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ファイナンシャルアドバイザーとは
ファイナンシャルアドバイザーとは、資産運用に関わる金融分野の専門家のことであり、近年その数も増えてきています。今後の資産運用業務の中枢となり得るファイナンシャルアドバイザーについてこの記事では解説します。
- (1)7月から8月に掛けての株式相場は乱高下の状態
- (2)わが国の資産運用に関する課題とは
- (3)証券投資に関わる営業の変遷
- (4)ファイナルシャルアドバイザーとは何か
- (5)これからの資産アドバイス業務はどこに向かうのか
- IFA Leadingのアドバイザーにお気軽にご相談ください
目次
(1)7月から8月に掛けての株式相場は乱高下の状態
わが国における社会課題の一つとして「資産形成」に対する取り組みが挙げられます。本年7月11日、日経平均株価は史上最高値42,426円を付けました。その後、日経平均株価は下落局面に転じ、8月5日には史上最大の下落幅(4,451円)を記録し、8月6月以降も不安定な状況が続いています。日経平均が大幅下落に転じた要因として、①米国景気後退を懸念した世界的な株価調整、②円高への急進展による実体経済への影響、③日銀の想定外の利上げによる日本のマクロ経済政策に対する不透明感の台頭、といった点が挙げられます。株式相場にとって株価変動はつきものなのですが、今回の場合、余りにも短期間で大幅に下落したこと、そして本年1月にスタートした新NISA導入による貯蓄から投資へといった政策誘導に水を差すかもしれないといった点が憂慮されているのです。幸いなことに、株価下落局面で持ち株を処分した個人投資家は限定的であり、個人投資家は「割安になった」としてむしろ買い増しているようです。
(2)わが国の資産運用に関する課題とは
さて、ここで日本政府による「資産所得倍増元年~貯蓄から投資へ」のメッセージを見てみましょう。岸田政権では、昨年来、資産所得倍増計画と称して、貯蓄から投資へシフトすることによる資産形成の重要性を謳っています(図表1参照)。バブル崩壊後のわが国は、歴史的な超低金利が続いていたために貯蓄による資産形成をはかることができませんでした。一方、株式市場も低迷が続いていたために株式投資による資産形成の機会は限定的でした。勿論、10年以上前に成長株を見つけて投資した投資家は大きなリターン(キャピタルゲイン)を得られたかもしれませんが、1990年から2011年までの間に日経平均などの指数に投資した投資家のほとんどはリターンを得られませんでした。すなわち、わが国の場合、1990年~2011年までは貯蓄においても投資においてもリターンを得ることができなかったのです。2012年以降は株式投資において一定程度の成果を得られるようになりましたが、株価変動率が大きくなってきたことで、投資タイミングやポートフォリオ(金融資産の構成)に関してそれまで以上に専門家の助言を必要とするようになってきたのです。
(3)証券投資に関わる営業の変遷
それでは、証券投資に関わる専門家としてどのような人たちがいるのでしょう。かつての証券営業と言えば、証券マンと呼ばれる営業マンが、四季報とチャートブックを片手に投資家に株を勧めていました。また、証券会社に勤めている女性営業社員は、せっせと投資信託の販売を行ってきました。勿論、証券会社の営業社員は真面目に勉強をして営業活動をしていたわけですが、所属している会社が勧めている株式や投資信託の販売に注力することによって予算達成を目指していたわけであり、顧客目線によって資産形成の最適化を目指していたとは言い難い状況だったと思います。極端な言い方をすれば、自社の収益が第一といった考え方が多かったのではないでしょうか。かくして、個人投資家による株式市場への資金流入が細ったことも、わが国の株式市場が長期低迷へと追い込まれた一つの要因かと思います。
(4)ファイナルシャルアドバイザーとは何か
こうしたなかで、1990年代半ばくらいから、ファイナンシャルプランナー、ファイナンシャルアドバイザーといった新たな職種が登場することになります。これらの職種は、資産運用に関わる金融分野の専門家のことであり、ライフプランの策定、おカネにまつわる相談、金融商品の提案・紹介等を行ってくれます。従来の証券投資に関わるアドバイスの専門家が、商品の販売に特化していたのに対して、資産形成等を意識したやり取りができるようになってきたのです。こうした動きは、バブル崩壊後に問題となった手数料稼ぎのための過剰販売や回転売買を回避して長期的な資産運用を目指そうという金融当局の考えを反映したものと思われます。
そこで、独立性を重視するといった考え方が出てきました。ファイナルシャルアドバイザーの場合、金融機関に所属しているケースと、独立系として活動しているケースに大別されます。独立系の場合、特定の金融機関の意向に左右されることは無く、顧客の属性に寄り添った提案をすることができるというメリットがあります。勿論、独立系では、大手金融機関に比べて収益基盤が十分でなかったり、役職員の経験値が少なかったりといった課題はありますが、独立系ならではの良さと成長力は大手金融機関に比べても遜色無いのではないでしょうか。(図表2参照)
(5)これからの資産アドバイス業務はどこに向かうのか
筆者の知り合いの方に大手生命保険会社の代理店にライフプランナーとして勤めていた方がいましたが、保険会社の代理店では自社商品しか売れません。この方は、ライフプランナーの強みは活かしつつ提案できる商品は複数あった方が良いという点に目を付けて、独立することになりました。元々取り扱っていた商品はそのまま取り扱うとともに、損害保険など新たな商品を追加し、税理士等と協業して相続対策等もサポートするとのことです。保険商品と言えば、売れたら売りっぱなしで、病気や怪我をした時に保険請求をするといったお付き合いが一般的な印象ですが、この方は定期的に保険契約者に対してアドバイスしていたようです。金融商品は、売った時ではなくて、売った後のフォローが大切なのだと思います。
その意味では、ファイナンシャルアドバイザーは、顧客の家族構成、資産の詳細な状況、収入源、現在の生活費、生命保険や健康保険など保険契約のプラン、健康状態などを把握して適切なアドバイスが求められています。そして、顧客属性に適したポートフォリオを提案し、資産の運用・管理を行わなくてはなりません。ファイナルシャルアドバイザーは、いわば資産に関わる「ホームドクター」の役割を担っているわけです。ファイナルシャルアドバイザーにとって大切なことは、投資目的を達成することもさることながら、資産を適切に運用・管理することであり、定期的な報告と相談、そして依頼者との信頼関係を築くことなのではないでしょうか。