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空き家問題を考える ~空き家を放置してはいけない時代に!~
空き家の割合が地方で増えてきており問題となっています。そんな中昨年、空き家改正法が施行されたことで、空き家保有者への負担が増える可能性がでてきました。今後の空き家問題に進展はみられるのでしょうか。
- (1)国内住宅総数に占める空き家の割合は過去最高に
- (2)空き家問題の原因を探ると…
- (3)空き家の種類にはどのようなモノがあるのか
- (4)都道府県別でみると、地方での空き家率が高くなっている
- (5)空き家改正法は空き家問題解決の一助となるか
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目次
(1)国内住宅総数に占める空き家の割合は過去最高に
総務省が発表した2023年の住宅・土地統計調査によると、国内の住宅総数に占める空き家の割合は過去最高の13.8%となりました。2018年の前回調査から0.2ポイント上昇したことになります。空き家の数も5年間で50万戸増の899万戸と過去最多になりました。空き家のうち賃貸・売却用や別荘などを除いた長期にわたって不在で使用目的がない「放置空き家」の割合も0.3ポイント上昇の5.9%となり、36万戸増の385万戸となりました。放置空き家は、2003年の211万戸からの20年間で1.8倍に増えたことになります。放置空き家は建物の劣化が進みやすく、景観の悪化や悪臭・害虫の発生、倒壊の危険といった問題につながる可能性があります。空き家は人口減に歯止めがかからない地方を中心に増加傾向にあります。少子高齢化に加えて、地方から都市部への人口移動による人口減の影響が出ているとみられています(図表1参照)。空き家が発生する原因を見ると相続による取得が大半を占めているとみられています。このため、少子高齢化が進んでいるわが国では、今後も多くの相続とそれに伴う空き家の発生が見込まれる状況となっています。
(2)空き家問題の原因を探ると…
わが国は過去20年以上にわたってほとんど経済が成長しませんでした。にもかかわらず、住宅ストックは増え続け、さらに利用目的が定まっていない空き家の数は大きく増えてきました。空き家が増えた理由としては、①人口減少による影響、②経済的背景や現在の経済状況による影響、③建物の老朽化や管理不足、④所有者の相続問題、⑤地震や台風などの自然災害による影響、⑥固定資産税のルールによる影響、等が考えられます。固定資産のルールでは、土地の固定資産税は建物が建っていると最大6分の1に減額される「200平米以下の小規模住宅用地の特例」という制度によって、建物を解体せずに空き家のまま残すケースが多いと言われています。また、人口減少や家族形態の変化も空き家増加の原因となっていると考えられます。都市部への人口集中は、空き家が放置されやすい状態を生み出しています。特に、子世代が都市部へ引っ越したあとに実家が空き家化するというケースが多く、距離が離れていることから、放置されてしまうケースも多発しているようです。
(3)空き家の種類にはどのようなモノがあるのか
それでは、空き家の種類にはどのようなモノがあるのでしょうか。総務省では、住宅とは、一戸建の住宅やアパートのように完全に区画された建物の一部で、一つの世帯が独立して家庭生活を営むことができるように建築又は改造されたものと定義しています。この要件を持たしているもののうち、ふだん人が居住している住宅を「居住世帯のある住宅(当該住居に3カ月以上に渡って住んでいる)」としています。一方、ふだん人が居住していない住宅を「空き家」と定義しています。空き家の種類と説明は図表2の通りとなります。ちなみに、一時現在者のみの住宅については、昼間だけ使用している、何人かの人が交代で寝泊まりしているなど、そこにふだん居住している者が一人もいない住宅を指しています。これは、消防署、警察署、医療施設などの休憩及び仮眠施設が該当します。また、住宅以外で人が居住する建物としては、高齢者居住施設、会社等の寮・寄宿舎、学校などの寮・寄宿舎、宿泊所・保養所、住宅に改造されていない従業者宿舎などの建物などが挙げられます。
(4)都道府県別でみると、地方での空き家率が高くなっている
2023年のデータを基に都道府県別空き家率の状況をみると、埼玉県、神奈川県、東京都、愛知県といった都市部での空き家率が低くなっているのに対して、和歌山県、徳島県、山梨県、鹿児島県、高知県、長野県といった地方での空き家率は高くなっています。2018年から2023年までの5年間の変化幅では、大分県、北海道、秋田県、長崎県、山口県での空き家率が上昇しています。一方、沖縄県、神奈川県、滋賀県、大阪府、東京都、山梨県、茨城県、福岡県、栃木県、千葉県での空き家率は2018年から2013年に掛けて低下しています。特に、沖縄県、埼玉県、神奈川県の空き家率は10%を割り込んでおり、緩やかながら空き家率が改善傾向に向かっていると言えるのではないでしょうか(図表3参照)。
こうした空き家率が低下している地域の共通項は何なのでしょうか。具体的には、①大都市圏或いは大都市近郊圏であって比較的人口移動が増えていること、②有名な観光地(山梨県:富士山、神奈川県:箱根・伊豆、沖縄県:海洋リゾート)を抱えていることによって観光需要が高まっている、③解体及びリフォーム工事に対する自治体補助金制度を活用したこと、などが挙げられます。基本的には、空き家を放置するのではなく、空き家を活用するということになります。都内でイタリアンレストランを経営している方が、週末に山梨県で空き家を活用してレストランをオープンしたら、その家は居住世帯が無くても空き家からは外れることになります。或いは、週末だけ茨城県の筑波山のふもとで生活をする、沖縄で空き家を改造して民泊施設にするといったケースもあるかもしれません。要するに、空き家を放置しておくのではなく、活用することこそが空き家問題解決の一助になるのです。空き家問題への取り組みはわが国経済を活性化する一つの要因になるかもしれないのです。
(5)空き家改正法は空き家問題解決の一助となるか
空き家問題がなかなか解決しない理由は、「建物解体費が掛かる」及び「固定資産税の減免措置(土地の固定資産税は建物が建っていると最大6分の1に減額される)」ことの2つに集約されると思います。なかでも、固定資産税の減免措置こそが空き家が放置されている最大の要因になっているとの見方があります。こうしたなかで、2023年12月、空き家改正法が施行され、空き家を所有している人にとっては、固定資産税の負担が増える可能性が出てきました。従来は含まれていなかった「管理不全空き家(特定空き家になるおそれがある空き家)」が新設されたことで、固定資産税の軽減措置(特例)が適用されなくなるケースが出てきたのです。住宅用地に対しては特例が適用されますが、特定空き家に認定されると、翌年の固定資産税が最大6倍になってしまうかもしれません。これは空き家改正法によって、管理不全空き家も特例の解除対象となったためです。倒壊や衛生的な危険が高い「特定空き家」に加え、窓や屋根、壁の一部が壊れているような「管理不全空き家」も対象となり、特例の適用対象から外れる空き家は増える可能性があります。この対処方法として、①行政の指示にしたがって改善する(空き家として指定された場合、行政から受けた助言・指導の内容にしたがって改善を図ることで、空き家の指定を解除してもらえる可能性がある)、②空き家と土地を売る、③更地にして売る、④賃貸物件・駐車場として活用する、などが考えられます。いずれにせよ、空き家を放置しておくことは所有者にとっても社会全体にとっても得策ではないといえるでしょう。