IFAL Times
外国人投資家の視点とは何か わが国の株式市場は外国人投資家が主導
外国人投資家の株式投資における視点や、どのように企業を評価しているかを解説し、日本株式市場における外国人投資家の存在を過去の状態と比較しながら紹介します。
- (1)わが国の株価は34年振りに高値を更新
- (2)外国人投資家の売買シェアは約7割を占めている
- (3)外国人投資家の視点
- (4)株式保有割合では外国人投資家が主体後とも続く見通し
- (5)外国人投資家はどのような企業を評価しているのか
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目次
(1)わが国の株価は34年振りに高値を更新
日経平均株価は今年2月22日に34年2カ月振りに過去最高値を更新し、その後7月11日には42,426円まで上昇しました。特に、今年に入ってから日経平均株価が上昇スピードを強めてきた要因として、①インフレリスクの高まりによって株式市場の魅力が増してきたこと、②今年1月にスタートした新NISAによって個人資金による株式投資が活発化してきたこと、③企業業績回復や株主還元施策拡充などにより株価の先高感が醸成されてきたこと、④円安進行により外国人投資家による資金が流入してきたこと、⑤コーポレートガバナンス改革によりわが国企業の競争力回復が期待できるようになってきたこと、といった要因が挙げられます。その後、7月中旬以降、株価は調整局面に入っており、一本調子での上昇は見込めませんが、株式市場を取り巻く環境は決して悪くないと考えられます。というのは、PBRやPERといった株価指標は海外市場に比べて決して割高ではなく、むしろ割安水準にあるためです。また、「失われた30年」で低迷していた企業の稼ぐ力も復調の気配を見せ始めています。このため、2024年後半には高値更新の場面も十分に期待できると考えられます。
(2)外国人投資家の売買シェアは約7割を占めている
わが国は「失われた30年」によって、「経済」、「賃金」、「株価」の低迷が続いていました。こうしたなかで、一早く低迷を脱したのは株価でした。わが国の株価は1990年初頭から2012年頃まで20年余にわたって低迷が続いていましたが、2012年から今日(2024年7月)までの株価パフォーマンスは欧米主要国に比べても決して引けを取っていません。わが国の株価上昇の原動力となったのは「外国人投資家」でした。それまでも外国人投資家はわが国の株式市場において重要なプレーヤーでしたが、売買シェアは40~50%程度にとどまっていました。ところが、2012年末に安倍政権が誕生し、2013年4月に日銀による異次元緩和が始まると、外国人投資家は日本株への投資姿勢を強め、株価は大きく上昇することになりました。この結果、2015年以降のプライム市場(旧東証1部市場)に占める外国人投資家の売買比率は70%程度となり、まさに日本の株式市場は外国人投資家主導で復活を遂げてきたといえるでしょう(図表1参照)。
(3)外国人投資家の視点
それでは、外国人投資家はどのような視点で株式投資を行っているのでしょうか。外国人投資家といっても千差万別であり、主なスタイルとして①ファンダメンタルズ分析に基づいて長期視点で投資をする「エンゲージメント・ファンド」、②企業に対して様々な改善提案によって株価上昇を狙う「アクティビスト・ファンド」、③短期的な売り買いを駆使してパフォーマンスを追求する「ヘッジ・ファンド」などがあります。昨今では、株主提案等によって企業に揺さぶりをかける「アクティビスト・ファンド」の存在感が高まっているようです。確かにアクティビスト・ファンドは、株主還元拡充、低採算事業の売却、経営陣の交代、不動産事業からの撤退、他社との経営統合等さまざまな要求を突きつけてきますが、これも株価が低評価に甘んじていることが原因となっています。仮に、株主還元が不十分であっても、一定の利益成長を実現していて、PBRが2倍を超えている企業に対しては、株価上昇余地が少ないとして、「アクティビスト・ファンド」が入り込む可能性は小さいとみられています。また、企業のなかには、長期視点で投資をする「エンゲージメント・ファンド」を歓迎する向きがありますが、この場合、あくまでも長期視点ということがポイントであり、「長期での保有を約束してくれる」ものではありません。したがって、長期ビジョンを有していない企業に外国人投資家が長期視点で積極的に投資する可能性は低いのです。
(4)株式保有割合では外国人投資家が主体後とも続く見通し
ここで、投資部門別株式保有状況をみると、2013年度以降は外国人投資家(図表2では外国法人)の割合が30%前後で推移しています。1990年初めまでの外国人投資家の保有割合は5%程度に過ぎませんでしたが、その後年々上昇し、2014年には31.7%と過去最高を記録しました。逆に、1990年初めまでは30%超を誇っていた機関投資家の保有割合は年々低下し、2023年度には過去最低の6.8%にまで下がってしまいました。一方、個人投資家の保有比率も漸減傾向を示しており、2014年度以降は16~17%台で推移しています。金融機関の保有割合が低下してきたのは、株式持ち合いの解消によるものであり、昨今では事業会社同士の株式持ち合いについてもメスが入れられようとしています(図表2参照)。
(5)外国人投資家はどのような企業を評価しているのか
最後に外国人投資家はどのような企業を評価しているのについて整理してみましょう。第一に、「トップメッセージ」が印象的であるかどうかという点が重要になります。ホームページ、統合報告書等に経営トップ(CEO)が力強く明確なトップメッセージが謳われているかがポイントとなります。その国に投資をするかしないか、その企業に投資を知るかしないかはトップ次第というわけです。第二に、「中長期目線での経営計画」が描かれているかといった点が大切になります。何年後に売上高や営業利益をいくらにするかといった目標ではなく、企業価値向上のために「短期」ではなく、「中長期」で企業をどのようにしたいかというビジョンが描かれているかという点がポイントになります。そして、最後に「財務情報」と「非財務情報」の両方の視点でKPI(目標管理のための重要な指標)が描かれているかといった点が評価項目となります。残念ながら、わが国では「財務情報」に関するKPIを打ち出している企業は多くなっていますが、「非財務情報」に関しては定量的開示が十分とは言い難い状況となっています。なお、外国人投資家が評価する項目については国内投資家であっても、個人投資家であっても大切な視点になるはずあり、普遍的な情報であるとも言えそうです。