部の地域を除くと移動に多くの時間とコストを要するといったことも少なくなっているのではないでしょうか。居住するにあたってのポイントは、①仕事など利便性を重視するか、②自然環境を重視するか、③気候や災害リスク等を重視するか、といった点になると思います。
最近では、それぞれの自治体で住民の奪い合いになっています。子育て世帯にはさまざまな移住支援をして、住宅や仕事の斡旋をする自治体もあるようです。富裕層にとっても移住は人生の大きなテーマのひとつと言えます。一定程度の資産を有している富裕層といえども、何かしらの仕事をしているケースが多いのではないでしょうか。また、どの世代においても人間関係は大切です。人間関係を重視して居住地を選択することも大切なのかもしれません。例え都心部一等地に住居を構えていても、熱海、軽井沢、逗子といった都心部近郊にも拠点を構えているケースは少なくありません。ちなみに、地方移住で最も大切なことは「足」であり、都心部に比べると交通網は脆弱であり、自家用車での移動は必須と言えるかもしれません。人気移住地と住民の資産動向、地価動向などを見てみるのも面白いかもしれません。