最近、マンション市場が変化しているという声を耳にすることが増えてきました。特に多いのが、新築マンション価格が高くなりすぎて買えなくなってしまった、あるいは、住宅ローン金利が上がってくるので家計を見直さなくてはならない、といった切実な声です。それでは、首都圏における新築分譲マンション及び中古マンションの動向はどうなっているのでしょうか。首都圏マンション市場については、2015年頃までは新築マンションが中心であり、中古マンションが補完しているといった構図でした。ところが、2016年に新築マンション供給戸数と中古マンション成約件数が逆転し、その後はどんどんその差が広がってきました。2025年の統計によれば新築マンション21,962戸に対して中古マンションは49,114戸となっており、戸数ベースでは中古マンション市場は新築マンション市場の2.24倍にまで膨らんでいるのです。この最大の要因は、価格差に起因していると考えられます。これまで、マンション市場と言えば新築が中心だったのが、新築マンションの供給戸数の減少及び価格上昇によって中古マンションを選ぶ人が増えてきたというのが実態ではないでしょうか(図表1参照)。
(注) (株)IFA Leading作成。当該見方は(株)IFA Leadingの個人的見解による。
首都圏新築マンション市場の動きをみると、供給戸数は年々減少傾向をたどっています。2000年の供給戸数は9万5,635戸であったので2025年はピークの4分の1以下にまで減少したことになります。2000年代前半のマンション供給戸数は、メジャー7(住友不動産、野村不動産、三菱地所レジデンス、三井不動産レジデンシャル、東急不動産、大京、東京建物)のシェアが25%程度であったのに対して、新興デベロッパーのシェアは40%程度あったと推定されています。今日では、メジャー7のシェアが50%程度にまで高まり、新興デベロッパーのシェアは20%程度にまで低下しています。このことは、首都圏新築分譲マンション市場においては、デベロッパーの信用リスクが大きく低下していることを示しています。供給戸数が大きく減っても不動産会社の経営不安が起きていない背景として、大手不動産会社は在庫負担に耐えられる体力が備わっていること、過度な値引き競争に陥っておらず一定程度の利益を確保できていること、等が挙げられます。
こうしたなかで、足元の首都圏新築分譲マンション供給戸数は、全体としては前年比横ばい或いは若干の減少で推移しているものの、地域による格差が大きくなっていることがうかがわれます。基本的には都区部での供給戸数が減少傾向となっているのに対して、都下(東京23区以外の地域)、埼玉県、千葉県等で底入れを示しつつあります。供給戸数については、マンション用地の確保に加えて、用地費・建築費の上昇、販売価格及び購入者による購買力等を勘案して決定することになります。このことは、販売価格に大きく影響することになり、都区部では、2024年以降のマンション平均価格は1億円超となっているのです。今や、千代田区・中央区・港区・文京区といった都心一等地でなくても、80㎡台のファミリータイプの新築マンション価格が1億円を超えることは珍しくなくなっているのです。都区部以外でも、7,000~8,000万円台は当たり前となっており、今や新築マンションを購入することは庶民にとっての夢のまた夢となってしまったのかもしれません(図表2参照)。
(出所)不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向」データを基に作成。2026年7月12日までに発表のもの。
こうした状況のもと、中古マンションの成約件数は年々増加傾向をたどり、2016年に新築マンション供給戸数を逆転して以降、年々その差は開いてきました。今やマンション市場の主役は新築から中古に移ってきたと言っても過言ではないと思われます。マンション市場の主役が新築から中古へ移ってきた背景としては、新築マンションそのものの価格が高くなりすぎて手を出しづらくなってしまったというのが最大の理由ですが、マンション管理や設備に関わるメンテナンスの充実により、マンションそのものの付加価値がそれほど下がっていないことも要因となっているのではないでしょうか。また、賃貸相場の上昇により、このまま賃貸住宅に住み続けるより、中古マンションを購入した方が住居費(家賃と住宅ローン支払いとの比較)負担が軽減されるといった比較感も醸成されてきたことも影響しているのではないかと推察されます。
中古マンション価格は、①立地条件、②築年数、③建物全体の管理状態、によって決まります。中古マンション価格については、新築でなくなった瞬間から下落傾向を続け、築20年で3割程度値下がりすると言われていましたが、昨今では築20年超の物件でも購入時より5割以上値上がりしているといったケースも珍しくないようです。この背景としては、新築分譲マンションの供給減及び販売価格の高騰によって中古マンション志向が高まってきたことが挙げられます。しかし、2026年に入るとこうした状況に変化が見られています。2026年4月の首都圏中古マンション成約件数は18カ月ぶりに前年比マイナスとなりましたが、5月は2カ月連続マイナスとなりました。東京都は5カ月連続減少となったのです。その最大の要因は、成約価格が前月比で下落となるなど価格にピークアウトの兆候が出てきたことにあると考えられます。特に、住宅ローン金利上昇によって購入者による購買力が低下しつつある点に注意しなければなりません。
(出所)公益社団法人「東日本不動産流通機構」データを基に作成。2026年7月12日までに発表のもの
マンションの買い手は、実需層と投資筋に大別されます。特に、前述のような都心部を中心としたマンション価格高騰については、①富裕層、②投資マネー、③節税、④パワーカップル、などが買い手の主役でした。タワーマンションに代表される高額物件については、一般企業に勤務するサラリーマン家庭はなかなか手を出しにくくなったのではないでしょうか。前述の4つの買い手のうち、実需層は、富裕層及びパワーカップルということになりますが、投資マネーや節税効果を狙った買い手は、足元の買い手から姿を消しつつあるのではないかとみられているのです。直近では、超高額物件を売りに出してもなかなか買い手が付かないといった声も耳にします。パワーカップルにしても、住宅ローン金利の上昇で上限なく買えるという訳ではありません。中古マンション価格がピークアウトを迎えつつあることもネガティブな市場環境です。当局でも、外国人による無制限な不動産取得に対してメスを入れ始めています。いずれにせよ、2026年後半はコロナ禍以降、右肩上がりだった不動産価格が変化する局面を迎えつつあると見ておいた方が良さそうです。