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2025.06.10 コラム

馬主とは~社交界ではステータスの高い存在とみられている~

馬主とは、競走馬のオーナーであり、レースでの勝利によって賞金の大半を得られる存在です。多額の維持費がかかり、必ずしも儲かるとは限りませんが、社会的地位や名声を得る魅力もあり、競馬の醍醐味を支える重要な役割を担っています。

(1)馬主とは何か

6月1日、競馬の祭典である日本ダービーが開催されました。今回は1番人気「クロワデュノール号」がダービー馬の栄冠に輝きました。競馬界にはいろいろなレースがありますが、「ダービー」の名を冠した競争は世界各地で行われており、競馬関係者にとってはまさに羨望のレースであると言えます。その最大の理由は3歳馬(人間でいえば20歳に相当)に限定されているからです。なかでも、ダービーを最も楽しみにしているのは馬主(ばぬし、うまぬし)です。馬主とは、競走馬のオーナーのことです。競走馬としての現役時代はもちろん、長きにわたるパートナーシップを結びます。1頭の競走馬のライフサイクルには、調教師や生産者、騎手など、馬主を含めて非常に多くの人々が関わっています。引退した後は、種付け馬として後世に血統を伝える役割を果たすことになります。

(2)馬主になるための要件とは

馬主になるためには、主催団体への登録が必須で、登録条件は各団体により異なります。中央競馬(JRA)の個人馬主の場合、審査基準として年間所得が2年連続で1,700万円以上であること、そして7,500万円以上の資産を所有している必要があります。馬主の権利をシェアする組合馬主の場合は、所得金額が過去2年いずれも900万円以上であること、そして、組合財産として1,000万円以上の貯蓄がある必要があります。地方競馬では所得金額が500万円以上あれば馬主として登録できるところもあります(図表1参照)。

(図表1)
馬主になるための要件
(1)個人馬主になるための要件
今後も継続的に得られる見込みのある所得金額(収入金額ではありません)が、 過去2か年い ずれも1,700万円以上あること(一時所得及び競馬に関する所得を含めない)。
継続的に保有する資産の額が7,500万円以上あること。
(注)資産に含まれるのは、ご本人名義の不動産、預貯金、有価証券(投資信託、債券等を含む) です。 なお、 保険証券、ゴル フ会員権、海外に所在する不動産、 書画骨董等は資産に含みませんのでご注意ください。 負債がある場合は資産額からそ の分を差し引いて評価します。
(2) 組合馬主登録の主な件 (組合員数が3名以上10名以下であること)
▼ 組合員全員について、今後も継続的に得られる見込みのある所得金額(収入金額ではありま せん)が、 過去2か年いずれも900万円以上あること。
組合財産として1,000万円以上の預貯金があること。
組合員のうちに個人馬主・法人馬主の代表者又は他の組合馬主の組合員が含まれていない こと。
(3) 法人馬主登録の主な要件
▼ 資本金または出資の額が1,000万円以上であること。
申請法人の代表権を持つ役員であること。
< 申請法人の資本金または出資の額の50%以上を出資していること。

(出所)日本中央競馬会ホームページ情報(馬主になるには JRA)を基にIFA Leading作成

(3)レース獲得賞金の8割が馬主に配分される!

それでは、馬主になるとどれくらい儲かるのでしょうか。馬主の収入源であるレースの獲得賞金についてみていきましょう。実は、レースの獲得賞金の配分は決まっており、馬主・80%、調教師(競馬において厩舎を運営し、競走馬を管理する人)・10%、騎手・5%、厩務員(きゅうむいん・馬の世話をする人)・5%となっています。そしてレースでの獲得賞金は、本賞金・付加賞金の二つに分けることができます。本賞金とは、レースで馬が勝つことで貰える賞金で、その賞金額は着順に応じて変わります。すなわち、1着 100%、2着 40%、3着 25%、4着 15%、5着 10%となっています。例えば、日本ダービーの優勝賞金は3億円なので、2着の賞金は1億2,000万円、3着の賞金は7,500万円となります。日本ダービーの優勝馬の馬主ともなれば、1レースで2億4,000万円もの優勝賞金を手にすることが出来るわけです。ちなみに、今年のダービーに出走できるのは2022年に生まれた3歳馬であり、その数は7,750頭となっています。すなわち、7,750頭の競走馬のなかで、勝ち残ってきた1頭だけがダービー馬となることが出来るのです。

(4)馬主が負担する費用は幾らか

ところで、JRA施設内(美浦、栗東トレーニング・センター)の預託契約は馬主と調教師の直接契約となり、預託料は厩舎によって異なりますが、一頭あたり一月平均60~70万円程度かかるといわれています。先ほど紹介した競走馬一頭あたりの一カ月の平均預託料が約70万円なので、預託料だけ比較しても儲けるのが厳しいのが現実です。預託料のなかには、馬の世話をする厩務員や助手(調教などのサポート)などの人件費も掛かります。さらに、そのうえ馬の購入費も加算されます。収入はあくまでも平均値なので購入馬によって異なります。もちろん、トップクラスの競走馬になれば1レースで億単位の収入を得ることができます。しかし馬主になったからといって全ての人が儲かるわけではないのです。馬は奥が深いスポーツだといえるでしょう。

(5)馬主になるメリットとは

それでは、馬主になるメリットとは何なのでしょうか。まず、競走馬の調教を行うトレーニングセンターや、各競馬場の馬主席に入場することができます。そして、愛馬の名前を自分で決めることができます。これらのことは競馬好きにとっては、何物にも代えがたい幸福感をもたらすものと言えるでしょう。また、JRA(日本中央競馬会)では、その1年で特に活躍した馬の関係者に対してJRA賞を授与しており、馬主が社会的に注目を浴びる機会が得られます。JRA賞とまで行かなくても、大きなレースに勝利すれば競走馬や騎手と並んで1枚の写真に収まることになります。オーナー経営者(サイバーエージェント創業者の藤田晋氏)、芸能人(北島三郎氏、前川清氏)、スポーツ選手(元大リーガーの佐々木主浩氏)などは数々の大レースに勝利した愛馬を所有していることで有名です。優秀な馬を所有する馬主は、「競走馬を育てられるだけの高額な資産を持っている人物」と見なされ、社会的なステータスを得ることができるのです。競馬発祥の地であるイギリス、世界最高峰と言われる凱旋門賞が開催されるフランス、近年になって競馬が盛んになり始めているドバイなどの中東では、特に馬主の社会的地位が高い傾向にあります。強い競走馬の馬主になることは、有名な政治家、経営者、音楽家、芸術家、スポーツ選手などと同様に、後世に名を残すことが最大のメリットと言えるかもしれません(図表2参照)。

(図表2)
馬主をしている主な有名人

(出所)日本中央競馬会ホームページ情報(馬主をしている有名人・芸能人の所有馬・最新情報|競馬まとめ – netkeiba)を基にIFA Leading作成

(6)日本の競馬界は世界の最先端を行く?

最後に、日本の競馬界の状況について整理してみましょう。世界的には、サウジカップ(1着賞金15億円)、ドバイワールドカップ(同10億円)、ジャパンカップ(同5億円)、フランス凱旋門賞(同4.5億円)といった超高額の優勝賞金を設定しているレースがあります。1994年に来日したフランスのリーディングジョッキーのオリビエ・ペリエ騎手に続いて、2010年以降は、イタリアのリーティングジョッキーのミルコ・デムーロ騎手、フランスのトップショッキーのクリストフ・ルメール騎手などヨーロッパのトップジョッキーが日本を主戦場として活躍しています。ルメール騎手は、2017年、2018年、2019年と3年連続でJRA最多勝利騎手となっています。海外のトップジョッキーが何故日本に来るかというと、賞金額の高さ、レースの公平性、騎手へのサポート、調教施設(競走馬がトレーニングする施設)の充実、熱心なファンなどが魅力的に映るからだからと言われています。確かに海外では大レースの賞金額は凄いのですが、下級条件のレースの賞金はそれほど多くはありません。JRAの場合、3勝クラスのレースでも海外のグレードレースを上回る賞金が設定されています。

日本の場合、競馬ファン層が幅広く、ネット販売によって気軽に馬券(勝馬投票券)を購入出来ることが特徴となっています。コロナ禍においては一時期全てのレースを無観客で開催し、ネット販売を軸に売上高を伸ばした数少ない娯楽産業でした。コロナ禍後においても全体の売上高に占めるネット販売の比率は8割程度に達しているとみられています。JRAの場合は馬券購入、レース確定、払い戻しなど全て順調に対応しており、大きなトラブルは起こっておりません。こうした点が、JRAが世界の最先端を走っていると言われる所以だと思います。

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