最近、「給付金付き税額控除」といった言葉を耳にすることはありませんか。給付付き税額控除とはどんな制度なのでしょうか。また、日本で導入される可能性や課題はどうなのでしょうか。給付金付き税額控除は、低所得者層に対する税負担軽減を目的とした制度です。この制度では、所得税の控除額が一定額に満たない場合、その差額分を現金で給付します。具体的には、納税額が多い方には減税が、納税額が少ない方や非課税世帯には現金給付が行われます。この制度は、社会保障制度における給付と負担の在り方についての議論を促進し、全世代型社会保障改革の一環として進められています。給付付き税額控除は、低所得層を支援しつつ労働意欲を高める仕組みとして注目されている一方で、制度設計や財源確保には議論が尽きません。現在、有識者及び国会議員等から成る国民会議で議論されており、今後は国会での議論を経て関連法案の成立に向けて進んでいくものと見られています(図表1参照)。
(出所)メディア情報、内閣官房資料等を基に(株)IFA Leading作成。
⾼市内閣総理⼤⾂は令和7年10⽉24⽇の所信表明演説で次のように述べています。「税・社会保険料負担で苦しむ中・低所得者の負担を軽減し、所得に応じて⼿取りが増えるようにしなければなりません。早期に給付付き税額控除の制度設計に着⼿します」、「⼈⼝減少・少⼦⾼齢化を乗り切るためには、社会保障制度における給付と負担の在り⽅について、国⺠的議論が必要です。超党派かつ有識者も交えた国⺠会議を設置し、給付付き税額控除の制度設計を含めた税と社会保障の⼀体改⾰について議論してまいります。野党の皆様にも御参加いただき、共に議論を進めてまいりましょう」といった内容となっています。
また、令和7年11月17日には、内閣総理大臣として、社会保障改⾰の推進として、「給付付き税額控除の制度設計を含めた税と社会保障の⼀体改⾰について、①税・社会保険料負担で苦しむ中・低所得者の負担を軽減し、所得に応じて⼿取りが増えるよう、財務⼤⾂、総務⼤⾂、厚⽣労働⼤⾂、全世代型社会保障改⾰担当⼤⾂は、関係閣僚と連携し、給付付き税額控除の制度設計を進めてください。②給付付き税額控除は、受益と負担に関わる課題であり、社会保障の在り⽅にも⼤きく関わるものであることから、全世代型社会保障改⾰担当⼤⾂は、関係閣僚と連携し、社会保障制度における給付と負担の在り⽅について、給付付き税額控除の制度設計を含め、政府・与党のみならず、野党も交えた丁寧な国⺠的議論を進めるための枠組みとして、国⺠会議を早期に設置するよう、調整を進めてください」といった指示を発しています。
給付付き税額控除は、所得が一定水準以下の世帯や個人を対象とした現金給付制度です。主に年収が低い方や非課税世帯、子育て世帯、単身高齢者などが対象となります。年収や世帯状況によって給付額が異なり、所得税を納めていない場合でも一定の基準を満たせば現金が支給される仕組みです。申請の際は前年の所得や扶養状況が審査されるため、確定申告や住民税申告が必要となります。また、自治体によっては申請方法や審査の細かな手続きが異なる場合もあるため注意が必要です。図表2でいうと、Cさん、Dさんのような所得税の納税額が少ない、あるいは所得税が非課税の世帯(人)に対して、現金給付をすることで減税メリットを享受してもらおうという制度なのです。Cさん、Dさんは所得が低いために所得税が少ない或いは所得税を納めていないわけですが、こうした人々に対して給付を行うことによって、効率的な生活支援をしようというのが給付金付き税額控除の主旨なのです。
(出所)メディア情報を基に(株)IFA Leading作成。
それでは、なぜ「現金の一律給付」ではなく、この制度が注目されているのでしょうか。その理由は、大きく分けて2つあります。第一の理由は、低所得者への支援を確実に届けられる点にあります。所得税の減税は、基本的に税金を納めている人が対象となるため、所得が低く税負担がほとんどない人や非課税世帯には、減税の恩恵が及びにくいという課題があります。本来支援が必要とされる層が対象外になってしまう点は、これまでの制度の大きな問題点とされてきました。「給付付き税額控除」では、控除しきれなかった分を現金で給付する仕組みが採用されています。このため、納税額がゼロの世帯であっても、減税に相当する支援を受け取ることが可能になります。その結果、従来の減税制度では難しかった、よりきめ細かな低所得者支援が実現できるとされています。
第二の理由は、消費税の逆進性を緩和できる点です。消費税は、所得に関係なく一律で課されるため、収入に占める税負担の割合は低所得者ほど高くなりやすい特徴があります。この性質は「逆進性」と呼ばれ、不公平が生じやすい点として指摘されています。たとえば、年収300万円の人がさまざまな日用品やサービスに100万円を使えば、消費税は10万円(税率10%の場合)になります。同じ10万円でも、年収1,000万円の人と比べると家計への影響は大きく感じられるでしょう。「給付付き税額控除」は、この不公平を現金給付で補う仕組みで、低所得者に現金を支給することで、消費税として負担した分を実質的に国が補う形になります。その結果、手元に残るお金(可処分所得)の増加につながることになります。この制度は税の再分配機能を強める役割もあり、特に恩恵が大きいのは所得税が課されない非課税世帯です。
給付金付き税額控除に関しては、財源の確保と制度設計の複雑さ、他の福祉制度との整合性等が課題となっています。現在、2026年以降の本格導入に向けての議論が進んでおり、2027年度以降の実施に向けて制度設計が検討されている模様です。