2026.07.03

家族信託とは何か
~財産を家族に託して管理してもらうこと~

家族信託とは、親などの財産を家族に託して管理してもらう仕組みで、認知症による財産凍結リスクに備える手段として注目されています。本コラムでは、委託者・受託者・受益者の役割や、財産管理や相続対策に役立つメリットを整理するとともに、成年後見制度との違いや家族間トラブルなどのデメリットについて解説しています。

2026.07.03

コラム

家族信託とは何か
~財産を家族に託して管理してもらうこと~

目次

01 家族信託とは何か?

家族信託という言葉を耳にしたことはないでしょうか。家族信託とは、家族による財産管理の一つの手法です。所有権を「財産権(財産から利益を受ける権利)」と「財産を管理運用処分できる権利」とに分けて、後者だけを子どもに渡すことができる契約です。これにより、所有者である親が認知症になってしまったり、介護が必要になってしまい自分で財産を管理できなくなってしまったりしたとしても、子どもが信託された財産の管理、運用、処分ができるようになります。家族信託の基本的な登場人物は、「委託者」、「受託者」、「受益者」の3者です。委託者とは財産のもともとの所有者で、財産を信託する人であり、受託者とは財産の管理・運用・処分を任される人、受益者とは財産権を持ち、財産から利益を受ける人となります。委託者が財産の管理を受託者に任せ、その財産を受託者が管理し、その財産から発生した利益を受益者が得る仕組みになっています。家族信託では親のために子が財産を管理し、利益は所有者である親が得るなど、委託者と受益者が同じ人になることがほとんどです。この点がポイントとなります(図表1参照)。

(図1)家族信託のイメージ図

(出所)メディア情報、法務省資料等を基に(株)IFA Leading作成。

02 家族信託が何故注目されるのか?

それでは、なぜ、家族信託が注目されるようになってきたのでしょうか。この背景には、高齢化と認知症の問題があります。厚生労働省の「令和5年介護保険事業状況報告」によると、要介護認定を受けた介護保険の第1号被保険者のうち、65歳から74歳が全体の1割弱で、75歳以上が9割弱を占めています。年齢が上がるにつれて認知症になる確率も急激に上昇しているのです。認知症が悪化すると、銀行の口座などは凍結されてしまい、子どもであっても親のお金を下ろせなくなります。そうすると、親の介護に手をあげた子どもが経済的な負担も強いられることにつながってしまいます。こうしたことから少なくとも70歳頃までに、認知症に備えた対策が必要といえます。家族信託が広く注目される大きな理由は、認知症による財産凍結のリスクを防げる点にあります。祖父母や両親が認知症になり判断能力を失うと、銀行口座からの大きな引き出しや、不動産の売却・管理ができなくなり、生活費や介護費用の確保にも支障が出るおそれがあるのです。しかし、認知症になる前に家族信託を設定しておけば、子どもが親の代わりに財産管理や不動産の売却を行えるため、資産を柔軟に活かしながら介護費用を確保することが可能になります。売却代金や口座の管理も、あくまでも親のために使う仕組みになるのです。

03 家族信託のメリットは財産管理がしやすくなること

家族信託にはさまざまなメリットがあります。信託された財産の名義は、財産を管理する受託者の名義に変更します。そのため、財産の管理がしやすくなるのが大きなメリットと言えるでしょう。一般的に、財産の所有者が亡くなり、その事実を金融機関が把握すると口座が凍結されるため、葬儀や各種手続きに必要な費用を容易に引き出せずに困るケースがあります。しかし、家族信託では受託者の名義で財産を扱えるため、預貯金の引き出しや資産運用、処分などは委託者の生死に関わらず、一定の範囲内で柔軟に行えます。家族信託は二次相続以降、誰に財産を渡すのかを指定できる貴重な手段です。「二次相続」とは、遺産を相続した後、相続した人物が亡くなり、さらに遺産を相続することを指します。たとえば父親が亡くなり、母親(=父親の配偶者)と子どもに遺産が相続された後、さらに母親が亡くなり、母親に分配された父親の遺産が再び誰かに継承されるケースなどです。家族信託では、この二次相続以降の相手をあらかじめ自由に指定できます。これを「受益者連続信託」といいます。遺言書や生前贈与では二次相続する相手を指定できないため、二次相続時に特定の相手へ遺産を多く渡したい、あるいは特定の相手に渡したくない、といった相続順位に対する希望があるときは、家族信託が役立ちます。わが国では、毎年160万人程度の方が亡くなられ、そのうち10%程度の方が相続税を納めています。現時点では、夫婦のどちらかが亡くなるというケースが多いのですが、今後は残された配偶者が亡くなり、子どもなどの二次相続問題が増えていくと考えられています(図表2参照)。

(図表2)家族信託に関わる仕組みとメリット、デメリット

(出所)メディア情報、法務省資料等を基に(株)IFA Leading作成。

04 家族信託のデメリットに対する理解も大切

とはいえ、家族信託は万能ではありません。制度を正しく理解するためにも、家族信託の主なデメリットを押さえておく必要があるでしょう。第一に、身上監護をするには成年後見制度を利用する必要があるということが挙げられます。身上監護権とは、判断能力が低下した親の生活や介護に関する意思決定を、後見人(多くは子ども)が代わりに行う権限のことです。家族信託には身上監護権はありません。これは、認知症になった親が施設に入居する場合、受託者である子どもが親の代理人として入居契約をすることができないということです。家族信託はあくまでも、財産管理のための制度なのです。入居した施設の利用料を信託された財産の中から支払うことはできますが、親の代理人として入居契約をする権限はありません。第二に、財産の管理を誰もやりたがらない場合があることです。受託者を引き受けてくれる家族がいない場合、家族信託契約を結ぶことはできません。建物を目的とした家族信託の場合、受託者は建物について管理する義務があります。もしも老朽化して壊れて通行人などに怪我をさせてしまった場合には、その損害を賠償する責任が生じます。信託された財産以上の損害だった場合には、自身の財産からも賠償しなければなりません。また、毎年支払う必要がある固定資産税の納税通知書も受託者に届くだけでなく、毎年、受益者である父親に向けて信託された財産の状況を報告する手間も発生します。そして第三には、親族間の不公平感を生む恐れがあることが挙げられます。2人いる子どものうち、1人を受託者とした場合に、他の子どもに何も知らせず勝手に進めてしまうと、知らされなかった子どもから文句が出てくることもあります。受託者である子どもは、信託された財産に対してとても大きな権限を持つため、財産の収支等がブラックボックス化してしまっている場合に、お金を使い込んでいるのではないかという疑いが生まれ、家族間の争いに発展することがあるのです。それを防ぐためには、あらかじめ家族信託を進める前に家族会議を開いておくことが重要です。

IFA Leadingのアドバイザーにお気軽にご相談ください

村松 麻衣子

ウェルスマネジメント戦略部マネージャー

村松 麻衣子

Maiko Muramatsu

2014年に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社後、浜松支店にて資産運用コンサルティング営業に従事。その後米国モルガン・スタンレーNY本社へ出向し、米国における超富裕層向け営業や営業員育成に関する知見を習得。帰国後は超富裕層向け営業サポート部署に所属し、米国で主流のアドバイザリービジネス推進や非運用(相続・事業承継)領域含む総合ソリューション提案に従事。2024年、日本の金融サービスの変革を目指す姿に魅力を感じIFA Leadingに入社。

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