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健康寿命と平均寿命を考える~健康寿命にフォーカスしなければならない~
健康寿命と平均寿命は異なる指標であり、健康寿命は介護を必要としない期間を示します。両者の差を縮めることが、個人と社会にとって重要であるといえます。

- (1)健康寿命とは何か
- (2)健康寿命と平均寿命の違い
- (3)健康寿命と平均寿命の差が大切
- (4)簡易生命表とは何か?
- (5)健康寿命を延ばすために必要なこと
- IFA Leadingのアドバイザーにお気軽にご相談ください
目次
(1)健康寿命とは何か
健康寿命という言葉を耳にすることがあります。健康寿命とは、人生において健康に生活できる期間のことですが、それだけでは良くわかりません。健康寿命とは、支援や介護を必要としないで生活できる期間ということになります。健康寿命の算出方法は、人間の生存期間を「健康な期間」と「不健康な期間」に分けて定義し、そのうちの健康な状態の期間を表す方法を採用しています。わが国では、国民生活基礎調査で「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問をして、「ない」という回答を「健康」とし、「ある」という回答を「不健康」として期間を分け、健康な状態の期間の平均値を健康寿命としています。
しかし、この質問に対する回答は極めて主観的であり、人それぞれということになります。ちなみに、WHO(世界保健機関)では、「健康とは、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在が無いことではない」としています。人によっては、階段の上り下りがきついと感じて自分は健康ではないと意識する人がいるかもしれません。一方、若いころに比べると体力が落ちて、定期的に病院に通っているけれど、いろいろな人との交流を楽しんで健康的な生活をしていると感じている人もいるかもしれません。要するに健康寿命とは、その人の「気持ち次第」といえるのではないでしょうか(図表1参照)。

(出所)厚生労働省、メディア情報等を基にIFA Leading作成。
(2)健康寿命と平均寿命の違い
それでは平均寿命と健康寿命の違いについて見てみましょう。厚生労働省のデータをみると、平均寿命とは「0歳における平均余命」のことで、2022(令和4)年の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響等により、前回の2019年調査に対しては男女とも若干短縮しました。一方、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことであり、2022(令和4)年の健康寿命は男性72.57歳、女性75.45歳となっています。男女とも、前回2019(令和元)年の調査結果と比較して統計的な有意差はありませんでしたが、男性は若干健康寿命が短縮し、女性は若干健康寿命が延びる結果となりました(図表2参照)。
ちなみに、2022年の都道府県別健康寿命データを紐解くと、男性はトップが静岡県の73.75歳、次いで石川県73.60歳、山梨県73.47歳であり、最下位は岩手県70.93歳、次いで高知県71.19歳、沖縄県71.62歳となっています。調査年によって順位は変動しますが、静岡県、山梨県、石川県、埼玉県、福井県などが恒常的に上位に名を連ねています。一方、女性はトップが静岡県の76.68歳、次いで山口県76.43歳、岐阜県76.20歳であり、最下位は岩手県74.28歳、次いで沖縄県74.33歳、神奈川県74.71歳となっています。調査年によって順位は変動しますが、静岡県、岐阜県、三重県、大分県、福井県などが恒常的に上位に名を連ねています。東京都、大阪府といった大都市圏は、男性、女性ともに下位に位置しており、都市部より田舎の健康寿命が長い傾向がみられます。但し、沖縄県、岩手県の健康寿命が相対的に短いのは、飲酒量や食生活が影響しているのかもしれません。

(出所)厚生労働省資料等よりIFA Leading作成
(3)健康寿命と平均寿命の差が大切
健康寿命と平均寿命の差は日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味しますが、これは、2010年(平成22年)から男女ともに徐々に縮小傾向にあり、2022(令和4)年では男性8.49年、女性11.63年となっています。確かに、人々にとって平均寿命を延ばすことは大切なことですが、それ以上に健康寿命を延ばして、健康寿命と平均寿命との差を縮めることは社会全体にとっても大切なことになります。それは、健康寿命を延ばすことによって、医療費や介護保険料等を抑えることが出来るからです。わが国では、バブル崩壊後、長らく歳入が増えない状況が続いてきたなかで、歳出は増加の一途をたどってきました。その最大の要因が医療費などの社会福祉費です。ある程度の年齢になれば、慢性疾患などを抱えて、通院して薬を処方してもらうことは仕方のないことなのかもしれません。しかし、健康であれば、その回数を減らすことが出来るかもしれません。また、介護にしても重度な状態に至らなければ介護費用を抑制することが出来るかもしれません。いずれにせよ、健康寿命を延ばすことは、社会全体にとって大きなメリットがあるのです。
(4)簡易生命表とは何か?
さて、ここで生命表について整理してみたいと思います。生命表は、ある期間における死亡状況が今後変化しないと仮定したときに、各年齢の者が1年以内に死亡する確率や、平均してあと何年生きられるかという期待値などを、死亡率や平均余命などの指標によって表したものであり、厚生労働省が毎年公表しています。これらの指標は、男女別に各年齢の人口と死亡数を基にして計算しており、現実の年齢構成には左右されず、死亡状況のみを表しています。したがって、死亡状況を厳密に分析する上で不可欠なものとなっているのです。また、0歳の平均余命である「平均寿命」は、全ての年齢の死亡状況を集約したものとなっており、保健福祉水準を総合的に示す指標として広く活用されています。令和5年の簡易生命表は、令和5年1月1日から12月31日までの1年間を作成基礎期間としています。
次に、生命表上の特定年齢まで生存する者の割合について見てみましょう(図表3参照)。戦後直後の1947年には、40歳まで生存する割合は男性で68.0%、女性で70.9%でした。すなわち、男性も女性も1947年には40歳まで生存する割合は3分の2程度に過ぎなかったのです。その後、平均寿命はドンドン延びていき、2023年では90歳まで生存する割合は男性で26.0%、女性で50.1%となっています。すなわち、女性の2人に1人は90歳まで生きることになっているのです。ちなみに、男性の死亡数のピークは87歳であり、女性は93歳となっています。これが、日本という長寿国の実態なのです。

(出所)厚生労働省「令和5年簡易生命表の概要」よりIFA Leading作成
(5)健康寿命を延ばすために必要なこと
最後に健康寿命を延ばすために必要なポイントについて、整理してみましょう。第一に、バランスの取れた食事が大切です。栄養バランスの取れた食事は、健康寿命を延ばすための基本です。特に、野菜、果物、全粒穀物(ぜんりゅうこくもつ)、魚、ナッツなどを積極的に摂取することが推奨されます。また、塩分や糖分の過剰摂取を避け、暴飲暴食を慎まなければなりません。第二に、適度な運動が大切です。定期的な運動は、身体機能を維持し、病気を予防するために欠かせません。ウォーキングやジョギング、ヨガ、筋力トレーニングなど、無理なく続けられる運動を日常生活に取り入れることが大切です。第三に、ストレス管理も大切です。ストレスは多くの病気の原因となるため、適切に管理することが重要です。リラクゼーション法や趣味、友人や家族との交流を通じて、ストレスを軽減する方法を見つけることも大切です。ストレス管理という点では、資産管理も重要です。将来にわたっての資産運用・管理を適切に行うことは、ストレスを軽減し、健康寿命を延ばすことに繋がるかもしれません。