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家計金融資産動向 ~新NISA導入によって変化の兆しがみられる?~

家計金融資産は、2024年12月時点で2,230兆円と過去最高になりました。昨今の動きでは、インフレの影響や新NISA導入の後押しもあり、貯蓄から投資へと資産の内訳が変わってきています。

(1)2024年12月末の家計金融資産残高は過去最高に

日銀が3月に発表した2024年10〜12月期の資金循環統計によると、2024年12月末時点の家計の金融資産は前年同期比4.0%増えて2,230兆円と過去最高になりました。金融資産の内訳を前年比伸び率でみると、現金・預金が0.6%増、債務証券が11.8%増、投資信託が27.4%増、株式等が9.5%増、保健・年金・定額保証が1.1%増となっており、投資信託及び株式等の伸び率が高くなっています。家計の金融資産残高は2024年6月末まで7四半期連続で過去最高を更新していましたが、2024年9月末には前四半期末対比で8四半期ぶりに減少しました。これは、株式相場が下落したことに加えて、円高の進行によって外貨資産の円換算額が低下した影響によるものです。昨今の特徴としては、キャッシュレス決済が進んだことによって現金の保有割合が減っていることが挙げられます。わが国の家計金融資産は現金・預金の割合が高いことが特徴となっていますが、それでもその割合は低下傾向を示しています。さらに現金預金のなかでも定期性預金の割合が大きく減っていることが注目されます(図1参照)。

図1 わが国における家計の金融資産の内訳

(2)定期性預金からの資金シフトが進んでいる

定期性預金とは、銀行の定期預金、郵便局の定額貯金などであり、かつてのように預金金利が7%の時代であれば、10年放置していれば元本が2倍になるという金融商品でした。仮に金融機関が破綻しても、預金者1人当たり元本1,000万円までは破綻日までの利息を含めて預金保険機構によって保障されているので、典型的な「安全資産」と見なされているのです。勿論、現在でも預金保険機構による金融資産保証制度は活きているのですが、運用益が問題なのです。わが国では長らく超低金利時代が続いていたため、定期性預金の金利水準は0.002%程度に過ぎませんでした。仮に100万円を定期性預金に預け入れすると、1年後の利息は20円ということになるわけです。最近ではメガバンクの定期預金金利は0.25~0.5%程度に引き上げられていますので、1年後の利息は2,500~5,000円にまで増えることになります(税引き前)。20円であればチロルチョコ1個しか買えなかったのが、2,500~5,000円ということになるとちょっとした高級弁当とワインを買って楽しむことができるようになるわけです。とはいえ、インフレ率を遥かに下回る預金金利水準が続くようであれば、定期性預金を取り崩してそれ以外の金融商品に資産を振り向けようという流れは止めることができないと思われます。

(3)安全資産からリスク資産への流れが定着か

また、昨今の動きの特徴としては、安全資産からリスク性資産への流れが定着しつつあることが挙げられます。特に、2024年に導入された新NISAによって、家計の金融資産に占める投資信託や株式等の割合が高まっています。2010年頃までは金融資産全体に占める投資信託・株式等の割合は10%程度だったのですが、その後徐々に割合を高め、2024年末では20%弱にまで達しています。バブル期と昨今の資産運用の違いとしては、「バブル期に比べると米国株など海外ものの割合が高まっている」、「長期・分散・積立という運用手法が定着してきた」、「投資に関わる情報を取得しやすくなっている」、「販売手数料や運用コストが低減されてきた」といった点が挙げられます。インフレ時代の足音が高まっている今日、リスク資産を積み増すことで家計資産を防衛しようといった動きが高まっているのではないでしょうか。インフレ時代における資産運用については、あらゆる世代において共通の課題であるといえるでしょう。

(4)諸外国との比較

ここで、家計の金融資産についての国際比較をみてみましよう(図表2参照)。データは2024年8月に公表された日本銀行調査統計局資料を基にしています。第一に、日本は現金・預金の割合が高く、投資信託、株式等の割合が低いことが特徴となっています。この逆であるのが米国であり、米国の家計の金融資産の過半は投資信託、株式等であり現金・預金の割合は10%程度に過ぎません。そして、ユーロ圏は日本と米国の中間あたりに位置しているといった印象でしょうか。

次に1人当たり金融商品の残高をみると、米国が突出して高いことがわかります。経済成長によって、株価が順調に上昇していることから、株式等のリスク資産が家計資産増大に寄与していることがうかがわれます。意外なのがユーロ圏での1人当たり金融資産残高がそれほど大きくない点です。この点については、ユーロ圏の場合、年金・医療・教育といった分野で公的支援が行き届いているためにそれほど家計の金融資産を必要としていないのかもしれません。ただし、税金や社会保障費負担が大きいことは言うまでもありません。ちなみに、図表2の1人当たり金融資産残高は平均値であり、富裕層などの影響で数値が嵩上げされています。わが国の場合、ボリュームゾーンとなる中央値は900万円程度となります。

図2 家計の金融資産の日米欧比較

(5)インフレ時代の資産運用とは

最後に、インフレ時代の資産運用について考えてみましょう。デフレ時代には、物価が下落傾向をたどり、現金価値が上昇しました。株式や投資信託を持っていても下落傾向が続き、資産運用が上手くいかなかったという失敗例は枚挙にいとまがありませんでした。しかし、インフレ時代には、デフレ時代と真逆の状況が起こってしまうのです。物価は上昇傾向をたどり、現金価値が下落してしまうのです。足元では賃金引上げが話題となっていますが、全ての産業・企業で賃金が上がるわけではありません。さらに、わが国の場合、年金受給額はインフレスライド制になっていません。インフレ時代には、おカネに働いてもらって資産運用をすることが大切になります。人生のステージ、収入、資産保有額によって違いますが、「長期」、「分散」、「積立」を意識して投資をすることが大切だと思います。また、一定規模の資産を運用するのであれば、専門家にサポートしてもらうことも検討してみては如何でしょうか。金融機関などでの短期的に成果を求めるアドバイスについては疑って掛かることも必要かもしれません。そして、単なる運用アドバイスのみならず、税務や法制面を含めた資産全体に対するサポートがしっかりしているかを見極めることが大切です。

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