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2024.09.30 コラム

分散投資の有効性

分散投資の有効性は、昨今の日経平均の下落や大幅な円高などの不安定な投資環境でより高まると考えられます。この記事では、直近と過去の市場の動きを分析し、分散投資の有効性を確認します。

急落時こそ分散投資が有効【楽天証券 トウシル】

(1)不安定な相場下では、バランスの取れたアセットアロケーションが重要

2024年8月頭に、国内株式市場が歴史的な急落をしました。

8月5日の国内株式市場では、日経平均株価が前営業日比の▲12.4%の下落し、1日の下落幅は過去最大、直近高値からの下落率もコロナショック以来となる▲25.5%の下落を記録しました。今回の下落は図を見てもわかる通り、大きな変動でありました。

そして直近は為替も大きく円高の水準です。

国内市場が歴史的な急落

このような状況下でも足元、分散投資の有効性が見られています。

下図に示すように主要資産の騰落率は、株式市場(特に半導体株と日本株)の大幅な調整がみられる一方で、安全資産とされる債券や金は堅調な動きが目立っています。

また、典型的なアセット・アロケーションは、株式と債券を組み合わせることが多いが、図の一番上にある世界株式を60%、世界債券を40%の組み合わせをした分散ポートフォリオは、わずかではありますがプラス圏で推移していることが分かります。

やはり分散投資をすることにより、単一の資産を保有するよりも下落率を抑えられることがわかると思います。

株式市場に大幅な調整がみられる一方で債券や金は堅調

(2)中長期的な視点では、資産のリターンは為替のリターンを上回る傾向にあること

また為替についても、直近大きく円高に向いており不安定な状況が続いていることは間違いないですが、為替リスクについても中長期的な視点では過度に悲観する必要はないと考えられます。

その理由は資産のリターンが為替のリターンを上回る傾向にあるからです。

下図は米国株式に10年間投資を行い、投資リターンを株価要因(資産のリターン)と為替要因(為替のリターン)に分解したものです。1976年1月~2014年7月を分析期間とし、横軸の日付を投資開始時点としたときの10年後の投資リターン(トータルリターン=株式リターン+為替リターン)を表示しています。

例えば、最も古い日付である1976年1月に米国株式に投資を開始した場合、1986年1月時点でどの程度の運用結果となったのかを縦軸の投資リターン(折れ線グラフ)が示しており、その内訳(株価要因と為替要因)を積み上げ面グラフが表しています。

分析結果からほとんどの投資期間において、投資リターンがプラスになっていることが確認できます。1976年~1988年の為替リターンは、プラザ合意を受けた円高進行によって大幅なマイナスを計上しているが、そうした期間でさえも株価リターンは為替リターンによるマイナスを相殺しています。

投資リターンがマイナスとなったのは、1998年~2002年頃ですが、この期間はITバブルの崩壊、グローバル金融危機や東日本大震災といったリスクイベントが計算期間に含まれており、やや特殊な期間といえます。

米国債券に対しても同じ分析を実施しましたが、同様の傾向を確認することができました(米国債券の分析期間は1989年12月~2013年12月で、投資リターンがマイナスになることはありませんでした)。

総括すると、直近の為替市場の動きが懸念材料であることは否めませんが、中長期的な投資の視点が重要であると考えられます。

資産が産み出すリターンは為替リターンを上回る傾向がある

(3)急落局面が来ても粘り強く投資を継続することが必要

また、直近のような急落局面が来ても粘り強く中長期的な視点で投資を継続することが、資産形成を行う上で重要だと考えています。なぜなら、金融市場の急反発は調整の直後に起きることが多いからです。

下図は1999年12月末~2024年8月2日までを分析期間として、世界株式(MSCIオールカントリー・ワールド指数)で長期保有した場合と、分析期間内の日次騰落率の上位10日間を除いた場合の運用結果をシミュレーションしたものです。

図表内の濃い青線は、世界株式を保有し続けた場合の運用成果を、薄い青線は、分析期間内の日次騰落率の上位10日間を除いた場合の運用成果を示しています。

急落局面が訪れたとしても、そのまま投資を続けた場合、運用成果は約4.2倍となっている一方、上位10日間を除いた場合の運用成果は、約2.3倍と大きく劣後していることがわかります。

ここで重要なことは、金融市場の反発局面を事前に予測することは困難であるということです。図で確認できるように、急反発局面は急落局面の後に訪れることが多いです。そのため、急落局面でリスク回避を意図して資産を売却することは、急反発局面を逃す可能性につながってしまいます。

以上のことから、急落局面が来たとしても、粘り強く投資をし続けることが重要になると考えられます。

急落局面で資産を売却することは得策ではないと考えられる

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加藤 映美
ウェルスマネジメント
加藤 映美
Emi Kato
2017年にSMBC日興証券本店に入社。個人・法人向け資産運用コンサルティング業務に従事する。 本質的な運用提案をしたいという思いと自身のスキルアップのため、2019年にIFAとして独立。 資産運用のみならず、法人保険や不動産などのソリューションも提供している。またセミナー講師も経験。 2022年にIFA Leadingの創業に参画。 美容情報収集が趣味で、専門分野のお客様も担当。皆様の人生を全力で楽しめるものにすべく資産運用で伴走します。