IFAL Times
アノマリーとは何か ~金融市場ではアノマリーの法則が生きている?~
アノマリーとは、ある法則や理論からみて説明できない事象を指します。この記事では、株式市場を中心に、有名なアノマリーの法則や考え方について解説します。

- (1)アノマリーとは何か?
- (2)アノマリーは株式市場における投資スタイルのひとつ
- (3)アノマリーの法則によって市場の動きを観察してみると…
- (4)有名なアノマリーを理解することは肝要である
- (5)アノマリーはあくまでも参考程度にとどめておくことが肝要
- IFA Leadingのアドバイザーにお気軽にご相談ください
目次
(1)アノマリーとは何か?
株式投資を行っている人、或いは株式市場に関わっている人であれば、「アノマリー」という言葉を耳にしたことがあると思います。アノマリー(英: anomaly)とは、ある法則・理論からみて異常な状況、説明できない事象などを指しています。科学的常識、原則からは説明できない逸脱、偏差を起こした現象を含んでいますが、すでに説明できるようになった現象であっても、アノマリーあるいは異常という名称がそのまま残ったものも多いとされています。アノマリーの語源は、ラテン語の「anomalia」から来ており、ギリシャ語の「anomalos(不均一)」に由来していると言われています。アノマリーという言葉は、17世紀ころから「一般的な規則からの逸脱」という意味で使われ始めました。そもそも、アノマリーという言葉は、天文学、物理学、数学、生物学などで用いられていたのですが、やがて経済学などでも使われるようになりました。そして、相場に関する経験値が積み上がった結果、格言のようなアノマリーが幾つも言われるようになったのです。
(2)アノマリーは株式市場における投資スタイルのひとつ
ところで、株式投資にはさまざまなスタイルがあります。代表的にものは、ファンダメンタルズ分析に基づいた投資です。これは、企業業績や産業動向を分析して投資を判断するスタイルです。基本的には中長期で投資するスタイルに適しているとされています。次に、テクニカル分析に基づいて投資するスタイルがあります。これは、チャートなどを活用して過去の経験則を基に投資タイミングを計って投資するというやり方です。このほかにも、配当性向や配当利回りを重視するスタイル、株主優待などを目的に投資するスタイル、金利や為替といったマクロ環境をみて指数や個別企業に投資するスタイルとさまざまです。応援投資という点では、親戚・友人・知人が勤めている会社に投資するといったスタイルもあるかもしれません。こうしたなかで、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などに当てはまらない投資スタイルとしてアノマリーに注目する向きがあります。月曜日は外国人投資家がお休みなので株価が上がりにくいといった事象はアノマリーと言えるでしょう。これは、日本時間の月曜日は欧米では日曜日にあたるため、現地投資家の売買高が細るためと言われていましたが、昨今では日本市場に合わせて売買を行う海外投資家も増えているため、このようなアノマリー効果は薄らいでいるようです(図表1参照)。

(3)アノマリーの法則によって市場の動きを観察してみると…
株式市場における「アノマリー」とは、 効率的市場仮説や経済理論市場による説明が困難であるものの、価格動向に一定のパターンや予測可能な周期性が見られる現象を指しています。次に、アノマリーの法則によって市場の動きを観察してみましょう。図表2については、毎年そうなるという訳ではありませんが、そうなる傾向が強いと理解することが必要です。例えば、1月から2月に掛けて、アノマリーでは下落傾向が強いとされていますが、仮にこの時期に金融政策が大きく変更されたり、為替が大きく動いたり、株式市場にとって好ましい政権が誕生したりすると、株式上昇は上昇するかもしれません。しかし、特段、株価に影響を与える材料が無いにもかかわらず、ある期間の下落傾向であったり、上昇傾向であったりする場合、アノマリー効果によるものではないかと考えるわけです。
3月決算発表シーズンである4月下旬から5月中旬に掛けて、3月決算企業の株主総会集中期間である6月下旬、外国人投資家が休暇に入る7~8月に掛けては「様子見ムード」が広がるといった点は頭に入れておいても良いかもしれません。

(4)有名なアノマリーを理解することは肝要である
次に、株式投資の世界で有名なアノマリーについて見てみましょう。以前から言われていたのは「月曜株安」というアノマリーです。これは、わが国の上場企業が週末金曜日の引け後に悪材料を発表するケースが多いことに由来しています。金曜日の夜遅くに悪材料(業績下方修正、減配)等を発表して、企業の担当者はさっさと帰ってしまうというパターンです。アナリストや記者が問い合わせをしても誰も応答してくれませんし、月曜日の朝になって慌てて当該企業の株を売却するといったパターンとなります。こうした事例は2000年頃には幾つかありましたが、さすがにフェアディスクロージャーやタイムリーディスクロージャーが重視されるようになると、企業の情報開示姿勢に対して投資家の厳しい目が注がれるようになり、こうした事例は少なくなりました(図表2参照)。
ところで、日本の株式市場に最も大きな影響を与えるとみられている米国株式市場は、時差の関係で日本時間に対して1日遅れとなります。このため、日本の月曜日は様子見に徹して火曜日から売買を本格化するといったケースも見受けられました。最近ではグローバル化やオンライン取引の進展により、以前ほど「月曜株安」は意識されていないようです。ちなみに、「2日新甫(しんぽ)は荒れる」という格言については、9月の株式市場のボラティリティ(変動率)が大きかったことから、今でも生きていると言えそうです。但し、この理由や背景については分かっていません。

(5)アノマリーはあくまでも参考程度にとどめておくことが肝要
これまでアノマリーについて述べてきましたが、アノマリーとはあくまでも経験則であり、必ずしもファンダメンタルズ分析や相場分析に基づいたものではありません。しかし、多くの投資家が知っているアノマリーの場合、それを意識したトレードをする人が多くなることからアノマリーが機能しやすく有効な参考情報にもなり得るのです。「2日新甫は荒れる」といったアノマリーの格言を意識していたら、9月の株式投資のスタイルは変わっていたかもしれません。但し、アノマリーは万能ではないため、もちろん外れることも珍しくありません。あくまでも参考程度に楽しむ感覚で意識しておくことが望ましてと思います。
例えば、野球の世界でのアノマリーとしては、「ノーアウト満塁は点が入りにくい」、「ピンチの後にチャンスあり」、「相手のピッチャーが交代したらビッグイニング(1イニングに5点以上の大量得点する)」、「日本シリーズなどの短期決戦は先手必勝(初戦に勝ったチームが優勝する)」、「左対左は投手有利・打者不利」などがあります。これらについては明確な理由は無いのですが、試合を見ているとそうかなと思わせることは多いようです。ピンチをしのいだチームが、次の回に逆転するといったことは印象に残っているパターンだと思います。