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景気ウォッチャー調査とは
景気ウォッチャー調査は、「街角景気指数」とも呼ばれており、内閣府が毎月実施し、公表しています。昨今は賃金アップなどが取りざたされていますが、景気ウォッチャー指数は右肩下がりであり、中小企業を中心とした景況感の好転にはまだ時間がかかりそうです。

- (1)景気ウォッチャー調査とは何か
- (2)調査対象地域及び調査客体
- (3)2025年1月の景気ウォッチャー動向調査の動き
- (4)2025年1月のコメントから読み取れること
- (5)今後の景気見通しをどのようにみるべきか
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目次
(1)景気ウォッチャー調査とは何か
景気ウォッチャー調査は、「街角景気指数」とも呼ばれており、内閣府が毎月実施し、公表しています。景気ウォッチャー調査は、コンビニやスーパーや百貨店など小売店の店長・店員、飲食関連の経営者・スタッフ、ホテル経営者・従業員、タクシーの運転手、各企業の経営者・従業員、職業安定所職員など景気動向に敏感な現場に近い立場の人を対象にオンラインシステムを用いて電話、Webサイトもしくはメールなどで回答を得ています。景気指数(DI)には、3か月前と比較した景気の現状に対する「現状判断DI」と、2~3カ月先の景気の先行きに対する「先行き判断DI」の二つがあり、その構成項目は、家計動向関連(小売、飲食、サービス、住宅)、企業動向関連(製造業、非製造業)、雇用関連となっています。DI(Diffusion Index)とは、変化の方向性を示す指標のことであり、0~100%の間で変動し、50%を継続的に超えれば「景気が上向き」、50%を下回れば「景気が下向き」と判断されています。
(2)調査対象地域及び調査客体
景気ウォッチャー調査は、北海道、東北、北関東、南関東(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、甲信越、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の12 地域を対象としています。また、家計動向、企業動向、雇用動向に関して、代表的な経済活動項目の動向を敏感に反映する現象を観察できる業種の適当な職種のなかから選定した2,050人を調査客体としています。具体的には、百貨店、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、青果店主、ホテル、レストラン、商店街、家電量販店、レジャー施設、旅行代理店、食品製造業、建設業、不動産業、一般機械器具製造業、自動車整備工場、輸送業、民間職業紹介機関、ハローワーク、人材派遣会社など多岐にわたっています。調査客体については、専門家、学識経験者、大企業の経営者などではなく、タクシーの運転手、小売店の店主、中小企業経営者といった街角景気を実感できる立場の人を対象としており、「肌感覚」での景気の実態を表していると言えます。
(3)2025年1月の景気ウォッチャー動向調査の動き
2025年1月の現状判断DI(季節調整値)は、前月差0.4ポイント低下の48.6と3カ月振りに低下しました。中身をみると、家計動向DIは、インバウンド需要好調を背景に、観光業・宿泊業といったサービス関連で50ポイントを維持したものの、それ以外は全て50ポイントを下回り前月比でも低下しました。全体としてみると、物価高によるコストアップと人手不足によって景気マインドは低下しているのではないかとみられています。景気マインドは全体としては一定の水準を維持していますが、物価上昇と人手不足が影を落としていると思われます。企業動向DIは、製造業が上昇したものの、非製造業は低下しました。基本的には一進一退の動きにあるといって良いでしょう。本来であれば、企業動向DIは企業業績の回復によってもっと上昇しても良いはずですが、景気ウォッチャー調査では中小企業などの声を重視しているため、大企業の景況感とはやや異なっているのかもしれません。また、雇用関連DIは、4カ月連続低下しました。わが国は構造的な人手不足社会であり、雇用市場は買い手市場(企業の採用枠に対して就職希望者が少ない市場)となっています。にもかかわらず、雇用関連DIがそれほど上昇していないのは、採用コスト上昇などから企業が採用増に慎重になっている、職種により採用のミスマッチが起こっている(事務関連の仕事は求人意欲がそれほど高くない)といった点が挙げられます。

(4)2025年1月のコメントから読み取れること
景気ウォッチャー調査では、毎月、調査客体によるコメントを掲載しています。これまでの主たる関心事をみると、「コロナ禍においてはコロナ禍による経済活動の低迷」であり、「コロナ禍に伴う行動制限緩和後は消費や生産に対する回復期待」であり、「インバウンド需要回復後は、インバウンドに伴う観光業、小売業における事業環境改善」といった点が中心となっていました。こうしたなかで、2023年以降の関心事は、「インフレに伴うコストアップ」と「人手不足を背景としたサービスや生産体制見直し」といった点に集中している印象があります。
2025年1月のコメントをみると、「物価高への慣れを感じており、2~3カ月後の新生活、ゴールデンウィーク消費においてもリバウンド節約は少なく、安定した購買活動が期待出来るのではないか(百貨店・家計動向)」、「値上げの影響で売上高は伸びているものの、販売量については前年割れが続いているため、物価と所得のバランスが見合ってくるまでは同様な動きが続きそう(スーパー・家計動向)」、「食品業界も給与が5%以上増加する可能性が高く、原料費、燃料費、最低賃金の上昇を含む経費の増加を反映して、商品価格の引上げが確実に進んでいる(食料品製造業・企業動向)」、「最近では、営業系とシステム系の求人が顕著に増えていることから、売上拡大を目指す企業の動きがうかがわれるが、ミスマッチの要素も強まっている(人材派遣会社・雇用関連)」といったポジティブな声が聞かれています。
一方で、「今年は、食料品、原材料費、物流費、燃料費などの多くが値上げするとの予想が消費者に浸透しているため、財布のひもは固くなる一方である(衣料品専門店・家計動向)」、「米国向け輸出が多く、トランプ大統領による関税引上げ政策による出荷量への影響を懸念している。国内では一般客向けの製品販売の動きが鈍い(一般機械器具製造業・企業動向)」といったネガティブな声が聞かれました。ポジティブなキーワードは「インバウンド需要」、「賃金上昇」、「商品・サービス価格引き上げ」などであり、ネガティブなキーワードは「人手不足」、「物価上昇」などであると言えそうです。
(5)今後の景気見通しをどのようにみるべきか
それでは今後の景気見通しをどのようにみたら良いのでしょうか。ここ最近におけるわが国の変化としては、「賃金上昇による収入の増加」、「新NISA導入による投資マインドの上昇」、「インフレ環境醸成に伴う物価の上昇」、「日銀による金利上昇政策への転換」、「想定以上のインバウンド需要」などが挙げられます。こうしたなかで、景気ウォッチャー判断DIをみると2023年以降は、右肩下がりの状況となっています。確かに、賃金は上がりましたが、中小企業や零細企業に対してはどこまで浸透しているのか疑わしい限りです。また、投資マインドが上昇しているとはいえ、投資先は米国など海外の株式や債券が中心であり、わが国の株式市場への資金流入は限られているようです。物価上昇にしても、実質賃金上昇を伴っていないので、むしろ家計支出は抑えられている状況となっています。日銀の金利上昇は正常金利への流れと受け止めればポジティブな事象ですが、超低水準の預金金利の状況から脱するメドが立っていないため、預金者にとってメリットは感じられません。いずれにせよ、2025年は失われた30年から安定成長・適度なインフレ経済への転換する重要な一年になると考えられます。
