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2024.07.02 コラム

気候変動の現状と我々の日常生活への影響

気候変動は我々の日常生活に直結する世界的な課題です。2050年までに1.5℃の気温上昇に抑えられたとしても、地球全体では計り知れない影響が起きている可能性があります。

(1)気候変動は世界的に取り組むべき課題である

ここ30年で世界の化石燃料を起源とするCO2排出量は加速度的に増えてきました。CO2排出量の累積によって、これまで地球の平均気温は1.1℃上昇してきました。最新の科学的知見によれば、「気候変動は人間活動が原因である」ということが定説となっています。すなわち、20世紀後半以降の温暖化の主な原因は人間活動である可能性については疑う余地が無い、とされているのです。気候変動によって、世界中のほとんどの地域で極端な高温、大雨といった異常気象が起こっています。この結果、気温上昇に関連して、さまざまな極端現象が拡大しています。具体的には、①平均して10年に一回発生するような極端な気温の頻度と強度の発生確率が上がっている、②平均して10年に一回発生するような日降水量の頻度と強度の発生確率が上がっている、③平均して10年に一回発生するような農業及び生態学的干ばつの頻度及び強度の発生確率が上がっている、といった現象が起こっているのです。

(2)目指すのは1.5℃の気温上昇に抑制すること

2050年ネットゼロを達成するためには、「1.5℃の気温上昇の抑制を実現すること」にある、とされています。2050年ネットゼロを達成するためには、2030年までにCO2排出量の大幅な削減が必要となってきます。現状のままでいけば、2100年までに地球の平均気温は2.5~2.9℃上昇すると試算されています。また、生物多様性を回復するうえでも2030年が重要な期限となります。我々が対応すべきは以下の3点となります。すなわち、第一に、環境保全シナリオとして、環境保全地域の拡大と管理、回復計画を強化することが必要です。第二に、持続可能な生産シナリオとして、農業の生産と貿易において持続可能性を強化することが必要となります。そして第三に、持続可能なシナリオとして、食の廃棄を削減し、食肉の消費減などの対策を実施することが求められます。今からこうした3つの点に取り組むことこそが、CO2削減そして気温上昇を抑制することに繋がるのだと思います。

(3)全国主要都市の猛暑日数の推移

ここで、気象庁のデータを基に全国主要都市の猛暑日数の推移を見てみましょう。猛暑日とは最高気温が35℃以上を観測した日のことです。1970年代、1980年代に猛暑日を観測することは稀なことでした。当時、猛暑日が最も多かった大阪府では、6~9月にかけて猛暑日を観測したのは1970年代で61回、1980年代で60回でした。年当たりだとそれぞれ6回ずつとなります。6~9月の4カ月だと、月当たり1~2回になります。東京都に当てはめると1970年代、1980年代ともに年当たりの猛暑日は1~2回に過ぎませんでした。これが、1990年代に入ると増加傾向を示し、2020年代にはさらに加速化しています。2020年代の動きをみると、2023年まで4年しか経過していないにもかかわらず、2010年代の猛暑日観測のペースを大きく上回っています。東京都の2023年6~9月の猛暑日観測日数は22日であり、10年に置き換えると220日となります。これは、2020年代の3倍近い伸び率となります。他の主要都市もほぼ同様な動きてあり、特に、名古屋市、大阪府の2023年8月は2日に1回以上猛暑日を観測しました(図表1参照)。

図表1 全国主要都市の猛暑日数の推移

(4)全国主要都市の平均気温と大雨の日数の推移

次に、全国主要都市の平均気温と大雨の日数についてみてみましょう。平均気温については全国主要都市の7月、8月における1991~2020年平均及び2020年代平均の数値を整理しました。各年によってバラつきはありますが、1991~2020年平均に比べると2020年代には概ね1℃前後上がっていることがわかります。特に、大阪府では、2023年8月は平均気温35.2℃と猛暑日に当たる35℃を超える気温を観測しました。2023年8月は、東京都、名古屋市、広島市でも34℃台の平均気温を観測しており、全国的に気温上昇が進んでいたことがうかがわれます。かつては32℃を超えると暑いといった印象でしたが、ここ最近では35℃を超えることも当たり前になっており、場合によっては36℃以上といった日もあるほどです。そういえば、いつの頃か熱中症という言葉が定着してきました。以前は、日射病という言葉が一般的であり、屋外での作業中や、学校の運動場などで罹ることが多かったように思います。ところが、熱中症の場合、屋内にいても罹りますし、救急車で搬送されるといった事態も日常的になってきています。

また、降水量も年々増えています。1時間降水量20mmは、気象庁の基準では「道路では水溜まりが一面にできるほどの雨量」で、連続雨量が40mm以上になると土砂災害や河川の氾濫が起こりやすい地域では、大雨注意報が発表されます。1時間降水量20mmでも6時間、12時間と降り続くと崖崩れや道路が冠水する危険性も高まります。降水量の「ミリ」というのは溜まった雨の深さだということになります。また、「1時間に50mmの雨」というのは、雨が1時間降り続いたときに、降った雨がどこにも流れ去らずにそのまま溜まった場合の水の深さのことを指します。具体的には、1平方メートルあたり50リットルの雨がたまる規模です。この量の雨は、傘が役に立たなくなり、車の運転も危険になることがあります。大雨警報が発表されることもありますので、注意が必要です。いずれにせよ、年に数回は災害級の大雨となる日があるというのが今日の姿なのです。

図表2 全国主要都市の平均気温と大雨の日数の推移

(5)気温上昇では異常気象だけではないさまざまな影響がある

深刻な気候危機と将来世代への責任として、1.5℃を目指していますが、目標を達成しても今より状況は悪化するとみられています。すなわち、さまざまな異常気象の発生や、生物多様性への脅威など、現在(1.1℃上昇)でも気候の状況は深刻だからです。気候危機の原因は温室効果ガスの蓄積であり、CO2が大気中で100年以上滞留することから、このままではますます悪化するとみられています。温暖化の影響としては、①異常気象(豪雨、洪水、干ばつ、森林火災など)、②海面上昇(水は海水温が上がると膨張する、グリーンランドの氷が解けて水になる)による生活圏への脅威、③海水の酸性化(貝ができなくなる)、④気候難民の発生に伴う安全保障への脅威、⑤生物多様性の崩壊:第6の大量絶滅?(熱くなると対応できない植物や動物が絶滅し、サンゴが無くなってしまう)、恐竜の大量絶滅と同じようなことを人間が起こしてしまうかもしれない、⑥農水産物生産の減少(食料危機の誘発)、⑦健康被害の増加(熱中症、感染症)⇒現在、マラリヤ禍が北上しつつある、といった点が考えられます。

(6)ティッピング・ポイント(臨界点)が近づいている

この限界点を超えると気温上昇が加速し、不可逆的悪循環に陥るとされています。すなわち、「海氷、氷河の融解による太陽光エネルギーの反射が減る」、「永久凍土の融解による太陽光エネルギーの土による吸収とメタン放出が起こる」、「森林火災の灰が太陽エネルギーの吸収を促進する」といった事態が起こることを意味します。何故1.5℃かという点については、確かに1.5℃でも今より状況は悪化しますが、しかし辛うじて持続可能だとみられているからです。しかし、持続可能というのも疑わしいかもしれません。熱波に見舞われる世界人口(少なくとも5年に1回)は1.5℃の場合は約14%ですが、2℃の場合は約37%となり、17億人増加することになります。また、生物種は1.5℃の場合は昆虫の6%、植物の8%、脊椎動物の4%の種の生息域が半減するとみられていますが、2℃の場合は昆虫の18%、植物の16%、脊椎動物の8%の種の生息域が半減すると予想されています。海洋の年間漁獲高については、1.5℃の場合150万トン減少するとみられていますが、2℃の場合300万トン以上減少すると予想されています。気候変動に対する対策は人類全体にとって喫緊の課題であると言えるでしょう。

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村松 麻衣子
ウェルスマネジメント戦略部マネージャー
村松 麻衣子
Maiko Muramatsu
2014年に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社後、浜松支店にて資産運用コンサルティング営業に従事。その後米国モルガン・スタンレーNY本社へ出向し、米国における超富裕層向け営業や営業員育成に関する知見を習得。帰国後は超富裕層向け営業サポート部署に所属し、米国で主流のアドバイザリービジネス推進や非運用(相続・事業承継)領域含む総合ソリューション提案に従事。2024年、日本の金融サービスの変革を目指す姿に魅力を感じIFA Leadingに入社。