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グローバル化とは ~グローバル化にどう対峙するかは大切な視点~
グローバル化とは、「人・モノ・カネ・情報が国境を越えて結びつき、世界の一体化が進むこと」を示しています。この記事では、グローバル化の要素についてや、メリット・デメリットなどを解説していきます。

- (1)グローバル化とは何か
- (2)何故、グローバル化が求められているのか
- (3)グローバル化によるメリットとは何か?
- (4)グローバル化によるデメリットとは何か?
- (5)これからのグローバル化をどう捉えれば良いのか
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目次
(1)グローバル化とは何か
昨今、グローバル化という言葉を耳にすることが増えてきました。グローバル化とは、「人・モノ・カネ・情報が国境を越えて結びつき、世界の一体化が進むこと」を示しています。日本政府では、グローバル化を「情報通信技術の進展、交通手段の発達による移動の容易化、市場の国際的な開放等により、人、物材、情報の国際的移動が活性化して、様々な分野で国境の意義があいまいになるとともに、各国が相互に依存し、他国や国際社会の動向を無視できなくなっている現象ととらえることができる」と定義としています。また、グローバル化という言葉は、企業のグローバル化や、人材のグローバル化、文化のグローバル化などさまざまな意味で使用されています。
(2)何故、グローバル化が求められているのか
ここで、何故、グローバル化が求められているのか考えてみたいと思います。確かに20世紀にもグローバル化という言葉はありましたが、現在の状況に比べると遥かに限定的でした。20世紀の海外旅行、海外出張と言えば特別なことであり、航空網にしても今に比べると限定的でした。貿易量にしても桁外れに少なく、海外製品については「舶来品」と言われていて重宝されていました。資金移動にしても現在に比べると非常に少ない状況でした。1980年代、1990年代の外国人による日本株の株式売買比率は10%程度であったのに対して、2020年以降は70%程度にまで高まっています。バブルの頃、外国人がわが国の企業に投資をすると、「ガイジン買い」と言われていてお祭り騒ぎだったのです。但し、バブル当時の日本人投資家(機関投資家、個人投資家)は「上がるから買う」といったスタンスだったのに対して、外国人投資家は「ファンダメンタルズ(経済や企業の実態価値)」を分析・評価して投資していた印象があります。さらに、2010年代に入ると、スマートフォンの普及により、世界的に「情報」のグローバル化が進むことになります。このことによって、かつて10年掛かって変化してきたことが、1~2年のうちに変化するようになったのです。すなわち、グローバル化を理解しないと時代に取り残されてしまうことが、グローバル化が強く求められるようになってきた背景と言えるのではないでしょうか(図表1参照)。

(3)グローバル化によるメリットとは何か?
次に、グローバル化によるメリットを整理してみましょう。第一に、生産性の向上が挙げられます。どこの国もかつては自国生産がほとんどであり、他国に生産を移管することは稀でした。しかし、20世紀後半からは生産コスト、物流コストを勘案して他国に生産を移管するケースが増えてきました。第二に、多様化の進展が挙げられます。かつての日本は、自国製品で溢れていましたが、洗剤・台所用品、医療用品、果物など輸入品が増えてくるにしたがって、製品やサービスの多様化が進んできました。消費者にとっては、選択肢が増えることに繋がります。第三に、技術や文化の発展が挙げられます。以前から日本では「立ち食いそば・うどんの文化」はありましたが、ファーストフードの浸透によって「テイクアウト文化」が普及するようになったのです。そして、何といってもグローバル化の最大のメリットは国際協力、国際協調になるのではないでしょうか。1997年の通貨危機は新興国はじめ世界各国を経済危機に陥れましたが、2008年のリーマンショック、2020年のコロナショックについては経済的な落ち込みをある程度回避できたと言えるのではないでしょうか。勿論、リーマンショックにせよ、コロナショックにせよ各国とも経済的ダメージを受けましたが、グローバル化のお蔭でそのダメージはそれほど大きくなく、且つ比較的短期間のうちに回復を遂げることができたという見方が出来るわけです(図表2参照)。

(4)グローバル化によるデメリットとは何か?
一方、グローバル化によるデメリットとは何でしょうか。第一に、金融問題が世界に波及することが挙げられます。特に、昨今のように世界的にインフレが進んでいる状況下では、金融政策の舵取りを誤れば金融危機を誘発してしまうことになりかねません。第二に、働く場所が減少することが挙げられます。わが国の場合、慢性的な人手不足社会であり、雇用情勢が安定しているために、こうした問題は余り意識されていませんが、ヨーロッパの国々では移民の増加によって働く場所が奪われて失業してしまったため、労働者による暴動が起こっているようです。第三に、環境問題の悪化が挙げられます。製品の輸送、旅客の移動が増えることで、船舶、航空機、自動車の稼働率が高まり、CO2排出量が増え、地球温暖化が加速する要因となってしまいます。最後に各国のアイデンティティが崩れてしまうことが懸念されます。異邦人人口が増えていくことによって、それまで自国で培われてきた「文化」、「風習」、「習慣」などが失われてしまいかねません。但し、「文化」、「風習」、「習慣」などは、時代とともに変化していくものといつの時代にも変化しないものがあると思います。そういえば、「年賀状」、「お中元・お歳暮」、「接待」といった文化は時代とともに失われつつあります。一方で、「礼を尽くす」、「思いやり」、「おもてなし」といった日本人が持つ精神については変わらない文化であり、このことは外国人からも高く評価されています。
(5)これからのグローバル化をどう捉えれば良いのか
それでは、これからのグローバル化をどう捉えれば良いのでしょうか。まず、「ヒト」の面ではコロナ禍を契機に、訪日外国人旅行者数と日本人出国者数が逆転をして、その差が大きく開いています。円安によって、渡航費用が高くなったこともありますが、そもそも日本人が内向きになって「海外に行きたがらない」ことが要因となっているようです。日本のパスポートは世界最強と言われていますが、2024年の日本人のパスポート保有比率は17%と先進国で最低となっています(トップはイギリスで77%)。また、「モノ」についても、かつては貿易立国として世界に名を馳せていたのですが、円安進行と海外生産拡大によって「貿易赤字国」となってしまいました。輸入額も輸出額もどちらも増えているのは、望ましいことなのかもしれませんが、貿易によって外貨を稼ぐというパターンが通用しなくなっていることには注目しなければなりません。そして、「カネ」については、外国に投資するよりも外国資本によるわが国への投資の方が上回る状況となっているのです。それも「円安」によってわが国の購買力が低下していることが考えられます。実物投資にしても、バブル期には次々と欧米の不動産に投資していた時期がありましたが、今や割安な日本の不動産を外国資本が次々と購入しているようです。ここ数年新規開業しているラグジュアリーホテルも、その多くは外国資本によるものとなっています。これからのわが国は、「ヒト」、「モノ」、「カネ」全てにおいてグローバル化を意識した取り組みが益々重要になっていくと思われます。
