東京商工リサーチによると、2025年度の全国の企業倒産(負債総額1,000万円以上)は、件数が10,505件(前年比3.6%増)、負債総額は1兆5,687億円(同33.9%減)となりました。
件数は4年連続で増加し、2年連続で1万件台を記録しました。倒産件数は2013年度の10,536件以来の水準であり、コロナ禍を経て倒産件数が増加トレンドをたどっていることがうかがわれます。また、負債総額は、4年振りに1兆円台に低下しました。これは、前年度に発生したMSJ資産管理(株)(旧:三菱航空機(株))のような大型倒産が無かったことに加えて、零細・小規模企業の倒産が増えたことに起因しています。ちなみに、負債総額1億円未満は8,062件(前年度7,658件)となり、倒産件数全体に占める割合76.7%は1996年度以降の30年間で最高を更新しました(図表1参照)。
(出所)東京商工リサーチホームページ等より(株)IFA Leading作成。
ちなみに、倒産は赤字・債務超過であり、休廃業・解散は黒字・資産超過と定義されている。
2025年度の産業別倒産件数は、10産業中5産業で前年実績を上回りました。最多は、サービス業他の3,585件(前年比5.5%増)で、4年連続で前年度を上回り、過去30年間での最多を更新しました。次いで、人手不足や資材価格の高騰などが顕著な建設業が2,047件(前年比5.3%増)、円安による原材料高に伴う物価高によって売上高が伸び悩んだ小売業が1,223件(同12.2%増)、土地及び建築費上昇によるコストアップが進行する不動産業が331件(同13.3%増)とそれぞれ増加しました。サービス業、建設業、小売業においては、昨今における人手不足によって、現場が回らなくなっていることが大きく影響しているものと推察されます。人手不足問題に関しては、外国人労働者に対する入国審査の強化によって、一段と厳しくなると見られており、こうした産業の倒産リスクは今後とも高水準が続くものと思われます。また、負債額が大きく増加したのは、農・林・漁・鉱業、卸売業等であり、前年度を大きく上回る状況となりました。しかし、これらの産業では1件当たりの負債額の水準が大きく膨らんでいるわけではなく、中規模倒産が中心となっているため一定程度の水準にとどまっていることが特徴となっています(図表2参照)。
(出所)東京商工リサーチホームページ等より(株)IFA Leading作成。
2025年度の倒産理由を整理すると、「人件費高騰」、「物価高」、「人手不足」に集約されます。人件費高騰については、あらゆる業種・職種において、人手不足の蔓延によって賃金を引き上げなければ人が集まらない状況が一段と進行していることが大きく影響しています。大企業では、初任給をはじめ給与水準を大きく引き上げる動きが続いていますが、零細・小規模企業においては人件費の高騰は経営を圧迫するリスクが高まってしまいます。とはいえ、昨今では転職市場の成長により、一定程度の処遇をしなければ従業員は退職してしまいます。倒産理由に「従業員退職」が挙げられているのは、零細・小規模企業では従業員の代わりを見つけることが困難で、事業が立ち行かなくなってしまうためとみられています(図表3参照)。
また、2024年度まではコロナ禍での「ゼロゼロ融資」の返済期限が到来して、資金繰りが悪化したため倒産に追い込まれたという話が聞かれましたが、2025年度の「ゼロゼロ融資」利用による倒産件数は前年度の531件に対して410件と22.7%減となり、ピークアウトの兆しが出ています。(東京商工リサーチ調べ)そもそも「ゼロゼロ融資」とは、コロナ禍で資金繰りに窮していた零細・小規模企業を対象に、非常時の手段として「実質無利子・無担保で融資する」という制度だったのですが、その後の経営改善が進まずに返済に苦慮しているケースがみられていました。こうした状況は返済期限を迎えて一巡しつつあるようです。一方、「人件費高騰」、「物価高」、「人手不足」などコロナ禍からは倒産理由が大きく変化しています。今後は借入金利が上がってくるとみられていることから、採算性の低い事業を続けている零細・小規模企業では、資金繰りの逼迫が倒産の引き金になるかもしれません。
(出所)東京商工リサーチホームページ等より(株)IFA Leading作成。
こうしたなかで、2025年度は生活に不可欠な医療機関や介護事業者の倒産が急増しています。(東京商工リサーチ調べ)バブル経済ピークの1988年度以降の38年間で、2025年度は金融危機、リーマン・ショックを超える478件と最多を記録しました。診療や介護など報酬の一部は公定価格で公的事業に近い部分もありますが、経営者の高齢化や人口減少、コスト高が追い打ちをかけている格好となっています。政府は、医療や介護事業に対しては緊急経済対策で補正予算を組み、支援していますが、倒産は2025年度まで3年連続で過去最多を更新し、支援効果は見えていません。業務の効率化や負担軽減に向けた具体的な支援が待たれるところです。
倒産した医療機関や介護事業者478社を小分類でみると、最多は「老人福祉・介護事業」が182件となっており、次いで、「療術業」108件、「障害者福祉事業」54件、「児童福祉事業」44件、「一般診療所」32件、「歯科診療所」31件と続いています。478社の原因別動向は、売上不振(販売不振)が最多の340件(構成比71.1%)と7割超は収入不足が主因となっています。また、赤字累積のシワ寄せも50件(同10.4%)に増え、業績悪化が原因の倒産が目立っています。従業員数別では、5名未満が345件(同72.1%)、5名以上10名未満が72件(同15.0%)で、零細・小規模事業者の倒産が大半を占めました。