ここにきて特殊詐欺被害が増えています。特殊詐欺とは、詐欺の一種で、被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させて、指定した預貯金口座への振込やその他の方法により、不特定多数の者から金銭等を騙し取る犯罪のことです。オレオレ詐欺が代表的ですが、その他にも、預貯金詐欺、キャッシュカード詐欺、架空料金請求詐欺、還付金詐欺、サポート詐欺などの手口があります。2004年11月まではオレオレ詐欺と呼ばれていましたが、手口の多様化で名称と実態が合わなくなったため、特殊詐欺のうち4つの型(なりすまし詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金等詐欺)を総称して、2004年12月9日に警察庁により統一名称として「振り込め詐欺」と呼ぶことになりました。
2025年(令和7年)の特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は43,000件(前年比37.5%増)と過去最高を更新しました。内訳は、特殊詐欺が27,832件(同32.2%増)、SNS型投資・ロマンス詐欺が15,168件(同48.2%増)となっています。一方、被害額は合計で3,257億円(前年比63.7%増)であり、内訳は特殊詐欺が1,423億円(同98.2%増)、SNS型投資・ロマンス詐欺が1,834億円(同44.2%増)になりました。特殊詐欺の被害額は前年比倍増となっており、一件当り被害額も前年の350万円から523万円と急増しています。この要因として、警察官等をかたり、捜査名目で現金等をだまし取る手口(「ニセ警察詐欺」)による被害の増加が顕著になっていることが挙げられています。
(出所)警察庁ホームページ、メディア情報を基に(株)IFA Leading作成。
次に、特殊詐欺の認知及び被害額の推移をみてみましょう。特殊詐欺の認知件数(犯罪の発生を認識した件数)は2023年(令和5年)までは年間1万件台で推移していましたが、2024年になると2万件台に乗せています。一方、被害額は2023年までは年間300~400億円台で推移していましたが、2024年に718億円、2025年には1,423億円と大きく伸びています(図表2参照)。2026年からは統計区分が見直され、SNS型投資・ロマンス詐欺も広義の特殊詐欺として集計されるようになりました。2026年1~4月の特殊詐欺の認知件数は14,898件(前年比24.8%増)、被害額は1,260億円(同69.8%増)となっており、勢いは益々加速しているようです。なかでも急増しているのがSNS型投資であり、認知件数は前年比2.6倍、被害額は同3.1倍に達しています。SNS型投資とは、SNSのダイレクトメッセージで接触後、被害者をLINEなど他のSNSに誘導し、「株や暗号資産に投資すれば利益が得られる」などと言葉巧みに被害者を信用させ、最終的に、「投資金」や「手数料」などという名目で、ネットバンキングなどの手段により、金銭等を振り込ませる詐欺の手口のことです。一度だまされると、詐欺と気付くまで、お金を何度も振り込んでしまい、1,000万円以上の高額被害になってしまうこともあるようです。
(出所)警察庁ホームページ、メディア情報を基に(株)IFA Leading作成。
ここで、2024年から2025年にかけての特殊詐欺被害の内訳について見てみましょう。年代別認知件数は、全ての年代の認知件数が増えていますが、なかでも20歳代、30歳代の認知件数が前年比2倍以上増加しており、若い世代に被害が拡大していることがわかります。若い世代では、情報検索や日常の交流・連絡においてスマホを利用することがほとんどであり、SNSに対するリテラシーは高いと思われますが、恐怖・不安・焦りなど感情への揺さぶりが判断を奪う要因になっていると見られています。ある調査によると、オレオレ詐欺のうち、警察官をかたってだます手口の被害者の4割が20~30代の若い世代と判明しています。オレオレ詐欺と言えば高齢者が被害に遭っていると見られがちですが、実は危機意識の薄い若い世代が被害に遭っているケースが増えているのです。特殊詐欺の被害は、少額被害から高額被害まで幅広く、特にSNS型投資詐欺やニセ警察詐欺での被害額が突出しています。ちなみに、当初、オレオレ詐欺とは子や孫になりすました詐欺が中心でしたが、最近では警察官を名乗る詐欺や国際電話を悪用した手口が増えています。子や孫になりすました犯人は最初に「風邪をひいて声が変わった」、「携帯が壊れて番号が変わった」などと言って信用させた後、「お金が今すぐ必要」と話して振り込みを求めてきます。これに対して警察官を名乗っての詐欺の場合、「口座が悪用されている」、「あなたに逮捕状がでている」などと話し、お金や個人情報をだまし取ろうとする手口が多発しています。こうした電話の多くは、「+」から始まる国際電話番号から掛かってくるケースが多くなっています。心当たりのない電話には出ず、必要のない人は「国際電話の利用休止」をしておくと安心でしょう(図表3参照)。
(出所)警察庁ホームページ、メディア情報を基に(株)IFA Leading作成。
特殊詐欺被害の当初接触ツールを分析すると全体の約8割が電話(固定・携帯)となっていますが、最近ではSMS・SNS・メールによる被害が急増しています。また、主な被害金等の交付形態別動向をみると、振込型が全体の約6割を占めていますが、最近では暗号資産送信型の増加が顕著になっています。ちなみに、昨年は、証券会社を標的としたフィッシング詐欺が注目されました。これは、ネットを介した証券取引を標的としたフィッシング詐欺であり、二要素認証を突破する高度な手口によって被害者の口座で勝手に売買し、売却資金を別の口座に移動するという手口でした。この事件では、被害者が気づいた時には既に資金が移動済みとなっていたのです。これに対して、証券会社側では、自社の不作為によってセキュリティの甘さを突かれたとして損失補填をしたと伝えられていますが、各社によって対応が異なるためその後どうなったのかわかっていません。但し、これを契機に、証券会社や銀行は、高度な認証ツールを導入したことによってセキュリティを強化したため、当該被害は収束していると見られています。
一方、最近増えているのがSNS投資詐欺です。SNS投資詐欺は、Facebook、Instagram、LINEなどのSNSを起点に、被害者に接近して「株や暗号資産に投資すれば必ず利益が出る」と偽って信用させ、最終的に金銭を振り込ませる手口です。詐欺師は著名人や成功した投資家、美男美女を装い、魅力的なプロフィールやディープフェイク動画を用いて信頼感を演出します。SNSのダイレクトメッセージや広告を通じて接触し、LINEなどの別のSNSに誘導し、「モニター会員募集」、「絶対にもうかる」、「高利回り保証」などの言葉で投資を勧めるというやり方です。ある著名なエコノミストは、写真やプロフィールを勝手に使われて困っていると言われていました。SNS投資詐欺の被害額は年々高額化しており、1,000万円以上のケースも報告されているようです。そもそも、投資の世界で「絶対」とか「保証する」という言葉での勧誘は疑ってかかるべきなのです。さらに、金融商品取引業者以外に金品を預けることはリスクが非常に高いことを意識する必要があります。連日、株価が上昇しているニュースを耳にすれば、バスに乗り遅れるなという気持ちになるのはわかりますが、投資のチャンスが今日で終わるわけではありません。投資は、一般に「長期」、「分散」が基本とされており、確実に利益を上げられるという勧誘自体、疑ってかかるべきだと思います。